
妊娠中にお腹の赤ちゃんの健康状態を調べる方法の一つに、新型出生前診断(NIPT)があります。
NIPTは、母体からの採血のみで行えるため流産のリスクがなく、安全性の高い検査です。
一方で、すべての病気や異常がわかるわけではないこと、そして検査結果によっては重要な判断を迫られる可能性があることから、慎重な検討が必要です。
このページでは、NIPTについて詳しく知りたい方や、受検を考えている方に向けて、基礎知識や注意点をわかりやすくまとめています。
NIPTとは?まず知っておきたい基本情報

NIPT(ニプト / エヌアイピーティー)とは、「Non-Invasive Prenatal Testing(非侵襲的出生前遺伝学的検査)」の略称で、日本語では「新型出生前診断(しんがたしゅっせいぜんしんだん / しんがたしゅっしょうまえしんだん)」と呼ばれます。
この検査は、妊婦さんの血液から胎児の遺伝情報を分析し、胎児の染色体異常の可能性を調べる非侵襲的なスクリーニング検査です。
特に以下の染色体異常に対して高い検出率を誇ります。
- 21トリソミー(ダウン症)
- 18トリソミー
- 13トリソミー
【主な特徴とメリット】
- 非侵襲的:おなかに針を刺す必要がなく、母体の採血のみで検査可能
- 妊娠10週以降から受けられる
- 検査精度が高い
- 早期に結果がわかる:通常1週間~10日前後で通知
- 身体的負担が少ない:母体や胎児へのリスクがない
ただし、NIPTは確定診断ではなくスクリーニング検査であるため、陽性の場合には羊水検査などの確定検査が推奨されます。
NIPTの特徴と他の出生前診断との違い
NIPTは母体からの採血のみで実施できる検査であり、羊水検査のように子宮に針を刺す必要がないため、流産や感染などのリスクがありません。
また、非確定検査の中では最も検査精度が高く、妊娠10週という早い時期から受けることができるのが大きなメリットです。
出生前診断は、大きく以下の2種類に分けられます。
1)非確定検査(スクリーニング検査)
胎児に染色体異常などの疾患がある「可能性」を評価する検査です。
- 超音波検査(エコー検査)
- 母体血清マーカー検査(クアトロテストなど)
- コンバインド検査
- 新型出生前診断(NIPT)
NIPTは精度と安全性のバランスが取れた検査として多くの妊婦に選ばれていますが、あくまでスクリーニング検査であり、陽性時には確定検査の実施が推奨されます。
どんな人が受けられる?対象者の条件
NIPTを受けられる条件は、検査実施機関によって異なります。
たとえば、認可施設では以下のような条件が設けられていることがあります。
- 出産予定日の年齢が35歳以上(高齢妊娠)
- 過去に染色体異常のある胎児を妊娠または出産したことがある
- 胎児の両親のいずれかに染色体異常がある
- 胎児に異常が疑われた場合(超音波検査などで)
そのほか、施設によっては紹介状の提出や夫婦での来院同伴が求められることもあります。
一方、いわゆる無認可施設では、年齢や妊娠歴に関係なく、どなたでも受けられる場合が多く、制限は比較的少ない傾向にあります。
検査実施機関によって条件は大きく異なりますので、詳しくは直接お問合せください。
なお、NIPT Japanの提供するNIPTでは、年齢や紹介状の有無などの制限は設けておりません。詳しくは以下のリンクよりご確認ください。
👉【よくある質問/誰でもNIPTの検査は受けられますか?】
NIPTの目的
NIPTの目的は、妊娠初期に胎児の染色体異常について調べることで、出産に向けた医療的な準備や、家族としての意思決定に役立てることにあります。
NIPTは確定診断ではありませんが、検査結果は妊娠を継続するかどうか、また生まれてくる子どもにどのような支援が必要かを検討するきっかけとなります。
仮に染色体異常が判明しても、それを根本的に治療する方法は現在の医学では存在しません。
また、出生後の症状や合併症の重さには個人差があり、予測は困難です。
「健康な子を望む気持ち」と「病気のある子を産みたくない気持ち」は、必ずしも同じものではありません。妊娠や出産に対する価値観は人それぞれ異なり、一律の正解はありません。
また、誰でも生涯の中で病気や障害を抱える可能性があります。いわゆる「健康な人」であっても、平均で10個以上の遺伝子変異を保有しているとされており、それが発現していないだけの場合もあります。
染色体に変化があることがすぐに「病気」を意味するわけではありません。そうした違いもまた人間の多様性の一つであり、「個性」として受け止めようという考え方も広がりつつあります。
先天性の疾患によって困難を抱えることがあっても、それが人生の幸福を決定づけるとは限りません。NIPTは、こうした背景を理解しながら、自分たちにとって納得のいく選択をするための情報を提供してくれる検査です。
染色体異常が起こる割合
出生児のうち、約0.5~1%(およそ1,000人に5~10人)に染色体異常が見られます。
【出生時の染色体異常発生割合】

染色体異常を含む、生まれつきの病気や障害は「先天性疾患(先天障害)」と呼ばれます。
全体では、生まれた赤ちゃんの約3~5%は何らかの先天性疾患を持っているとされています。
先天性疾患には以下のようなものがあります。
- 染色体異常(例:ダウン症、18トリソミーなど)
- 単一遺伝子疾患(例:筋ジストロフィーなど)
- 多因子遺伝性疾患(例:統合失調症など、複数の遺伝子と環境要因の相互作用で発症)
このうち、染色体異常は先天性疾患全体の約25%を占めています。
「染色体異常」のうち、最も多いのがダウン症(21トリソミー)でおよそ53%、次いで18トリソミー、13トリソミーの頻度が高く、これら3つのトリソミーで染色体異常の約7割を占めます。
【主な染色体異常と発生頻度】
染色体異常の種類 | 発生頻度(人)(出生児あたり) |
---|---|
21トリソミー(ダウン症) | 約1/500 |
18トリソミー | 約1/6,000〜1/8,000 |
13トリソミー | 約1/10,000〜1/20,000 |
NIPTでわかる主な染色体異常の種類

NIPTで主に検査される「21トリソミー(ダウン症)」、「18トリソミー」、「13トリソミー」は、出生時に見られる染色体異常の中でも出生数の多い常染色体トリソミーです。
すべての染色体で異常が起こる可能性はありますが、染色体の番号が小さいほど(=サイズが大きく、遺伝子数が多いほど)、異常が発生した場合の影響も大きくなりやすい傾向があります。
実際、これら3つ以外の常染色体にトリソミーが生じた場合は、生存に必要な重要な遺伝子が多数影響を受けるため、妊娠初期の段階で自然流産となることがほとんどです。
21トリソミー(ダウン症)

ダウン症は、体の発育や運動・知的発達がゆるやかであることが主な特徴です。ただし、症状や発達の程度には大きな個人差があります。適切な医療・教育・社会的支援を受けることで、学校や職場、地域社会で活躍する人も増えています。
【ダウン症の主な特徴】
- 平均寿命は60歳を超えるとされ、年々延びつつある
- 運動発達の遅れ
- 言葉の発達の遅れ
- 知的発達の遅れ(軽度~中等度)
- 特徴的な顔立ち(つり上がった目、鼻が低い、平らな顔など)
- 筋緊張の低下(筋肉がやわらかく感じられる)
- 先天性心疾患(特に心室中隔欠損が多い)
- 視力や聴力の障害(白内障、中耳炎、難聴など)
18トリソミー

18トリソミーは、重度の発育障害や複数の臓器の奇形を伴いやすく、生命予後が厳しいことが特徴です。
【18トリソミーの主な特徴】
- 発育の著しい遅れ(低出生体重が多い)
- 運動発達の遅れ
- 知的発達の遅れ(脳形成や神経系発達の異常)
- 握った手の指が重なり、開きにくい
- 特徴的な顔立ち(小さな口やあご、高い鼻梁、後頭部の突出など)
- 心疾患、呼吸障害、消化器・腎臓の異常など多臓器の合併症
- 生後1年以内に亡くなることが多い(1年生存率は10〜30%程度)
胎児期から症状が重く現れることが多く、妊娠の約70%が流産または死産に至るとされています。
以前は、延命治療を行わず、緩和的なケア(看取りを前提とする医療)が主流でしたが、近年は医療技術の進歩と家族の価値観の多様化により、個々の状態に応じた治療方針を家族と医療者がともに選択するという考え方が広まりつつあります。
13トリソミー

13トリソミーは、口唇口蓋裂や多指、小眼球などの外見上の異常が多く見られるのが特徴で、中枢神経の形成異常により知的・運動機能の発達にも重度の遅れが伴います。
多くの場合、妊娠中から発育不全が見られ、臓器の重複異常を伴うことも多いため、生命予後は非常に厳しいとされています。
【13トリソミー】
- 妊娠中からの発育不全、低出生体重
- 重度の知的・運動発達の遅れ
- 口唇裂・口蓋裂
- 手足の異常(多指、手指の重なりなど)
- 特徴的な顔立ち(小頭症、前頭部の突出、目の間が近いなど)
- 心疾患、呼吸器・消化器・腎臓などの臓器異常
- 生後数週間〜数ヶ月で亡くなることが多い(1年生存率は約5〜10%)
近年では、医療技術の進歩や蓄積された臨床経験により、一部の症例で治療的介入が行われることもあります。そのため、子どもの状態や家族の考え方を尊重しながら、個別に治療方針を選択していくという考え方が広まりつつあります。
性染色体の異常
性染色体異常とは、性別を決定するX染色体やY染色体の数や構造に異常がある状態を指します。これらの異常は、常染色体異常(例:21トリソミー)と比べると、出生後も生存できる可能性が高く、症状も比較的軽度なことが多いのが特徴です。
【性染色体異常の一般的な特徴】
1.身体的・性発達の異常
思春期の発達(第二次性徴)が遅れたり、性ホルモンの分泌が少なく、不妊につながることがあります。
2.知的発達や学習の遅れ
多くは軽度で、読み書きや集中力に課題を抱えることがあります。
3.外見からは気づかれにくい
顔立ちや体格に目立った異常がないこともあり、成長後に診断されるケースも少なくありません。
4.症状に個人差が大きい
同じ染色体異常でも、症状の現れ方はさまざまで、無症状のまま一生気づかれないこともあります(特にトリプルX症候群やXYY症候群など)。
【主な性染色体異常とその特徴】
疾患名 | 発生率(出生児あたり) | 主な特徴 |
---|---|---|
ターナー症候群 | 女児の約2,000~2,500人に1人 | 低身長、卵巣機能不全、不妊 |
トリプルX症候群 | 女児の約1,000人に1人 | 多くは無症状、まれに学習障害 |
クラインフェルター症候群 | 男児の約500~1,000人に1人 | 精巣の発育不全、身長が高め、学習障害 |
XYY症候群 | 男児の約1,000人に1人 | 身長が高め、多くは正常発達、まれに学習障害 |
微小欠失症候群
微小欠失症候群とは、染色体の一部が非常に小さく欠けている(微小欠失)ことにより発症する先天性疾患の総称です。通常の染色体検査では見つけにくいため、「FISH法」や「マイクロアレイ解析」などの高精度な検査が必要です。
先天異常を持つ赤ちゃんのうち、約10%はこうした微小な染色体の変化が関係しています。
【微小欠失症候群の一般的な特徴】
1.知的発達や言語の遅れ
言葉の発達の遅れや学習の困難が見られることがあります。知的障害の程度は個人差があり、軽度から中等度が多いとされます。
2.行動や社会性の特性
多動傾向や自閉スペクトラムに似た行動、こだわりの強さが見られることがあります。対人関係の築きにくさが課題になる場合もあります。
3.顔貌の特徴
各症候群ごとに特徴的な顔立ちが見られることがあります(例:目の間隔、鼻の形など)。ただし、外見からは分かりにくい場合もあります。
4.先天性の身体的異常
心疾患、口蓋裂、免疫の異常、消化器や泌尿器の奇形など、複数の臓器に関連する合併症が見られることがあります。
5.診断には特殊な染色体検査が必要
通常の染色体検査では検出されないことが多く、FISH法やマイクロアレイ解析が用いられます。 また、NIPT(新型出生前診断)では、一部の微小欠失症候群を検出できる施設もあります。
【主な微小欠失症候群とその特徴】
疾患名 | 出生頻度(推定) | 主な特徴 |
---|---|---|
1p36欠失症候群 | 約1/5,000〜1/10,000 | 重度の知的障害、筋緊張低下、てんかん、心奇形、特徴的な顔貌(前額突出、深い眼窩など) |
4p欠失症候群 (Wolf-Hirschhorn症候群) | 約1/20,000〜1/50,000 | 発育遅延、重度知的障害、けいれん、小頭症、特徴的な顔貌(ギリシャ兜顔貌) |
5p欠失症候群 (Cri-Du-chat Syndrome, 猫鳴き症候群) | 約1/20,000〜1/50,000 | 猫の鳴き声のような泣き声、重度知的障害、小頭症、成長障害、顔貌の異常 |
15q11.2欠失症候群 (Prader-Willi症候群) | 約1/10,000〜1/15,000 | 筋緊張低下、過食による肥満、発達遅延、知的障害、低身長、不妊症 |
15q11.2欠失症候群 (Angelman症候群) | 約1/12,000〜1/20,000 | 重度の知的障害、発語の欠如、よく笑う、運動失調、てんかん、睡眠障害 |
22q11.2欠失症候群 (DiGeorge症候群) | 約1/4,000〜1/6,000 | 心疾患、口蓋裂、免疫不全、学習障害、顔貌異常(鼻根部の低さなど) |
高齢出産と染色体異常の確率
【女性の出産時年齢と染色体異常を持つ子が生まれる頻度】

染色体の数に異常が起こる原因の多くは、卵子の分裂過程(減数分裂)におけるエラーにあります。
このエラーは、主に母親側の卵子に由来し、加齢とともに分裂に関わる細胞機能が低下することで、染色体の過剰や不足が生じやすくなると考えられています。
一般的に、35歳以上ではじめて出産することを「高齢出産」と呼び、出産年齢が上がるにつれて、胎児に染色体異常が起こるリスクも高まることが分かっています。
ただし、35歳を境に急激にリスクが跳ね上がるわけではなく、リスクは年齢とともに緩やかに増加していきます。
また、20代や30代前半であっても染色体異常がまったく起こらないわけではなく、どの年利においても一定の確率でリスクが存在します。
そのため、「何歳からリスクが高い」と一律に判断するのではなく、正確な情報をもとに、自分自身の状況や価値観に応じて判断することが大切です。
NIPTの検査精度と検査の限界|信頼性はどこまである?
NIPT(新型出生前診断)は、特定の染色体異常を高精度に検出できるスクリーニング検査です。その精度を評価する際には、主に「感度」と「特異度」という2つの指標が用いられます。
感度とは、ダウン症などの染色体異常がある胎児を正しく「陽性」と判定できる割合のことです。たとえば感度が99%であれば、100人の該当胎児のうち99人を正しく検出できることを意味します。感度が高いほど、疾患を見逃す(偽陰性となる)可能性は低くなります。
ただし、感度99%の検査で「陽性」と判定されても、それが「99%の確率で胎児に以上がある」という意味ではありません。これは「陽性的中率」という別の指標で評価されます。
一方、特異度とは、異常がない胎児を正しく「陰性」と判定できる割合を示します。NIPTはこの特異度が非常に高いため、「陰性」と判定された場合、染色体異常である可能性は極めて低いといえます。
【NIPTの検査精度(施設によって異なる)】
染色体異常 | 感度 | 特異度 |
---|---|---|
21トリソミー | 99.9% | 99.8% |
18トリソミー | 97.4% | 99.6% |
13トリソミー | 87.5% | 99.9% |
全染色体異常(総合) | 98.7% | 99.9% |
検査の限界
NIPTは高い精度を持つとはいえ、あくまで「スクリーニング検査」であり、確定診断ではありません。以下のような限界があることを理解しておく必要があります。
【NIPTの検査限界】
- 染色体異常の「可能性」を示すものであり、診断ではない
- すべての先天性疾患を検出できるわけではない
- 偽陽性、偽陰性の可能性がゼロではない
- 異常が判明しても、その重症度や症状の程度は判断できない
そのため、検査結果が陽性だった場合は、羊水検査などの確定診断による確認が強く推奨されます。
NIPTの高い信頼性と限界を正しく理解し、医師とよく相談した上で検査を受けることが大切です。
NIPT検査結果の意味
NIPT(新型出生前診断)は、すべての先天性疾患を調べる検査ではありません。対象となる染色体異常(例:21・18・13トリソミーなど)の“可能性”を調べるスクリーニング検査です。
検査結果は、「陽性」「陰性」「判定保留」の3つに分類されます。
検査を受ける前に、どのような結果が出ても冷静に対応できるよう、パートナーや医師と事前に話し合っておくことが大切です。
そのためにも、事前に遺伝カウンセリングを受けて、検査の仕組みや結果への対応について理解を深めておくことが推奨されます。
陽性と判定された場合
「陽性」は、検査対象の染色体異常がある可能性が高いことを示します。
ただし、NIPTは確定診断ではないため、実際に異常があるかどうかを判断するには羊水検査などの確定検査が必要です。
陽性という結果を受けて動揺する方も多いですが、偽陽性の可能性もゼロではないため、専門医やカウンセラーの説明を受けて、正しい情報の元で冷静に判断することが重要です。
羊水検査は強制ではなく、ご本人の意思に基づいて選択されます。
陰性でも100%安心とは限らない理由
「陰性」は、検査対象の染色体異常が検出されなかったことを意味します。しかしこれは「異常が絶対にない」という意味ではありません。
NIPTには限界があり、
- 検査対象外の染色体や微細な異常は検出できない
- 偽陰性(異常があるのに陰性と出る)もごく少数ながら起こりうる
といった点を理解しておく必要があります。
結果が陰性の場合、通常は追加検査などの対応は不要ですが、引き続き妊婦健診などで胎児の健康を見守ることが大切です。
判定保留になるケース
ごくまれに、NIPTの結果が「判定保留」になることがあります。これは、検査の精度に影響を与える要因があり、正確な結果が得られなかった場合に生じます。
【NIPTで判定保留になるケース】
- 母体血中の胎児DNA量が不十分
妊娠週数が早すぎる場合や、母体の体格(BMI)が高い場合には、胎児DNAの割合が低くなることがあり、解析が難しくなることがあります。
- 服薬の影響
一部の薬剤(特に免疫抑制剤や抗がん剤など)が胎児DNAの抽出や解析に影響を与える可能性が指摘されていますが、日常的な薬では通常問題になることは少ないとされています。
- 溶血の場合
採血時に赤血球が破壊されることで血液が溶血し、検査に使用できない状態になる場合があります。
このような場合は、一定期間(通常は1〜2週間)後に再検査が可能となることがあり、胎児DNA量が増加することで結果が得られる可能性があります。再検査を行うか、他の検査方法を選択するかについては、医師や遺伝カウンセラーと相談のうえ判断することが大切です。
検査後の選択肢|家族で考えるべきこと
NIPTの結果を受け取ったあと、家族はさまざまな選択を迫られることがあります。陽性の場合、確定診断を受けるかどうか、そしてその後の方針をどうするかを考える必要があります。
どの選択肢を選ぶにしても、「正解」はひとつではありません。胎児の状態だけでなく、家庭の状況、価値観、サポート体制などを含めて、家族全体で話し合い、納得のいく判断をすることが大切です。
感情的にも精神的にも負担が大きくなりがちな場面だからこそ、医師や遺伝カウンセラーの支援を受けながら、一歩ずつ考えていく姿勢が重要です。
中絶を検討する場合の流れと制限
検査の結果、重大な染色体異常が確認され、妊娠の継続が困難と判断される場合には、中絶という選択を考える方もいます。ただし、日本の法律(母体保護法)では、妊娠22週以降の人工妊娠中絶は原則として認められていません。
中絶を検討する際の主な流れは、次のようになります。
- 羊水検査などの確定診断を受ける
- 診断結果をもとに、医師や遺伝カウンセラーと相談する
- 妊娠21週6日までに中絶の意思決定を行い、医療機関で処置を受ける
なお、日本では胎児の先天性疾患そのものを理由とした中絶は法的に認められていません。しかし、母体の身体的・精神的負担や経済的理由などが考慮され、医師の判断により22週未満で人工妊娠中絶が行われています。
このような判断は非常に重く、精神的な負担を伴うものです。パートナーや家族の支えを受けながら、医師・カウンセラーと連携し、納得のいく形で判断できる環境づくりが大切です。
染色体異常の治療とサポート体制
染色体異常そのものを根本的に治療する方法は現在のところ存在しません。しかし、多くのケースで、合併症や発達の特性に応じた医療的・教育的な支援体制が整備されています。
具体的な支援の例として、以下のようなものがあります。
- 小児慢性特定疾病に認定されると、医療費の助成や福祉制度の利用が可能
- 心疾患や消化器疾患などに対する外科的治療
- 発達支援センターや療育施設による発達・学習支援
- 特別支援教育や医療型児童発達支援施設での教育的支援
- 地域の保健師やソーシャルワーカーによる相談・支援体制
さらに近年では、染色体異常のある子どもとその家族を支援するNPO法人や当事者・親の会なども活発に活動しており、同じ経験を持つ人との交流が心理的な支えになるケースも多くあります。
大切なのは、一人で悩みを抱え込まず、地域の支援制度や専門機関を積極的に活用することです。医療・福祉・教育の専門家と連携しながら、子ども一人ひとりに合ったサポートを受けられる環境づくりが重要です。
遺伝カウンセリングとは|検査前に知っておきたいこと

遺伝カウンセリングと聞くと、少し堅苦しい印象を持たれるかもしれませんが、実際にはあなた自身の状況や悩みについて、専門家に安心して相談できる場です。
カウンセリングを行うのは、「臨床遺伝専門医」や「認定遺伝カウンセラー」など、遺伝医療に関する知識と経験を持つ医療の専門家です。
カウンセラーは、あなたの選択を否定することは決してなく、科学的根拠に基づいた情報提供を通じて、納得のいく意思決定をサポートしてくれます。
出生前診断において「正解」はひとつではありません。大切なのは、あなた自身(そして必要に応じてパートナーと)情報をもとにじっくりと考え、納得のいく選択をすることです。
どのような選択であっても、価値観を尊重しながら寄り添い、必要な支援をしてくれる存在——それが、遺伝カウンセラーです。
NIPTの費用と保険適用の有無

NIPT(新型出生前診断)は、日本では健康保険が適用されないため、検査費用は全額自己負担となります。そのため、一般的に高額な費用がかかる傾向があります。
検査費用の相場は、おおよそ10万〜25万円程度です。検査内容や施設の方針により幅があり、検査項目が多くなるほど費用も高くなるのが一般的です。
費用を比較・検討する際には、以下の点もあわせて確認しておくと安心です。
- 遺伝カウンセリングの料金は検査費用に含まれているか
- 初診料や再診料などの追加費用がかかるか
- 陽性判定後に羊水検査を行う場合、その費用補助制度があるか
これらを含めた総費用の目安を事前に把握しておくことが、納得のいく選択につながります。
認可施設と無認可施設の違い
NIPTを提供する検査施設には、「認可施設(認証施設)」と「無認可施設(無認証施設)」があります。これは、日本医学会が認可しているかどうかによる違いです。
認可(認証)施設とは
認可施設とは、日本医学会が定める厳格な条件を満たし、認証されたNIPT検査施設です。主な特徴は以下の通りです。
- 臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが常駐しており、正確な説明と支援が受けられる
- 検査項目は21・18・13トリソミーの3項目のみ
- 原則35歳以上の年齢制限がある
- リスクの高い妊婦のみ受けられる
- 夫婦同伴での外来受診が必要
- 検査前後に遺伝カウンセリングが必須
- 費用は15〜20万円前後が相場
無認可(無認定)施設とは
無認可施設とは、日本医学会の認証を受けていない民間のNIPT検査施設です。主な特徴は以下の通りです。
- 年齢制限がなく誰でも検査を受けられることが多い
- 微小欠失症候群や性染色体異常、性別判定など検査項目が多彩
- 遺伝カウンセリングが任意、または未実施のこともある
- 医師の専門性や検査体制が施設によって異なるため、品質に差がある可能性がある
- 検査費用・検査項目は幅広い(5万~25万円程度)
便宜上、一般的に「無認可施設」と呼ばれているため、違法なのではないかと不安に思う方もいるかもしれませんが、違法ではなく、検査精度についても差はないとされています。
ただし、検査体制やサポートの内容、倫理的配慮については施設ごとに大きく異なる場合があるため、慎重な確認が必要です。
どちらを選ぶかは、信頼性・サポート体制・費用などのバランスを考えて決めることが重要です。
特に検査に対する不安がある場合や、結果をどう受け止めるか迷いがある方は、遺伝カウンセリングが受けられる施設を選ぶことをおすすめします。
納得のいく選択ができるよう、事前に十分な情報収集と相談を行いましょう。
双子やバニシングツインのNIPTの注意点

【双子(多胎妊娠)のNIPTにおける注意点】
双子でも検査施設によってはNIPTを受けることができます。
ただし、多胎妊娠におけるNIPTでは、検査結果の解釈に以下の注意が必要です。
- 結果が「陽性」と出た場合、どちらの胎児に異常があるのか、または両方に異常があるのかは特定できない
- 性別判定が可能な施設であっても、「少なくとも1人が男児」といった判定にとどまり、個々の胎児の性別を区別することはできない
- 検査項目についても、双胎では制限される場合がある
【バニシングツインのNIPTにおける注意点】
バニシングツインとは、双子や多胎妊娠において、妊娠初期のうちに一方の胎児が自然に消失する現象のことを指します。超音波で確認された胎児がその後見えなくなることから、このように呼ばれています。
この現象は、多胎妊娠の約10~15%で発生するとされており、母体や残された胎児への直接的な影響は少ないといわれています。
バニシングツインと診断された場合でも、NIPT(新型出生前診断)を受けることは可能です。ただし、消失した胎児のDNAが母体血中に残っている場合、検査結果に影響(偽陽性)を及ぼす可能性があるため、検査の実施タイミングや結果の解釈には慎重さが求められます。
そのため、NIPTを検討する際は、医師や遺伝カウンセラーとよく相談したうえで判断することが大切です。
まとめ
ここまですべてお読みいただいても、不安に思うことや気持ちの整理がつかないこと、パートナーと意ここまでご覧いただき、ありがとうございます。
NIPTをはじめとした出生前診断について理解が深まる一方で、不安な気持ちが残ったり、パートナーとの考えに違いがあったりと、悩まれる方も少なくないと思います。
検査を受けることは、時に大きな選択と向き合う機会になることがあります。
NIPT Japanでは、専門医によるオンラインカウンセリングをご案内しています。身近な人には話しにくいことでも、第三者に相談することで気持ちが整理され、判断の助けになるかもしれません。
最終的には、お二人が納得のいく選択ができることを心より願っております。