
妊娠が分かった喜びと同時に、「赤ちゃんは元気に育っているのかな」「自分の体調管理は大丈夫だろうか」と不安を感じる方も多いでしょう。
そんな妊婦さんと赤ちゃんの健康を守るために欠かせないのが「妊婦健診」です。健診では、超音波や血液検査を通じて胎児の発育や母体の健康状態を確認し、異常があれば早期に対応できます。
実際に、妊婦健診を受けていない方は胎児の周産期死亡率が約5倍も高かったという報告もあり、健診の重要性が分かります。
安心して妊娠生活を過ごすために、定期的な妊婦健診をしっかり受けていきましょう。
妊婦健診の頻度はどのくらい?

妊婦健診は、妊娠の進行に合わせて受診間隔が短くなるのが特徴です。
一般的には、妊娠初期は4週間ごと、中期は2週間ごと、後期は毎週1回の頻度で行われ、合計でおよそ14回程度が標準とされています。母体の健康状態や合併症の有無によっては、さらに回数が増えることもあります。
健診では毎回の基本検査に加えて、妊娠の時期に応じた検査が実施されます。これらは母体や胎児の健康を定期的に確認し、異常を早期に発見するために欠かせません。
以下では、初回健診から妊娠後期までの健診の流れを週数ごとに解説します。
初回健診は妊娠6〜8週ごろから

妊娠が分かったら、まずは妊娠6〜8週ごろを目安に初回健診を受けましょう。(次の生理予定日からおよそ2〜4週間後にあたります)
初回健診では、尿検査・内診・超音波検査を中心に、妊娠が子宮内で順調に進んでいるかを確認します。超音波検査では胎のうや心拍の有無をチェックし、血液検査や感染症検査で母体の基礎的な健康状態を把握します。
妊娠検査薬で陽性反応が出ても、子宮外妊娠や胞状奇胎など、妊娠の継続が難しく、母体に重大な影響を及ぼす病気の可能性もあります。「妊娠かもしれない」と感じたら、できるだけ早めに医療機関を受診することが大切です。
妊娠初期症状については、こちらのコラムをご参考にしてください。
妊娠初期(〜23週まで):4週間に1回

妊娠初期は、4週間に1回の健診が基本で、合計4回程度受診します。
胎児の成長や心拍、母体の健康状態を確認し、血液検査や尿検査で貧血や糖代謝異常などを早期に発見します。
なお、妊娠11週ごろまでは流産リスクが高い時期のため、医師の判断で1〜2週間ごとの受診を勧められる場合もあります。
妊娠中期(24〜35週):2週間に1回

妊娠中期はおなかの赤ちゃんの発育が一段と進み、母体にも変化が大きく現れます。そのため健診は2週間に1回で合計6回に増えます。
超音波検査では胎児の大きさや羊水量を確認し、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、早産の兆候などを早期に発見します。
この時期には、血糖負荷検査(OGTT) が行われることもあります。さらに、3Dエコーや4Dエコーによって赤ちゃんの立体的な姿や表情を確認できる場合もあり、ご夫婦にとって楽しみのひとつになる健診です。
妊娠後期(36週以降):毎週1回

妊娠36週以降は出産が近づくため、毎週1回(合計4回程度)の健診が行われます。
臨月に入るといつ陣痛が始まってもおかしくないため、赤ちゃんの位置(逆子の有無)、心拍数、母体の子宮口の状態、羊水量、胎盤の位置などを詳しく確認します。
この時期には NST(ノンストレステスト) が行われることがあり、30〜40分間横になって胎児の心拍と子宮収縮を記録します。さらに内診によって子宮口の開き具合や胎児の下降の程度を確認し、出産のタイミングを予測します。
仕事をしている妊婦さんも多いですが、産休に入ることで比較的余裕を持って通院できる方が増える時期でもあります。
妊婦健診で行う主な検査内容
妊婦健診では、毎回必ず行う基本検査に加えて、妊娠の時期に応じた検査が組み込まれます。これにより母体の健康状態や胎児の発育を総合的に確認し、異常を早期に発見できます。
ここでは基本検査から妊娠初期・中期・後期の検査、さらに必要に応じて行われる特別な検査について解説します。
基本的なチェック項目
妊婦健診で毎回欠かさず行われるのが基本検査です。
医師の問診や診察に加え、食事や生活に関するアドバイスなどが行われる場合もあります。
超音波検査(エコー)

超音波検査では、胎児の位置や大きさ、心拍の有無、羊水量、胎盤の位置などを確認します。
妊娠週数によっては形態異常のスクリーニングも兼ねる重要な検査です。3D・4Dエコーを導入している施設では、赤ちゃんの立体的な姿や表情を確認できる場合もあります。
血液検査・尿検査
血液検査では貧血や感染症(B型肝炎・C型肝炎・梅毒・HIVなど)、血糖値、肝腎機能、血液型やRh因子を調べます。
尿検査では尿たんぱくや尿糖を調べ、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の兆候を早期に把握します。
体重・血圧・子宮底長の測定
体重と血圧は毎回チェックされ、急激な体重増加や高血圧は合併症リスクの重要なサインです。子宮底長(おなかのふくらみの高さ)を測ることで、胎児の発育や羊水量の目安を把握します。
妊娠初期に行う主な検査
妊娠初期は、母体の健康状態や感染症の有無を確認します。ここで行われる検査項目は、妊娠の安全な継続や母子感染の予防、分娩時のリスク管理に直結します。
妊娠中に進行すると治療が難しいため、早期に有無を確認します。多くは無症状で進行するため、妊娠を機に受けることが推奨されています。
性器クラミジア検査
性感染症の一つで、妊娠中に感染していると早産や破水、新生児への結膜炎・肺炎の原因になることがあります。初期に調べることで、治療が必要な場合は早めに対応できます。
感染症関連(梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIV)
これらはすべて母子感染のリスクがある感染症です。妊娠中に感染が確認された場合は、分娩方法や出産後の新生児への対応が変わるため、早期に確認することが重要です。
血液型・Rh因子・不規則抗体検査
母子の血液型が不適合の場合(特にRhマイナスの母親とRhプラスの胎児)、新生児溶血性疾患を起こす可能性があります。リスクがある場合は、出産前後に適切な処置(抗D免疫グロブリン投与など)を行う必要があります。
風疹抗体検査
妊娠中に風疹に感染すると、赤ちゃんが先天性風疹症候群を発症するリスクが高くなります。妊娠中はワクチン接種ができないため特に重要です。
トキソプラズマ抗体検査
猫の糞や加熱不十分な肉を介して感染する寄生虫で、妊婦が初感染すると胎児に脳や眼の障害が起こることがあります。抗体の有無を調べることで、生活習慣の注意点が把握できます。
HTLV-1抗体検査
九州・沖縄など一部地域に多いウイルスで、母乳を通じて赤ちゃんに感染することがあります。感染が確認された場合は母乳栄養の方法を検討する必要があるため、事前に把握しておくことが大切です。
妊娠中期〜後期に行う主な検査

妊娠中期(24〜35週)から後期(36週以降)にかけては、胎児の成長が進み、母体への負担も大きくなります。この時期には、妊娠糖尿病や新生児感染、出産準備に関する検査が追加されます。
血糖負荷検査(75g OGTT)
妊娠24〜28週ごろに行われる検査で、妊娠糖尿病の有無を確認します。妊娠糖尿病は妊婦さんの約1割に見られると言われ、放置すると母体の合併症や巨大児・低血糖など赤ちゃんへの影響が出るため、早期発見が大切です。
B群溶血性レンサ球菌(GBS)検査
妊娠35〜37週ごろに膣や肛門の分泌物を調べる検査です。母体には症状がなくても新生児に感染すると肺炎や敗血症を引き起こすことがあります。陽性の場合は出産時に抗菌薬を投与して感染を防ぎます。
心電図・心拍モニタリング(NST)
妊娠後期に実施されることが多く、30〜40分横になった状態で胎児の心拍数や子宮収縮を記録します。赤ちゃんが元気に過ごしているか、ストレスがかかっていないかを確認するための検査です。
内診(子宮頸管や子宮口の状態チェック)
臨月に近づくと、子宮口の開き具合や子宮頸管の柔らかさ、胎児の下降具合を内診によって確認します。出産のタイミングを見極めるために重要で、陣痛開始の目安にもなります。
追加の貧血検査(ヘモグロビン値)
妊娠後期は血液量が増えることで貧血になりやすいため、必要に応じて再度血液検査を行います。重度の貧血は出産時の出血リスクを高めるため、早めの治療が重要です。
特別に行われる検査
標準的な妊婦健診のほか、希望や医師の判断によって追加される検査もあります。これらは胎児の先天異常や染色体異常を詳しく調べるためのもので、通常の健診では分からない情報を得ることができます。
胎児ドック(胎児精密超音波検査)

通常の超音波検査よりも時間をかけ、精度の高い機器で胎児の発育や臓器を詳しく確認する検査が胎児ドックです。
- 目的:心臓や脳、腎臓などの臓器異常、四肢の発育、口唇口蓋裂などをチェック
- 特徴:必須検査ではなく、医師から勧められる場合や希望がある場合に行われます
- 意義:異常が見つかった場合、分娩施設や方法を含めた医療体制を早期に整えることができます
妊婦健診では分からないことと出生前診断(NIPT)

通常の妊婦健診では染色体異常の有無までは分かりません。より詳しく調べたい場合は出生前診断が選択肢としてあります。
- NIPT(新型出生前診断):母体の血液を採取して、胎児の染色体異常(ダウン症候群など)を調べる検査。妊娠10週以降から受けることが可能です。
- 羊水検査・絨毛検査:確定診断を行うための検査で、医師の判断や希望により実施されます。
- 出生前診断の意義:赤ちゃんの健康状態について事前に知ることができ、出産や子育てに向けての準備に役立ちます。ただし心理的負担や倫理的な課題も伴うため、夫婦でよく話し合い、医師と相談することが大切です。
妊婦健診の費用と公的補助制度

妊婦健診は、母体と赤ちゃんの健康を守るために欠かせません。ただし病気の治療ではなく健康管理を目的としているため、原則として健康保険の適用外となり、費用は全額自己負担です。そのため、経済的な負担が大きく感じられる方も少なくありません。
厚生労働省は妊娠中に14回程度の健診を推奨しており、費用負担を軽減するために各自治体で補助制度が設けられています。
ここでは、健診1回あたりの費用の目安から、補助券の仕組み、自費になるケースまで詳しく解説します。
健診費用の目安
妊婦健診の費用は医療機関や検査内容によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。
- 初回健診:1〜2万円程度(血液検査や感染症検査など項目が多いため、高額になりやすい)
- 2回目以降の健診:1回あたり5,000〜7,000円程度(超音波検査や基本検査が中心)
妊娠から出産までに推奨される14回の健診をすべて受けると、補助がなければ合計で約10万〜15万円かかることもあります。
自治体の補助券を利用しても、検査内容や医療機関によっては上限を超える差額が生じるため、最終的な自己負担は3万〜5万円前後になるケースが一般的です。
母子手帳の交付時にもらえる「妊婦健診補助券」

妊娠が確定すると自治体で母子健康手帳(母子手帳)が交付されます。この際に「妊婦健診補助券(受診券)」も配布され、健診費用の一部または全額が公費で補助されます。
- 補助の回数は自治体によって異なりますが、14回分の健診費用を補助する仕組みが一般的です。
- ただし、補助される金額は「上限額」があり、検査内容や医療機関によっては差額は自己負担です。
- 里帰り出産や転居の場合、補助券がそのまま使えないことがあり、立替払い後に償還払い制度を利用して払い戻しを申請します。
補助額の全国平均は105,734円で、最も少ないのは神奈川県の平均71,417円、最も高いのは石川県で平均137,813円とされています。
このように、補助額や対象となる検査は自治体ごとに異なるため、必ずお住まいの市区町村で確認しましょう。
自費になるケースとは?
妊婦健診は多くが補助券でカバーされますが、以下のような場合には自費負担が発生します。
- 補助券の上限を超える検査(例:3D・4Dエコー、希望による詳細な超音波検査)
- 医師の判断で追加検査が必要になった場合(例:再検査や精密検査)
- 補助券が使えない医療機関で受診した場合(特に里帰り出産時)
- 任意で受ける検査(例:NIPTなどの出生前診断は補助の対象外)
こうした範囲を事前に理解しておくと、妊娠中の医療費を見通しやすくなります。
医療費控除の対象になる?
妊婦健診は保険適用外ですが、医療費控除の対象となります。1年間に支払った家族全員の医療費が10万円(または総所得金額の5%)を超えた場合、確定申告で所得控除を受けられます。
妊婦健診費用や分娩費用はもちろん、通院のためにかかった公共交通機関の交通費も対象です。また、医師の判断による追加検査や、自費で受けた検査の一部(例:NIPTなど)も医療目的であれば控除対象になることがあります。
妊婦健診に行かないとどうなる?
妊婦健診を受けないと、母体と赤ちゃん双方に大きなリスクが生じます。
母体では妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの合併症を見逃し、重症化する恐れがあります。
赤ちゃんにおいても発育遅延や心拍異常などが見過ごされ、命に関わる事態に発展する可能性があります。
さらに、健診を受けていないと出産時に医療機関が適切に対応できず、緊急時のリスクが高まります。また、補助券の利用や医療費助成といった行政サービスが受けられなくなる場合もあり、経済的な負担も増えがちです。
体調が安定していても必ず定期的に受診し、母子の安全を守りましょう。
よくある質問(Q&A)
妊婦健診については、費用や受け方などで多くの方が疑問を持ちやすい部分があります。ここでは特に質問の多い「里帰り出産時の補助券利用」や「健診にかかる時間」について解説します。
里帰り出産では補助券が使えない?
里帰り出産で補助券が使えない代わりに、自治体からキャッシュバックしてもらえる制度があります。
補助券による助成制度は、住んでいる地域の医療機関が対象となるため、里帰り出産では使えません。
そこで代わりに償還払いという、検査費用を後からキャッシュバックする制度があります。
里帰り中の妊婦健診で支払った費用の領収書を、出産後に住民票のある役所に提出すると、助成を受けられます。
詳細は事前に居住地の自治体に確認しておくとスムーズです。
健診の時間はどのくらいかかる?
妊婦健診の所要時間は、混雑状況や検査内容によって差があります。
基本的な尿検査や血圧測定、超音波検査だけなら30分〜1時間程度が目安です。ただし、初回健診や血液検査を伴う日、医師から追加検査を指示された場合は1時間半以上かかることもあります。
余裕を持って予定を立てておくと安心です。
まとめ

妊婦健診は、母体と赤ちゃんの健康を守る大切な機会です。健診の頻度は妊娠週数に応じて増えていき、妊娠期間を通して約14回が目安とされています。
超音波や血液検査などで母体と胎児の状態を確認し、異常があれば早期治療につながります。
費用は保険適用外ですが、母子手帳とともに交付される補助券により多くが公費で支援されます。補助対象外の検査は自費負担ですが、医療費控除を利用できる場合もあります。
安心して妊娠期間を過ごすためにも、健診を継続的に受け、気になることは早めに相談しましょう。
妊娠初期におなかの赤ちゃんのダウン症など、染色体異常について調べる検査はこちらをご参考にしてください。