妊娠中の食生活は、母体と胎児の健康を守るために特に重要です。
その中でも「カフェインの摂取」は、多くの妊婦さんが気にするポイントのひとつではないでしょうか。
この記事では、妊婦さんがカフェインを控えるべき理由をわかりやすく解説し、妊婦さんにおすすめの飲み物や、反対に気をつけるべき飲み物についてもご紹介しています。
安心して妊娠生活を送るために、ぜひご参考にしてください。
妊娠中にカフェインが与える影響とは?
カフェインは中枢神経を刺激し、眠気を抑えて集中力を高める覚醒作用があるため、適量であれば集中力や作業効率の向上など身体に良い効果をもたらします。
しかし過剰に摂取すると神経が興奮して心拍数増加や不安感、めまいや頭痛、不眠症や震え、下痢や吐き気などの健康問題を引き起こす可能性があるため、大人でも飲む量には注意が必要です。
妊娠中、胎盤は母体から胎児へ栄養や酸素を供給し、細菌やウイルスなどの有害物質を通さないバリアの役割を果たします。
しかし、カフェインは分子量が小さいため胎盤を通過し、胎児の体内に移行します。
胎児はカフェインを分解・代謝する能力が未熟なため、長時間にわたりカフェインの影響を受けることになります。
これにより、胎児の発育遅延や低出生体重児、さらには流産のリスクが高まる可能性が指摘されています。
妊娠中のカフェイン摂取は1日200mg以下(コーヒー1~2杯程度)に抑えることが推奨されています。
心配な場合は医師に相談し、カフェインレス飲料などを積極的に活用するとよいでしょう。
胎児への影響とリスク
妊婦のカフェイン摂取は胎児に多くの影響を及ぼす可能性があり、特に成長や発育に関しては注意が必要です。
【妊婦のカフェイン摂取が胎児に与える可能性のある影響】
- 流産リスク増加
- 胎児発育不全
- 低出生体重児
少量のカフェインなら問題ありませんが、たくさん摂りすぎると上記のリスクが高まります。
流産
妊娠中のカフェインの過剰摂取は流産のリスクを高めます。
スウェーデンで行われた症例対照研究では、1日あたりのカフェイン摂取量が100mg以上で流産リスクが上昇しました。1)
- 100~299mg/日:1.3倍
- 300~499mg/日:1.4倍
- 500mg以上/日:2.2倍
カフェインの影響は個人差が大きいため一概には言えませんが、カフェイン摂取量と自然流産のリスクには関連性があり、摂取量が増えるほどリスクが高まる傾向が見られます。
胎児発育不全
カフェインは胎盤を通じて胎児の体内に移行しますが、胎児はカフェインをスムーズに分解することができません。
そのため体内に長時間とどまり、胎児の発育を妨げて胎児発育不全につながる可能性があります。
また、子宮や胎盤の血管を収縮させ、胎児への血流が悪くなることで発育に悪影響を与える可能性があります。
胎児の心拍数や呼吸数を増加させるほか、睡眠時間を長くさせることで睡眠リズムを乱す可能性があります。
低出生体重児
胎児発育不全では、2,500g未満の体重で生まれる「低出生体重児」となる可能性が高くなります。
1日に300mg以上のカフェインを摂取することが、低出生体重児のリスクを高めるとの研究があります。2)
低出生体重児は在胎期間が短くて身体が小さく生まれるほど、健康や発育に影響を与える可能性が高くなります。
母体への影響:貧血、不眠
【貧血】
カフェインは、食事からの鉄分の吸収を阻害する作用があります。
妊娠中は鉄分が多く必要ですが、カフェインの過剰摂取により鉄欠乏性貧血を引き起こすリスクが高まります。
貧血になると疲労感が増し、すぐに疲れる、朝起きれない、ずっとしんどいなどの症状が起こり、さらに胎児への酸素供給が減少する恐れがあります。
【不眠や神経過敏】
妊娠中はホルモンバランスの変化によって睡眠の質が低下しやすい傾向があります。
カフェインを摂取すると、覚醒作用によってさらに不眠症や浅い眠りが引き起こされ、母体の疲労がたまりやすくなります。
【胃腸への刺激】
カフェインは胃酸の分泌を促進し、胃に負担をかけることがあります。
これにより胃痛や胸やけ、消化不良などの症状が悪化する可能性があります。
妊娠中は消化器官が圧迫されやすいため、特に注意が必要です。
妊娠中のカフェイン許容量
日本では妊婦のカフェイン摂取量に関して明確な基準は定められていませんが、世界のガイドラインによると、1日あたりの摂取量を200mg~300mg程度に抑えることが推奨されています。(コーヒーならマグカップで2杯程度)。
WHO(世界保健機構)は、妊婦さんの1日のカフェイン摂取量はコーヒー3~4杯程度までにすべきとしています。
英国食品基準庁(FSA)では、1日のカフェイン摂取量を200mg程度にするよう求めています。
カナダ保健省 (HC)では、妊婦や授乳中、妊娠を予定している女性は300mg/日までとしています。
このように国によって推奨量に違いがありますが、これらのガイドラインを考慮すると、妊婦さんの1日のカフェイン摂取量は200mg程度を目安として、300mgを超えないようにした方が良いでしょう。
なお、健康な成人においても1日400mg程度を上限とした方がよいとされています。(コーヒーならマグカップで約3杯)
カフェインが多く含まれる飲み物
カフェインはコーヒーのほか、緑茶や紅茶、エナジードリンクなどに多く含まれています。
以下は、主な飲み物・食べ物に含まれるカフェイン量と、カフェイン200mgに相当する量を示した一覧です。
【飲み物・食べ物に含まれるカフェイン量】
飲み物・食べ物 | 1杯あたりのカフェイン量 (おおよそ) | カフェイン200mgに 相当する量 |
---|---|---|
コーヒー | 80-90mg / 150ml | 353ml(2~3杯程度) |
玉露 | 240mg / 150ml | 125ml |
紅茶 | 45mg / 150ml | 667ml |
せん茶(緑茶) | 30mg / 150ml | 1リットル |
ほうじ茶(緑茶) | 30mg / 150ml | 1リットル |
ウーロン茶 | 30mg / 150ml | 1リットル |
エナジードリンク (モンスター) | 142mg / 335ml(1本) | 1.4本 |
エナジードリンク (レッドブル) | 80mg / 250ml(1本) | 2.5本 |
栄養ドリンク (リポビタンD) | 50mg / 100ml(1本) | 4本 |
コーラ | 50mg / 500ml(ペットボトル) | 2リットル |
ココア | 10mg / 150ml | 3リットル |
チョコレート | 20mg / 50g(板チョコ1枚) | 500g(板チョコ10枚) |
高カカオチョコレート | 40mg / 50g(板チョコ1枚) | 250g(板チョコ5枚) |
上記の飲み物は150mlを基準に計算していますが、500mlのペットボトルで飲む場合は約3倍のカフェインを摂取することになります。
例えば、紅茶のペットボトルには約150mg、ウーロン茶のペットボトルには約100mgのカフェインが含まれるため、日常的に摂取している飲み物の量には注意が必要です。
エナジードリンクは製品によってカフェイン量が大きく異なるため、製品ラベルの成分表示を確認することが重要です。
また、コンビニで販売されている淹れたてホットコーヒーの場合、Sサイズで150~160ml程度、Lサイズでは300~400ml程度あるため、飲む量やサイズにも注意してください。
要注意!ハーブティー
一般的にハーブティーはカフェインを含まないため、妊娠中でも安全に飲めるとされています。
ただし、一部のハーブには妊娠に影響を与える成分が含まれている場合があるため、飲む前に医師や助産師に相談することをお勧めします。
特にジャスミン茶やマテ茶、レモングラス、ハトムギ茶などには子宮収縮作用があるため、妊娠中は避けるべきです。
安心して飲めるハーブティーとしては、ルイボスティー、ローズヒップティー、ラズベリーリーフティーなどが挙げられます。
ただし、これらも大量に飲むことは避け、1日に1~2杯を目安に適量を守ることが大切です。
妊娠中に飲んでも良い飲み物は?
麦茶やそば茶、ルイボスティーはカフェインを含まないため、妊娠中の飲み物としておすすめです。
【飲み物のカフェイン含有量(100mlあたり)】
飲み物・食べ物 | カフェイン含有量 |
---|---|
ルイボスティー | 0mg |
麦茶 | 0mg |
そば茶 | 0mg |
黒豆茶 | 0mg |
ノンカフェインコーヒー | 0mg |
カフェインを含まないコーヒーとして「デカフェ」があります。
デカフェはカフェインをほぼ除去していますが、0.2%程度カフェインが残っている場合もあります。
妊娠中に飲む際は、適量を守ることで安心して楽しめます。
そのほか、ミネラルウォーターにレモン果汁を加えるとさっぱりした味わいになり、気分転換としてもおすすめです。
まとめ
妊娠中のカフェインの過剰摂取は流産、胎児発育不全、低出生体重児につながる可能性が高まるため1日に200mg以下に抑えることが推奨されています。
少量のカフェインなら問題ないとされていますので、コーヒーなら1日に1~2杯程度、紅茶なら500mlのペットボトル1本程度にしておきましょう。
【参考サイト】
1)Caffeine intake and the risk of first-trimester spontaneous abortion – PubMed