
女性に特有の臓器である子宮や卵巣などは、月経としての周期的な変化や妊娠・出産に深くかかわっています。
子宮は丈夫な筋肉でできていますが、女性ホルモンの影響などから子宮内膜症や子宮筋腫などのさまざまな病気がおこる可能性があります。
今回は子宮や卵巣のしくみやはたらき、妊娠するとおこる子宮の変化などについてご紹介しています。
子宮のしくみ

子宮は女性の下腹部にあり、骨盤の真ん中あたりにあります。
子宮の前には膀胱が、後ろには直腸があるため、子宮のトラブルがあると排尿や排便への影響があらわれやすくなります。

子宮は上の2/3を「子宮体部」、下の1/3の細い筒状の部分を「子宮頸部(しきゅうけいぶ)」といいその下は膣(ちつ)に続いています。
子宮体部の両サイドには卵管と卵巣があります。
子宮の内側の粘膜の部分を「子宮内膜」といいます。
生理ではこの子宮内膜が増殖、剥離し月経血として排出されています。
【卵巣】
卵巣には卵子の元となる細胞が貯蔵されているだけではなく、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という2種類の女性ホルモンを分泌しており、毎月の生理や妊娠・出産にかかわる重要な役割を担っています。
排卵

女性の卵巣の中には、卵子の元となる原子卵胞が生まれる前から約700万個貯蔵されています。
これは生涯増えることはなく、生まれたときにはすでに200万個程度になり、初潮を迎える頃には30万個程度に減っています。
卵胞は毎月数個が発育し、そのうちの成熟した一つが卵子として卵巣から飛び出すことを「排卵」といい、排卵された卵子は卵管で精子との出会いを待ちます。
排卵のタイミングで性行為をし精子と卵子が出会って受精すると、受精卵となって卵管から子宮内膜へと移動し着床すると妊娠が成立します。
排卵がおこるのは生理周期により個人差がありますが、だいたい直近の生理開始日から2週間後くらいです。
子宮と妊娠
受精卵が着床するのは子宮のどこでもよいわけではなく、子宮体部にある子宮内膜でしか正常に育つことができません。
子宮内膜は着床のタイミングに合わせて厚くなることで受精卵を優しく受け止めて育てるベッドのような役割を果たします。
妊娠すると胎児はママの子宮の中で育ちます。
子宮内膜に着床した受精卵は、細胞分裂を繰り返しながら胎盤を通して酸素や栄養などをもらって成長していきます。
子宮の筋肉は平滑筋で伸縮性があるため、出産直前には20~30倍にまで大きく伸びても断裂することなく、分娩時には赤ちゃんを外へ押し出し、出産後は元のサイズに戻ることができます。
子宮底長とはどこのこと?

妊婦健診では「子宮底長(しきゅうていちょう)」を測定することがあります。
いったいどこの長さのことをいうのでしょうか?
子宮底長とは子宮がどれくらい大きくなっているかを妊婦さんのお腹の上から測定したもので、恥骨の上から子宮の上の端までの長さをメジャーで測ります。
これは胎児が妊娠週数に適した発育をしているかどうか、羊水量が多すぎたりしないかなど妊娠の経過が順調かを判断するための指標の一つになります。
妊娠週数に対して子宮底長が長い場合は羊水過多や巨大児、短い場合は羊水過少や胎児発育不全の可能性があり、その他の検査で詳しく調べます。
以前は妊婦健診で必須の項目でしたが、現在では超音波検査によっておなかの赤ちゃんの状態がより詳しく分かるようになったため、子宮底長を測定しないこともあります。
妊婦健診の他の項目については、「コラム:妊婦健診では何をするのか?費用は?徹底解説!」もご参考にしてください。
子宮の病気

子宮のトラブルは初期は自覚症状がないことが多く、あっても「お腹が痛い」「不正出血がある」など、「調子が悪いけど様子をみようかな。。。」という程度だったりします。
子宮の病気が悪化すると不妊の原因となったり、妊娠できたとしても流産や早産の原因となる可能性があります。
まずは定期的に検診を受けて早期発見に努めるとともに、月経不順やよく分からない下腹部痛などが続くようなら早めに受診するようにしましょう。
【子宮におこる病気】
- 子宮筋腫
- 子宮内膜症
- 子宮内膜炎
- 子宮頸管ポリープ
- 子宮頸がん
- 子宮体がん
子宮筋腫
子宮筋腫とは子宮にできる良性の腫瘍のことで、月経のある女性の約4人に1人がなり特に30~40歳代の女性に多く見つかる身近な病気です。
主な症状は月経困難症と過多月経です。
月経困難症とは月経にともなっておこる下腹部痛や腰痛、頭痛、吐き気、いらいらなどのさまざまな症状のことです。
過多月経は生理の出血量が多く、ときに血の塊が出ることもあり貧血をきたしやすくなります。
さらに筋腫が大きくなるとまわりの臓器を圧迫してしまい、頻尿や便秘、排尿困難などの症状が現れることもあります。
子宮筋腫が不妊や流産、早産の原因になることもありますが、筋腫の大きさや個数などは人それぞれのため、年齢や状況などに応じて治療を行っていきます。
子宮筋腫については、「コラム:妊娠中に子宮筋腫が見つかったら?子宮筋腫の原因や治療法も合わせて解説!」もご参考にしてください。
子宮内膜症
子宮内膜症とは、子宮の内側をおおう「子宮内膜」に似た組織が、本来はないはずの場所で増殖してしまう病気のことで、20~30歳代に多く、30歳代前半で最も多いとされています。
主な症状は月経困難症などの痛みと不妊です。
子宮内膜は生理周期に合わせて厚さが変化し、妊娠が成立しなければ生理として膣から排出されます。
しかし子宮内膜症では卵巣や卵管、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)といった場所で子宮内膜のような組織が増殖してしまい、その出口がないため排出されず出血した血液はたまり、炎症や癒着などをおこして痛みの原因となります。
生理にともなっておこる月経困難症は、子宮内膜症の人の約90%にみられるほか、生理の時以外にも下腹部痛や腰痛、排便痛や性交痛などのさまざまな痛みがおこります。
癒着がおこる場所によっては不妊症の原因にもなり、子宮内膜症の人の10人に3~5人は不妊になるといわれています。
子宮内膜症の症状が進行すると不妊になりやすくなりますが、症状が軽度で卵巣や卵管などに異常がなければ自然妊娠できる可能性があります。
治療法としては薬物療法や手術療法などがあり、症状の種類や程度、年齢や妊娠の希望などを考慮して最適な治療法を選択していきます。
子宮内膜症については、「コラム:子宮内膜症と妊娠」もご参考にしてください。
子宮内膜炎
子宮内膜炎とは子宮の内側をおおっている子宮内膜という粘膜が細菌の感染などにより炎症をおこしている状態です。
子宮内膜は生理のたびにはがれ落ちて排出されまた新しく作られるため、細菌が侵入してきたとしても炎症はおこりにくいのですが、流産後や中絶手術後、出産後などは子宮頸管が開いているため細菌が侵入しやすく、体の抵抗力も弱っているため子宮内膜炎がおこりやすくなります。
性行為による感染や、長時間のタンポンの使用で不衛生な状態だったことなどが原因として考えられます。
自覚症状は軽く、不正出血や下腹部痛、おりものの量が増えるといった症状がみられることもあります。
子宮内膜炎が進行すると炎症が子宮内から卵管まで広がり、不妊の原因になることもあります。
子宮頸管ポリープ
子宮頸管ポリープ(しきゅうけいかん)とは子宮の出口にあたる子宮頸管に生じるポリープ(いぼ状のできもの)のことで、不正出血の原因となることがあります。
ポリープはほとんどが良性のため、妊娠中に見つかった場合は切除せず経過観察となることがほとんどです。
痛みはありませんが、性交や排便などの刺激で不正出血がおこることがあります。
非妊娠時にみつかった場合は切除することが一般的で、基本的には麻酔なしで簡単に取り除くことができます。
子宮頸がん

子宮頸がんとは子宮の下部3分の1を占める子宮頸部(しきゅうけいぶ)にできるがんのことで、20~30代の若い女性にも増えており、女性特有のがんの中では乳がんに次いで多く発症しています。
初期のうちは自覚症状がほとんどないことから妊娠初期の健診時に発見されることが多く、がんがあまり進行していない段階であれば妊娠を継続することもできます。
子宮頸がんの原因のほとんどはHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染によるもので、主に性行為によって感染します。
感染の初期にはほぼ症状はありませんが、性行為後にわずかな出血があったりやおりものに血が混じるようになり、進行すると下腹部痛や不正出血が続いたりします。
子宮頸がんはワクチン接種と定期健診で予防が可能ながんですので、妊娠を希望する女性だけではなく、定期的に検診を受けるようにしましょう。
子宮体がん
子宮体がんとは子宮内膜にできるがんのことで、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌期間が長いほど発症しやすくなるため、40代後半から60代に多くみられます。
不正出血で受診した際に発見されることが多く、進行すると下腹部痛やむくみ、排尿や排便の障害がおこることもあります。
エストロゲンは子宮内膜の発育を促すはたらきがあり、子宮内膜増殖症を経て子宮体がんになりますので、出産経験のない方や月経不順がある方、肥満の方も子宮体がんになるリスクが高くなります。
治療は基本的に手術で病巣部を取り除きます。
子宮外妊娠
子宮外妊娠(異所性妊娠)とは子宮内の正しい場所以外に受精卵が着床してしまうことをいい、残念ながら妊娠を継続することはできません。
子宮外妊娠は妊婦さんのおよそ100人に1人の割合でおこっています。
その原因としては、もともと卵管の形に異常があったり感染症による影響、体外受精や胚移植を受けていること、子宮内膜症による炎症などが考えられます。
腹痛や性器出血がみられることがありますが、まったく自覚症状がないことも少なくありません。
妊娠検査薬が陽性でも子宮外妊娠だった場合は赤ちゃんが成長できる環境ではなく、胎児がそのまま成長するとママの命にも危険が及びますので、できるだけ早く妊娠を終わらせる必要があります。
子宮外妊娠については、「コラム:子宮外妊娠とは?原因や妊娠の継続について」もご参考にしてください。
まとめ

子宮は妊娠しておなかの赤ちゃんが成長しても伸縮する柔軟さと丈夫さを持っている一方で、さまざまなトラブルや病気がおこる可能性もあります。
月経不順や不正出血などは人には相談しづらいかもしれませんが、「調子が悪いのかな。。。?」と思うことが続くようなら早めに婦人科を受診してみてくださいね。