先天性疾患にはどんな種類がある?割合と原因

先天性疾患の一つ、多指症

先天性疾患とは、生まれつき持っている病気や障害の総称です1)。

身体や臓器の形に通常と異なる変化(病気)がみられるものだけでなく、代謝や身体の働きに変化が生じるものも含まれます。

先天性疾患には、心臓の形態異常や染色体異常などさまざまな種類があります。妊娠中の検査でわかることもあれば、成長に伴って診断されることもあります。

この記事では、先天性疾患の主な種類と割合、原因について解説するとともに、妊娠中の検査でどこまでわかるのかを紹介します。

先天性疾患の原因と割合

なんらかの先天性疾患(先天性異常)を持って生まれてくる割合は、全体のおよそ3~5%(約20~30人に1人)とされています2)。

先天性疾患は、影響の現れ方によって「形態異常」と「機能異常」に分けられます。形態異常は身体や臓器の形・構造に異常がある状態、機能異常は代謝や身体の働きに異常がある状態です。特定の症状が単独で起こる場合もあれば、「症候群」としてさまざまな症状を併せ持つ場合もあります。

形態異常

口唇裂、口蓋裂の新生児の赤ちゃん

【特徴】
身体や臓器の形・構造に異常がある

【代表例】
口唇口蓋裂、先天性心疾患、多指症など

機能異常

【特徴】
代謝や身体の働きに異常がある

【代表例】
フェニルケトン尿症、先天性甲状腺機能低下症など

症状の程度は成長にまったく影響しないきわめて軽度のものから、命に関わる重篤なものまで幅広く、生まれる前にその症状の程度を予測することは困難です。

また、先天性疾患は原因によっていくつかの種類に分けられます2)。ただし、個々の先天性疾患では原因を特定できないことも多く、WHOでは約50%は特定の原因に結び付けられないとしています1)。

【新生児の先天性疾患発生率と原因別割合】

先天性疾患の発生率と原因別割合

染色体異常

ダウン症の子どもの成長
ダウン症の赤ちゃん

染色体は遺伝情報を持っていて、人間の体を組み立てる設計図の役割を担っています。

染色体異常は、染色体の数や構造に変化があることで生じる疾患です2)。通常、人の細胞には46本(23対)の染色体がありますが、特定の染色体が1本多い、少ない、あるいは一部が欠けるなどの変化によって、身体の発育や臓器の働きに影響が生じることがあります。

染色体異常は先天性疾患の約25%を占めるとされており2)、代表的な染色体異常には次のようなものがあります。

疾患名主な特徴
21トリソミー(ダウン症候群)発達の遅れや筋緊張の低下などがみられ、先天性心疾患を伴うこともある
18トリソミー全身の臓器に重い合併症を伴いやすく、生命予後が厳しい
13トリソミー脳や心臓、顔面などに複数の形態異常を伴いやすく、生命予後が厳しい

母親の年齢が上がると、ダウン症などの「染色体の数の異常」が起きやすくなります2)。

一方、父親の年齢上昇についても一部の先天異常との関連が報告されています。システマティックレビュー・メタ解析では、父親が40歳以上の場合、25~29歳の場合と比べて心血管系や泌尿生殖器系の異常、染色体異常などのリスクが統計学的に上昇していました3)。ただし、リスクの上昇幅は疾患によって異なり、父親の年齢だけで個々の赤ちゃんの発症を予測できるものではありません。

単一遺伝子疾患

働く筋ジストロフィー症の女性
テレワークで働く筋ジストロフィー症の女性

単一遺伝子疾患は、特定の遺伝子に生じた変化によって発症する疾患です。

染色体には数百~数千の遺伝子が含まれており、染色体と遺伝子の関係は本に例えることができます。

染色体が一冊の本だとすると、遺伝子は文章、DNAは文字にあたります。染色体異常が、本のページの一部がなかったり、同じページが2枚あったりする状態だとすれば、単一遺伝子疾患は文章のおかしい箇所がある状態と考えるとイメージしやすいでしょう。

単一遺伝子疾患では、遺伝子の変化によって身体の構造や働きに必要なタンパク質が正常に機能しなくなるなどして、さまざまな症状が現れます。

代表的な疾患には、フェニルケトン尿症、血友病、筋ジストロフィーなどがあります。症状や重症度は疾患によって異なり、出生直後から症状がみられるものもあれば、成長に伴って明らかになるものもあります。

単一遺伝子疾患は必ずしも親から受け継がれるわけではなく、子どもに新たな遺伝子の変化が生じて発症する場合もあります。

多因子性疾患

神経管閉鎖障害

多因子性疾患は、複数の遺伝的要因と環境要因が複雑に関わって発症する疾患です。

代表例として、口唇口蓋裂、一部の先天性心疾患、神経管閉鎖障害などが挙げられます。家族内に同じ疾患がみられる場合もありますが、明確な遺伝形式を示さないことが一般的です。

例えば、親の一方に口唇裂または口蓋裂がある場合、子どもの発症率は約60人に1人とされています2)。

妊娠中の環境因子による影響

合指症
合指症

妊娠中に母体を通じて胎児に影響を与え、先天性疾患を引き起こす可能性のある物質や要因として、次のようなものがあります。

環境因子赤ちゃんへの主な影響
飲酒胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)による顔の形成不全、成長障害、学習・行動面の問題など
喫煙胎児発育への影響や早産・死産のリスク上昇。一部の先天異常との関連も報告されている
風疹ウイルス先天性風疹症候群による心疾患、難聴、白内障など
サイトメガロウイルス先天性感染による難聴、発達の遅れなど
一部の薬剤薬剤の種類や使用時期によって、臓器の形態異常など
葉酸の不足胎児の神経管閉鎖障害のリスク上昇
高線量の放射線曝露胎児死亡、形態異常、中枢神経系への影響など

環境因子による影響は妊娠週数や曝露量、感染の有無などによって異なります。妊娠に気づく前に飲酒したり、薬を使用したりしたからといって必ずしも赤ちゃんに先天性疾患が起こるわけではありません。 

心当たりがある方は、時期や量、薬剤名などを整理したうえで、妊婦健診の際に医師へ相談してください。

妊娠中に先天性疾患がわかる検査

妊娠中に赤ちゃんの先天性疾患を調べる方法には、超音波検査やNIPT(新型出生前診断)などがあります。ただし、対象となる疾患やわかる範囲は検査によって異なります。

出生前検査の種類と選び方についてはこちらのコラム記事もご参考にしてください。

超音波検査でわかること

エコー検査を受ける妊婦

超音波検査では、お腹の中にいる赤ちゃんの成長や臓器の形などを確認し、先天的な形態異常がないかを調べることができます。妊婦健診でも行われる検査で、必要に応じて赤ちゃんの体をより詳しく調べる胎児超音波検査が実施されます。

超音波検査で発見されることがある主な異常は次のとおりです。

調べる部位発見されることがある異常
心臓心室中隔欠損、房室中隔欠損など
脳・頭部無脳症、水頭症など
脊椎二分脊椎など
顔口唇口蓋裂、小顎症など
手足多指症、合指症など
腹部腹壁破裂、臍帯ヘルニアなど
腎臓・尿路腎臓の形成異常、水腎症など

胎児の形態や発育に特徴的な所見が認められたことをきっかけに、染色体疾患などが疑われる場合もあります。

ただし、超音波検査だけですべての先天性疾患を診断できるわけではありません。異常の種類や程度、妊娠週数、胎児の向きなどによっては確認が難しいこともあります。

NIPTでわかること

NIPT(新型出生前診断)は、妊婦さんの血液に含まれる胎盤由来のDNA断片を分析し、胎児に特定の染色体疾患がある可能性を調べる検査です。一般的に妊娠10週頃から受けることができ、採血のみで検査できるため、検査自体による流産のリスクはありません。

NIPTは、特に次の3つの染色体異常について高い検出率が認められています。

これらに加え、検査機関によっては性染色体異常やそのほかの常染色体異常、微小欠失症なども検査可能です。

NIPTは従来の母体血清マーカー検査(クアトロテスト)などと比べて精度が高いものの、あくまで「非確定検査(スクリーニング検査)」という位置づけです。

結果が「陽性」であれば対象となる染色体異常の可能性が高いことを、「陰性」であれば可能性が低いことを示します。ただし陽性の結果を確定させるためには、羊水検査や絨毛検査などの確定診断を受ける必要があります。

また、NIPTで調べられる疾患は限られており、陰性であっても先天性疾患がまったくないことを保証するものではありません。形態異常や、多くの単一遺伝子疾患などは通常のNIPTでは判断できません。

出生前検査でもわからない疾患

出生前検査では、すべての先天性疾患や出生後の発達についてわかるわけではありません。特に、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などの発達障害は、現在一般的に行われているNIPTや羊水検査、超音波検査によって発症の有無を判断することはできません。

知的発達の遅れについても、特定の染色体疾患や遺伝子疾患に伴う場合には、その原因となる異常が出生前に見つかることがありますが、検査結果から将来の発達の程度まで正確に予測することは困難です。

出生前検査でわかるのは、それぞれの検査が対象としている染色体異常や遺伝子の変化、胎児の形態異常などに限られます。「検査で異常がなかった=すべての先天性疾患や発達障害がない」という意味ではないため、何を調べられるのかだけでなく、何がわからないのかも理解しておくことが大切です。

まとめ

胎児の超音波写真を見ながらお腹をさする妊婦

先天性疾患は赤ちゃんの約3~5%にみられるとされ、染色体異常や単一遺伝子疾患、多因子性疾患などさまざまな種類があります。原因には遺伝的要因や妊娠中の環境因子などが関係しますが、特定できない場合も多くあります。

先天性疾患は生まれつきのものなので後天的になることはありませんが、症状の程度によっては妊娠中や出生直後の検査では見つからないこともあります。

検査を検討する際は、それぞれの検査でわかることと、わからないことを理解しておくことが大切です。

妊娠中に胎児の先天性の異常や病気について調べる「出生前診断」についてはこちらをご参考にしてください。


【参考URL】

1)WHO.Congenital disorders.https://www.who.int/health-topics/congenital-anomalies(参照 2026-10-08)

2) 編著:関沢明彦,佐村修,四元淳子,「周産期遺伝カウンセリングマニュアル 改訂3版」,中外医学社,2020年5月.(参照 2026-10-08)

3)PubMed.Effect of paternal age on offspring birth defects: A systematic review and meta-analysis.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33229621/(参照 2026-10-08)


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