葉酸が不足すると心配のある神経管閉鎖障害って?

神経管閉鎖障害

妊娠初期に「葉酸」が不足すると胎児に「神経管閉鎖障害」がおこるリスクが高くなると聞いたことがある方が多いと思いますが、神経管閉鎖障害とはどのような病態なのでしょうか?

神経管閉鎖障害が重度におこると「無脳症」など生命の維持が極めて難しい状態になる可能性もあります。

妊娠前や妊娠初期は葉酸をどのように摂取すればよいのか、葉酸を多く含む食べ物も含めてご紹介いたします。

神経管閉鎖障害とは

神経管閉鎖障害とは脳や脊髄に生じる先天異常のことをいい、妊娠初期におこります。

神経管とは脳や脊髄(せきずい)のもとになる管状の器官で、神経板という板状のものが巻きあがって管の形になり、頭側は脳に、足側は脊髄になります。

【神経管が形成される過程】

神経管形成

神経管閉鎖障害はこの神経管が作られる過程がうまくいかず、一部が閉じてないなどきちんとした管の形にならないことが原因でおこり、脳や脊髄に影響がでます。

日本での発生率は出生1万人(死産を含む)当たり6人程度で推移しており、年間にするとおよそ500人ほどになります。

神経管は妊娠6週ごろに完成しますので、多くの人が妊娠に気付く妊娠4~5週ごろにはすでに神経管は作られ始めています。

神経管閉鎖障害の中で多いのは「二分脊椎」「脳瘤」「無脳症」です。

二分脊椎

二分脊椎

二分脊椎(にぶんせきつい)とは神経管の閉鎖不全によって背骨の一部がうまく形成されなかったことで、本来なら背骨の中にあるべき脊髄(せきずい)が外に出てしまっている、またはそれに近い状態のことをいいます。

脊椎(せきつい)は背骨のことです。

脊髄(せきずい)は脳からつながる中枢神経のことで、脳からの指令を体の各部位に伝えたり、その逆に体の各部位からの情報を脳に伝えます。

そのため脊髄が損傷すると、その部位によって運動機能や知覚に障害がおこります。

脊髄断面

二分脊椎がおこった部位やその程度によって、症状は軽いものから歩行障害や排泄障害などを伴う重症なものまで幅広くあります。

脳瘤

脳瘤(のうりゅう)は、神経管の閉鎖不全によって頭蓋骨の一部が欠損し、そこから組織の一部がこぶのように突出した状態のことをいいます。

脳瘤では多くの場合で水頭症を合併します。

水頭症とは、脳の内部にある空間に液体(脳せき髄液)が過剰にたまった状態のことです。

無脳症

無脳症

無脳症は神経管の閉鎖不全によって脳の一部または全部が欠損した状態のことをいいます。

その症状の重さから妊娠の途中で流産してしまうか、生まれても数日のうちに亡くなってしまう場合がほとんどです。

神経管閉鎖障害の原因

神経管閉鎖障害がおこる原因としては、主に「栄養」「環境」「遺伝」の3つの要因が考えられます。

【栄養】

ビタミンB群の一種である葉酸が妊娠初期に不足することによってリスクが高くなります。

また、ビタミンAの過剰摂取もリスクとしてあげられます。

【環境】

抗てんかん薬の服用や糖尿病、高度肥満などによってリスクが高くなると考えられます。

【遺伝】

過去に神経管閉鎖障害の児の妊娠歴があると再発する可能性が1.5~3.0%あります。

家族歴がなくても、遺伝子の突然変異と環境要因の相互作用によりおこるとされています。

神経管閉鎖障害の原因として「葉酸不足」は有名ですが、葉酸が足りているからといって必ずしも防げるわけではありません。

いくつもの要因が重なっておきるものなので、原因の特定は難しいでしょう。

神経管閉鎖障害の症状

神経管閉鎖障害の症状の多くは脳や脊髄が損傷を受けたことによっておこり、どのような症状が出るかは神経管の閉鎖障害がおきている場所によって異なります。

脳の神経外科領域でおこると水頭症(溜まった髄液が脳を圧迫する)を合併しやすく、学習障害や知覚障害、嚥下障害などの症状がおこりやすくなります。

神経管閉鎖障害の中でも特に二分脊椎は歩行障害など下肢に問題がおこりやすく、麻痺などの感覚障害、内反足(ないはんそく)や関節拘縮症(関節が固まって曲げられなくなる)、排尿や排便障害などの症状がおこりやすくなります。

出生前診断

神経管閉鎖障害は、妊娠中に行う出生前診断(出生前検査)で分かることがあります。

【神経管閉鎖障害を調べる出生前診断】

  • 超音波検査(エコー検査)
  • 母体血清マーカー検査(クアトロテスト)
woman getting ultrasound diagnostic from doctor

超音波検査(エコー検査)は画像からおなかの赤ちゃんの見た目に異常がないかを調べる検査で、神経管閉鎖障害によって体の一部に欠損があったり髄膜瘤があるなど見た目で分かる変化があればその疑いが持たれる、または診断できることがあります。

母体血清マーカー検査

母体血清マーカー検査とは、母体の血液を調べることでおなかの赤ちゃんに先天性の染色体異常などがある可能性を調べる検査のことです。

この検査の結果は、例えば「295分の1の確率で胎児に異常がある可能性がある」といった確率で出るため、本当にそうなのかさらに詳しく調べるためには、羊水検査などの確定診断を受ける必要があります。

母体血清マーカー検査の対象疾患は、神経管閉鎖障害の他にダウン症(21トリソミー)、18トリソミーがあります。

なお神経管閉鎖障害は症状にかなり個人差があるため、妊娠中に分かったとしても生まれてからの症状の重さなど程度を予測することは困難です。

出生前診断についてはこちらのページもご参考にしてください。

治療・予後

治療は神経管の閉鎖障害がおきている部位に対し外科的に修復します。

医療技術の発達により、平均寿命は延びQOL(生活の質)も向上しています。

歩行障害や排尿排便の障害など、身体の機能については生涯にわたってリハビリや管理を行う必要があります。

その症状や障害の程度はさまざまで、手術により大きく改善するケースから生まれてすぐ亡くなってしまうケースまで多岐にわたります。

神経管閉鎖障害の予防

妊娠前から妊娠初期にかけて「葉酸」をしっかりとることで、胎児の神経管閉鎖障害の予防につながります。

神経管閉鎖障害がおこる原因は葉酸の不足だけではありませんが、適正に葉酸を摂取することで、神経管閉鎖障害のリスクを50~70%減らすことができるといわれています。

発症予防のためには通常の食事のみでは十分ではなく、葉酸のサプリメントや栄養補助食品等からも

合わせて摂取することが推奨されています。

葉酸の役割

葉酸を多く含む食べ物

葉酸とは緑黄色野菜に多く含まれるビタミンB群の一種で、DNAやRNAなどの核酸やタンパク質の生合成に関与しています。

DNAはタンパク質をつくる設計図といわれ、生物の細胞を作るための情報がつまっています。

この情報に基づいて体が作られるため、DNAやタンパク質の合成がスムーズにいかないと、細胞の分裂や増殖が正常にできなくなります。

そのため葉酸は、成長するために細胞増殖が盛んな胎児にとってとても重要な栄養成分です。

特に神経管が作られる時期である妊娠初期に葉酸が不足すると神経管閉鎖障害の発症リスクが高まることが知られています。

また、葉酸はビタミンB12とともに赤血球をつくる働きがあるため、「造血のビタミン」ともよばれています。

DNAや遺伝子については、「コラム:染色体とは?基本から解説!」もご参考にしてください。

妊娠中の葉酸摂取

胎児の神経管が作られるのは妊娠6週頃であり、多くの女性が妊娠に気がつくのは妊娠4週~5週頃です。

そのため妊娠初期だけではなく、妊娠を計画しているまたは妊娠の可能性がある女性は、そうでない同世代の女性と比べて多く葉酸を摂ることによって神経管閉鎖障害発症の予防につなげることができます。

葉酸の推奨される一日の摂取量は「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」により設定されています。

【女性の葉酸の食事摂取基準(2020年版)】

葉酸の食事摂取基準

推定平均必要量というのは、該当する性別・年齢の人に必要な栄養素の量を50%の人が満たすとされる一日の摂取量のことです。

推奨量というのは、そのほとんどの人が必要量を満たすとされる一日の摂取量のことです。

耐容上限量については、サプリメントなど通常の食品以外から葉酸を摂る場合に設定されており、食品のみの場合は上限量はありません。

これは、通常の食事をしている場合の葉酸の過剰摂取による健康被害の報告がないためです。

妊娠の可能性がある女性や妊娠初期の妊婦さんには、上記の葉酸摂取推奨量「240μg/日」に加えて、胎児の神経管閉鎖障害のリスクを減らすためにサプリメントなど通常の食品以外から「400μg/日」摂取することが推奨されています。

【妊娠初期の葉酸摂取付加量】

妊娠初期の葉酸付加量

また妊娠中期及び後期、授乳婦には妊娠初期とは違う葉酸摂取付加量が設定されています。

【妊娠期の葉酸摂取付加量】

妊娠期葉酸付加量(中期、後期、授乳婦)

通常の食品から必要な量の葉酸を摂取したとしても、吸収率が50%程度のため効率よく摂取が出来ません。

また、妊娠時は体内での葉酸の分解と排泄が促進されるとの報告もあります。

必要な量のすべてを通常の食品から摂取しようと思うとエネルギーや栄養のバランスととることが難しくなりますので、サプリメントなどを活用して効率よく葉酸を摂りましょう。

葉酸を多く含む食べ物

葉酸を多く含む食べ物

葉酸はほうれん草などの色の濃い葉もの野菜に多く含まれます。

「葉酸」という言葉の響きから野菜だけに多く含まれるようなイメージがあるかもしれませんが、豆類や果物、レバーや日本茶なども多く含んでいます。

【葉酸を多く含む食品】

葉酸を多く含む食べ物
日本食品標準成分表2020年版(八訂)より

葉酸は水に溶けやすく熱に弱い水溶性のビタミンのため、汁ごといただけるスープや電子レンジ調理がおすすめです。

なおレバーはビタミンAが豊富に含まれており、過剰摂取により胎児に奇形がおこるリスクが高くなるため、特に妊娠初期には食べる量に注意が必要です。

ビタミンAは皮膚や粘膜を健康に保つはたらきがあるため赤ちゃんにも必要な栄養素ですが、1日に食べる量はレバーを使った料理の小皿1皿分程度にとどめましょう。

煎茶や玉露はカフェインも多く含んでいますので、1日に半杯~1杯程度にとどめましょう。

まとめ

妊娠したら気をつけること

妊娠が発覚するのは多くの場合、神経管が作られる大事な時期よりも遅いため、妊娠前から葉酸をしっかり摂ることで、胎児の神経管閉鎖障害の予防につながります。

食事からの葉酸摂取だけでは十分ではありませんので、サプリメントなどの栄養補助食品も上手く活用しながらバランスよく摂りたいですね。


【参考】

葉酸サプリメントは神経管閉鎖障害の発生リスクを低くする / 順天堂(外部サイトへ移動します)

妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針(令和3年3月) / 厚生労働省(外部サイトへ移動します)

日本人の食事摂取基準(2020 年版)(外部サイトへ移動します)


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