妊娠が確定すると、いよいよ始まるのが妊婦健診ですね。
妊婦健診では、妊婦さんとお腹の中の赤ちゃんが健康であるために、必要な検査が行われます。
ただ、定期的に医療機関へ受診するとなると、どれくらいの頻度で、何を検査するのかといろいろ気になるところかと思います。
また何度も病院に通わなければならないため、金銭面もかなりの負担になりそうで心配になりますよね。
そこで今回は、妊娠初期・中期・後期における妊婦健診のスケジュールと内容、その他妊婦健診で分かることや費用について徹底解説します。
妊婦健診とは?なぜ受ける必要があるのか
妊婦健診の目的は、妊婦さんの健康と赤ちゃんの成長を把握することです。
さらに妊娠や出産、育児に関するお悩みを相談することで、安心して妊娠期間を過ごしてもらうことが大切です。
もし妊婦さんや赤ちゃんに異常があった場合、定期的な健診を行っていれば、早く適切に対応できます。
実際に、妊婦健診を受けていない方は胎児の周産期死亡率が約5倍も高かったという報告もあります。
妊娠中のストレスや不安な気持ちも、おなかの中の赤ちゃんにとって良くないことです。
健診で身体面をチェックして精神面もケアすることで、安心して出産にのぞみましょう。
妊婦健診のスケジュールと内容
妊婦健診では、妊娠が進むにつれて健診の頻度が増えます。
また、検査内容も毎回行う基本検査に加えて、妊娠時期に合わせた検査が行われます。
受診間隔は、出産に近づくにつれて頻繁となり、計14回の健診を行うことが推奨されています。
毎回共通して以下の基本検査が行われます。
内容は、妊婦さんの健康状態や赤ちゃんの発育状況、そして食事や生活の指導です。
健康状態の把握:医師の問診、診察
検査計測:子宮底長、腹囲、血圧、浮腫、尿検査、体重
保健指導:食事や生活に関するアドバイスなど
特に妊婦さんで注意が必要なのが妊娠糖尿病と妊娠高血圧症候群です。
発覚した場合、出産時のトラブルにもつながるため、毎回の健診で確認しておく必要があります。
もう少し詳しく、初回検査、妊娠初期、妊娠中期、妊娠後期の検査に分けてみていきましょう。
※検査内容は、医療機関の方針や、妊婦さんと赤ちゃんの状態によっても異なります。
詳細は医療機関へご確認ください。
初回健診
初回健診は、妊娠判定のための検査が行われます。
妊娠と気づいたときに、早めに受診するようにしましょう。
初めて妊婦健診に行くとなると、「健診の初回は何をするのか」「いつから行けばいいのか」と気になりますよね。
初回健診の目的は妊娠判定であるため、尿検査、内診、超音波検査が主に行われます。
検査の流れとして、まずは尿検査で妊娠反応を示すか確認します。(ご自宅で妊娠検査薬を既にしていれば、省略されることが多いです)
次に、内診と経腟超音波検査により、胎嚢(中に赤ちゃんが入っている袋)を画像上で確認します。
経腟超音波検査(エコー)とは、超音波を送受信する細いプローブ(直径2cm)を膣内に挿入して、画像で映す方法です。
まだ小さい胎嚢を映す場合には、おなかの上からよりも膣内からのほうがよく映せるため、とくに妊娠初期は膣エコーが用いられることが多いです。
妊娠初期症状については、コラム:妊娠初期症状はいつからわかる?症状チェックリストもご参考にしてください。
妊娠初期~23週
妊娠初期は、4週間に1回の頻度で合計4回受診します。
基本検査に加えて、以下の検査内容を期間内に1回(超音波検査のみ2回)行います。
血液検査
血液型:出産時に多量出血して輸血が必要な場合に備えるため
血算:貧血や免疫力、出血のしやすさをみるため
血糖:妊娠糖尿病をみるため
B型肝炎抗原、C型肝炎抗体、HIV抗体、梅毒血清反応、風疹ウイルス抗体、HTLV-1抗体検査:母体から赤ちゃんに感染するのを防ぐため
子宮頸がん検診
子宮頸がんが発見した場合には、がんの進行度によって「妊娠を継続するか、がんの治療を優先するか」の判断が必要になります。
性器クラミジア:早産を防ぎ、母体から赤ちゃんへの感染を防ぐため
経腹エコー
赤ちゃんが正常に発育しているかどうか、羊水の量が適切か、胎盤や臍帯(へその緒)の位置などを確認します。
妊娠11週までは、まだ流産のリスクが高い時期であるため、1~2週間に1回の健診がすすめられることもあります。
妊娠24週~35週
妊娠中期は、2週間に1回の頻度で合計6回受診します。
「経過は順調なはずだし、なぜ2週間に1回になるの?」と気になるかと思います。
健診頻度が増えるのは、この時期に早産が必要な可能性があり、細かくチェックするためです。
基本検査に加えて、以下の検査内容を期間内に1回行います。
血液検査
妊娠初期と同様に血算と血糖を測定します。
B群溶血性レンサ球菌(GBS)
膣口や肛門の周囲を綿棒でこすり、検査します。
母体から赤ちゃんへの感染を防ぐため行われます。
経腹エコー
妊娠初期と同様に、赤ちゃんの発育状態に異常がないか確認します。
とくに妊娠24週を過ぎた時期あたりで、赤ちゃんの表情が確認できるくらいに顔立ちがはっきりしてきます。
最新の3Dエコーでは立体的な赤ちゃんを画像で見ることができ、4Dエコーではさらに動画で見ることができるので、表情やしぐさまで確認できます。
妊婦健診の中でも、ご夫婦が一番に喜ばれる検査かと思います。
妊娠36週~出産まで
妊娠後期は、1週間に1回の頻度で合計4回受診します。
臨月に入り、いつ陣痛が起きてもおかしくない時期ですので、健診頻度を増やすことが大切です。
毎週の健診になりますが、お仕事をされている方も産休に入れるため余裕をもって受診できるかと思います。
基本検査に加えて、以下の検査内容を期間内に1回行います。
- 血液検査:血算(白血球、赤血球、血小板について調べる)
- 経腹超音波検査
いよいよ出産に向けて、羊水量や胎盤の位置などを確認します。
他にも、NST(ノンストレステスト)という、30~40分横になった状態で、胎児の心音と子宮収縮を記録する検査も行われます。
また内診で、子宮口の軟らかさや開き具合、胎児の下降具合を確認して、出産の時期を予測していきます。
定期妊婦健診以外の健診
それ以外にも、必要に応じて以下のような検査も行われます。
血糖負荷検査OGTT
血液検査で血糖値が高かった場合に、妊娠糖尿病ではないか診断するために行われます。
出生前診断
お腹の赤ちゃんに生まれつき(先天性)の病気や障害がないかを調べる検査です。
もしこの時点で何かの異常が見つかれば、分娩方法の検討や生まれてからの生活環境の準備ができます。
定期妊婦健診で行うエコー検査も、広い意味ではこの出生前診断に含まれます。
胎児の染色体異常を調べる検査としては、新型出生前診断(NIPT)などがあります。
妊婦健診の費用
妊婦健診の費用は、基本検査のみであれば3000~7000円/回、特別な検査も受けると1~2万円/回ほどです。
一般的に妊婦健診の回数は、14回かそれ以上となるため、合計の費用は10~15万円ほどかかります。
妊婦健診は保険適用ではありませんが、国からの助成制度を活用することで費用を抑えることができます。
最終的には、自己負担額が3万円~7万円ほどまで抑えられることが多いです。
保険適用はない
日本では、妊娠は病気としては扱われないため、妊婦健診の費用は保険適用となっていません。
検査にかかる費用は全額自己負担となります。
また自由診療であることから、健診にかかる費用は、医療機関によって異なります。
健診にかかる費用は、事前に医療機関へ確認しておくようにしましょう。
妊婦健康診査受診券(補助券)
補助券とは簡単に言うと、妊婦健診のお会計のときに使える割引券です。
補助券は、健診1回ごとに1枚使えて、14枚つづりとなっていることが多いです。
補助券で割引される金額は、全国平均で105,734円であり、ちなみに最も少ないのが神奈川県で平均71417円、最も高いのが石川県で平均137813円とされています。
このように補助券の金額や枚数、対象となる検査は各自治体の判断によるため、詳細はお住まいの地域の市区町村へ確認しましょう。
補助券を活用するためには、以下の手順を踏む必要があります。
- 初回の妊婦健診で妊娠の診断を出してもらう
※初回健診は補助券が使えないため2万円ほど多めにお金を持っておきましょう - お住まいの市区町村の役所に妊娠届を提出すると、母子手帳と一緒に「妊婦健康診査受診票」が配布される
- 2回目の健診以降から、診察前に必ず受付に出す
- 健診費用の総額から、補助金の金額を差し引いた金額が自己負担金額となる
補助券によっては、超音波検査に使える回数に限りがあったり、使えない検査もあったりします。
主治医の先生に、補助券の種類と枚数を伝えて、どの時期にどの受診票使うのがいいか相談しておきましょう。
償還払い~里帰り出産の場合~
里帰り出産で補助券が使えない代わりに、自治体からキャッシュバックしてもらえる制度があります。
補助券による助成制度は、住んでいる地域の医療機関が対象となるため、里帰り出産では使うことができません。
そこで代わりに償還払いという、検査費用を後からキャッシュバックする制度があります。
里帰り中の妊婦健診で支払った費用の領収書を、出産後に住民票のある役所に提出すると、助成を受けられます。
詳しく知りたい方はお住まいの市区町村へ問い合わせてみてください。
医療費控除
妊婦健診に限らず、その年に支払った医療費が10万円以上を超えたら、いくらか負担した金額が戻ってくる制度です。
確定申告をすることで、以下の手順に沿って計算されます。
- 医療費控除額(上限200万円)=1年間に支払った医療費の合計 – 保険金や給付金 – 10万円
- 還付金額(手元に戻る金額)=医療費控除額×所得税率
妊婦さんの出産に関わる費用はどうなるでしょうか。
たとえばAさん家族の場合、夫の課税所得が500万円(所得税率20%)として、妊婦健診(補助券使用済み)が5万円、出産にかかった費用が65万円、妊娠による医療費や交通費が5万円であり、出産育児一時金が50万円であった場合
- 医療費控除は、5万+65万+5万-50万-10万=15万円
- 還付金額は、15万×0.2=3万円
ですので、上記の例では3万円が戻ってくることになります。
確定申告をすることで、ある程度の金額が戻ってきますので、妊娠中にかかった費用の領収書や、家族の医療費の領収書はできるだけ保管しておきましょう。
妊婦健診は必ず受けなくてはならない?
「健診費用がかさむし毎回通うための時間がかかるから、自分で健康管理に気をつけていれば妊婦健診を受けなくてもいいのではないか?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし妊婦健診は、赤ちゃんが健康に産まれてくるために、必要な検査です。
出産のリスクを最小限にすることができます。
実際に大阪府の2009年の調査によると、妊婦検診を受けていない妊婦での胎児の周産期死亡率は19.7%であり、妊婦検診を受けていた方と比べて、約5倍のリスクがあると報告されています。
ご自身と産まれてくる赤ちゃんのためにも、妊婦健診は必ず受診するようにしましょう。
まとめ
今回は、妊婦健診で分かることや費用について紹介しました。
妊婦健診は、我が子の状態を確認できて嬉しいものの、何度も健診を受けたり、費用もかさんで大変な面もありますよね。
しかし定期的な検査は、健康な赤ちゃんを産むために必ず行うべきことですし、健診費用は国からの助成制度をうまく活用して抑えられます。
妊婦健診を受診して、安心して妊娠期間を過ごし、出産にのぞみましょう。
妊娠初期にお腹の赤ちゃんのダウン症など、染色体異常について調べる検査はこちらをご参考にしてください。