トリソミーの種類と特徴

トリソミーの種類と特徴について

NIPT(新型出生前診断)では、「21トリソミー」「18トリソミー」「13トリソミー」の3つの染色体異常が主な検査対象となります。

これらはいずれも、本来2本である染色体が3本になってしまう「トリソミー」と呼ばれる状態で、胎児の発育や身体機能、知的発達、顔貌、健康面にさまざまな影響を及ぼします。

特に影響を受ける機能や部位には共通点が見られることがあり、それぞれのトリソミーに特徴的な症状が報告されています。

ここでは、NIPTで主に調べられる3つの代表的なトリソミーと、それ以外のまれに見られるトリソミーについて、わかりやすく解説します。

トリソミーとは?

染色体は通常、2本1対で存在しますが、3本になる異常を「トリソミー」といいます。

染色体とは、細胞の核内にあり、遺伝情報を担う重要な役割を持つものです。

トリソミーになると、余分な染色体によって遺伝情報が過剰になり、発達や健康にさまざまな影響が出る可能性があります。

具体的には、以下のような影響が見られることがあります。

【トリソミーによって起こる可能性のある影響】

  • 身体の発達の遅れ(成長障害、低身長など)
  • 先天性疾患のリスク(心疾患、消化器疾患、視力や聴力の問題など)
  • 知的発達の遅れ(学習の困難さ、言語発達の遅れなど)
  • 特徴的な顔貌や四肢の形態異常
  • 生存率への影響(トリソミーの種類によっては流産や死産の可能性が高まる)

トリソミーの発生率

トリソミーは多くの受精卵で発生しますが、そのほとんどは胎児の発育に深刻な影響を及ぼし、出生には至りません

受精の際、染色体が正しく分配されずにトリソミーが起こることは珍しくありません。

しかし、多くのトリソミーは妊娠初期に自然流産となるため、出生児として確認されるのは一部に限られます。

【主なトリソミーの発生率】

疾患名発生率(出生児)流産率・生存率
21トリソミー(ダウン症)約500人に1人・約80%が流産
・生存率高く平均寿命は60歳以上
18トリソミー約8,000人に1人・約70%が流産
・生後1年生存率は10%未満
13トリソミー約8,000~12,000人に1人・約90%が流産
・生後1年生存率は5~10%
トリプルX症候群女児の約1,000人に1人寿命は一般と変わらない
クラインフェルター症候群男児の約500~1,000人に1人寿命は一般と変わらない
XYY症候群男児の約1,000人に1人寿命は一般と変わらない

NIPTでわかる3つのトリソミー

トリソミー、笑顔のダウン症の女の子
21トリソミー(ダウン症)の女の子

ヒトの染色体は、「常染色体」22対(44本)と、「性染色体」1対(2本)の合計46本から構成されています。

常染色体は基本的に大きい順に1番から22番までの番号が割り振られています。

どの染色体にもトリソミーが発生する可能性はありますが、21番、18番、13番以外のトリソミーは、多くの場合、胎児の発育に深刻な影響を及ぼし、流産や死産につながります。

そのため、妊娠中に胎児の染色体異常を調べる「NIPT(新型出生前診断)」では、生存の可能性が比較的高い3つのトリソミーを主な対象として検査を行います。

【NIPTで調べることができる3つのトリソミー】

  • 21トリソミー(ダウン症)
  • 18トリソミー
  • 13トリソミー

21トリソミー(ダウン症)

Portrait of cute baby boy with Down syndrome

出生時に診断される染色体異常の中で最も多いのがダウン症で、日本では約500人に1人の頻度で発生しています。1)

【ダウン症の特徴】

  • 成長の遅れ
  • 知的発達の遅れ(個人差が大きい)
  • 筋緊張の低下による運動発達の遅れ
  • 特徴的な顔貌(つり上がった目、鼻が低めなど)
  • 身長が低めの傾向
  • 先天性疾患のリスク(心疾患、消化器疾患、視力・聴力の問題など)
  • 母親の年齢が高いと発生率が上がる
  • 平均寿命は60歳を超える

はいはいの開始や一人歩きが通常より遅れる傾向があり、運動発達には平均の約2倍の時間がかかります。

知的発達の遅れには個人差があり、中程度の障害が見られることが多いとされていますが、療育や適切な支援によって生活の質の向上が期待できます。

母親の年齢が上がるにつれてダウン症の発生率も上昇し、例えば40歳の妊婦では30歳の妊婦に比べて発生率は約9倍も高くなります。

重篤な合併症がなければ、適切な治療やサポートを受けることで、健康状態を維持しながら生活することが可能です。

18トリソミー

18トリソミーの赤ちゃん

出生時に診断される染色体異常の中で、ダウン症に次いで多いのが18トリソミーで、出生児の約8,000人に1人の割合で発生しています。

【18トリソミーの特徴】

  • 胎児期から続く重度の成長障害
  • 多くの先天性疾患(心疾患、消化器系異常、呼吸・嚥下の問題など)
  • 重度の知的障害
  • 筋緊張の低下による運動発達の遅れ
  • 特徴的な顔貌(小さな口・小顎症、低い鼻筋、突出した後頭部など)
  • 手足の異常(内反足、手の指が強く握られたまま開きにくいなど)
  • 母親の年齢が高くなるにつれて発生率が上昇
  • 流産や死産となることが多く、出生に至るのは全体の約5〜10%
  • 生後1年の生存率は10~30%
  • 長期生存例もあるが、重度の発達遅滞や医療的ケアが必要な場合が多い

18トリソミーでは、心奇形や手足の異常など全身にわたる重度の合併症が見られ、知的発達や身体の成長にも深刻な影響を及ぼします。

胎児期から重篤な症状が見られることが多く、約70%が流産または死産となります。生後1年の生存率は10~30%程度とされ、生命予後は厳しいのが現状です。

母親の年齢が高くなるにつれて発生率も上昇し、例えば40歳の妊婦では30歳の妊婦に比べて18トリソミーの発生率が約9.7倍も高くなります。

13トリソミー

13トリソミーの赤ちゃんの手指の重なり、多指

出生時に診断される染色体異常の中で、ダウン症、18トリソミーに次いで多いのが13トリソミーで、出生児の約8,000~12,000人に1人の割合で発生します。

【13トリソミーの特徴】

  • 重度の成長障害
  • 重度の知的障害
  • 多くの先天性疾患(心疾患、腎臓・消化器の奇形など)
  • 特徴的な顔貌(小眼球、両眼の間が狭い、鼻筋が目立つ、小顎症など)
  • 手足の異常(多指、手指の重なり、内反足など)
  • 口唇口蓋裂
  • 母親の年齢が高くなるにつれて発生率が上昇
  • 流産・死産が非常に多い(約90~95%)
  • 出生できても、生後1年までの生存率は約5〜10%程度

13トリソミーでは、口唇口蓋裂、多指、小眼球など外見上の特徴や身体的な異常が多く見られ、重度の知的障害や成長障害を伴うことが一般的です。

胎児期から多くの合併症が見られ、約90~95%は流産または死産となります。生後1年まで生存する割合は5〜10%程度とされ、生命予後は厳しいのが現状です。

出産年齢が高くなるにつれて発生率も上昇し、例えば30歳妊婦と40歳妊婦を比べると、その確率は約7.9倍も高くなります。

その他のトリソミーと性染色体異常

男女の性染色体

13、18、21トリソミー以外の完全な常染色体トリソミーは、ほとんどの場合流産や死産となり、出生例は極めてまれです。

性別を決定する性染色体には「X染色体」と「Y染色体」があり、女性は「XX」、男性は「XY」の組み合わせを持ちます。

性染色体トリソミーは、一般的に致命的な先天異常を起こしにくく、常染色体トリソミーと比べて症状が軽いことが多いため、診断されずに成人するケースも少なくありません。

発達の遅れや学習障害、思春期以降の性ホルモンの異常が見られることもありますが、症状には個人差があります。

13、18、21以外の常染色体トリソミー

13、18、21トリソミー以外の常染色体トリソミーは、胎児の発育に深刻な影響を及ぼすため、妊娠初期に自然流産することがほとんどです。

ただし、「モザイク型」と呼ばれる、正常な細胞と染色体異常のある細胞が混在する状態では、ごくまれに生存例が報告されています。

モザイク型や部分トリソミーでは、完全型に比べて症状が軽くなる傾向があり、出生に至る可能性があります。

【染色体番号と出生報告の有無】

染色体番号出生の報告
1番出生報告なし
2番出生報告なし
3番出生報告なし
4番出生報告なし
5番出生報告なし
6番出生報告なし
7番まれにモザイク出生あり
8番まれにモザイク出生あり
9番ごく稀に出生例あり
10番まれにモザイク出生あり
11番出生報告なし
12番まれにモザイク出生あり
13番頻度が高い
14番まれにモザイク出生あり
15番出生報告なし
16番まれにモザイク出生あり
17番出生報告なし
18番頻度が高い
19番出生報告なし
20番まれにモザイク出生あり
21番頻度が高い
22番ごく稀に出生例あり

ごくまれに出生報告のある常染色体トリソミーとしては、7トリソミー、8トリソミー、9トリソミー、10トリソミー、12トリソミー、14トリソミー、16トリソミー、20トリソミー、22トリソミーのモザイク型や部分トリソミーがあります。

モザイク型や部分トリソミーで出生した場合、以下のような特徴が報告されています。

  • 成長の遅れ
  • 知的障害
  • 先天性心疾患
  • 顔貌異常、手足の異常など
  • 症状の程度は個人差が大きい
  • 多くは重度の障害や医療的ケアが必要となることが多い

トリプルX症候群

トリプルX症候群の染色体、染色体が3本になっている

X染色体が1本多く「XXX」となった状態をトリプルX症候群と呼び、女性にのみ発生する性染色体異常の一つです。

【トリプルX症候群の特徴】

  • 女性にのみ発生する
  • 成人では平均より身長が高い傾向
  • IQは正常範囲だが、平均より10~15ポイント低い
  • 言語発達や運動発達の遅れが多くみられるが、特徴的とまでは言えない
  • 外見上の特徴はほとんどなく、診断されないまま一生を過ごす人も多い
  • 発達の遅れや学習障害などをきっかけに、染色体検査を受けて判明するケースもある
  • 生殖能力に影響はほとんどない

出生女児の約1,000人に1人の頻度で発生するとされますが、目立った症状がないことが多いため、診断される機会は少なく、実際の有病率はもっと高い可能性があると考えられています。

IQは正常範囲内ですが、やや低い傾向があります。

運動機能と言葉の発達は遅れがちで、学童期は75%の人に何らかの言語障害がみられます。

遺伝的な体質の一つと捉えられ、多様性の一つと考えられることもあり、このため『トリプルX女性』と表現されることもあります。

クラインフェルター症候群

クラインフェルター症候群の見た目の特徴

X染色体が1本多く「XXY」となった状態をクラインフェルター症候群と呼び、男性にのみ発生する性染色体異常の一つです。

【クラインフェルター症候群の特徴】

  • 身長が高く、手足が長い体型
  • 女性化乳房(胸がふくらむ)がみられることがある
  • 女性的な脂肪のつき方をしやすい
  • 精巣が小さく(矮小精巣)、第二次性徴が不十分(体毛が薄い、声変わりが弱いなど)
  • 男性不妊の主な原因のひとつ(無精子症や乏精子症)
  • 言語発達の遅れや学習困難(特に読み書き)を伴うことがある

出生男児の約500~1,000人に1人の頻度で発生するとされますが、症状が軽いため診断されないケースも多く、実際の有病率は報告よりも2~3倍高い可能性があると考えられています。

クラインフェルター症候群では、思春期以降に性腺機能低下が目立つことが多く、男性不妊の原因のひとつとされており、報告によっては不妊症男性の3〜10%を占めるともいわれています。

多くの場合、精子数の減少や無精子症がみられ、自然妊娠が難しいことが特徴です。適切なホルモン療法や支援により、健康的な日常生活を送ることが可能なケースも多くあります。のつき方をする、身長が高く手足が長いなどの特徴があり、男性不妊の原因の約3%を占めます。

XYY症候群

XYY症候群の染色体、染色体が多い

Y染色体が1本多く「XYY」となった状態をXYY症候群と呼び、男性にのみ発生する性染色体異常の一つです。

【XYY症候群の特徴】

  • 多くは診断されないまま成長する
  • 身長が高い傾向がある(180cmを超える人も少なくない)
  • 軽度の発達の遅れや言語発達の遅れがみられることがある
  • 学習障害(特に読み書き)や注意欠如・多動性障害(ADHD)の発生頻度が高め
  • 知的障害は少なく、IQは正常範囲内が一般的だが、やや低い傾向の人もいる
  • 通常は生殖能力に問題はない(自然妊娠が可能)

XYY症候群は、出生男児の約1,000人に1人の頻度で発生するとされていますが、目立った外見的特徴がないため、ほとんどのケースが診断されていないと考えられています。

軽度の行動障害や学習障害、発話の遅延、注意欠陥・多動性障害(ADHD)のリスクが高く、自閉症の発生頻度も高めですが、個人差が大きいのが特徴です。

NIPTはなぜ13、18、21トリソミーだけなのか?

なぜ常染色体のトリソミーのうち、13、18、21トリソミーだけが出生に至ることがあるのかというと、これらの染色体が保有する遺伝子の数が比較的少なく発生や成長に致命的な影響を与える遺伝子が少ないためと考えられています。

【ヒト染色体の総塩基対数】2)

ヒト染色体の大きさ(Mb)

【ヒト染色体の遺伝子保有数】3)

ヒト染色体の遺伝子保有数

常染色体は、大きいものから順番に1から番号が割り振られていますが(例外として22番染色体は21番染色体より大きい)、遺伝子数は上記のように必ずしも染色体の大きさに比例していません。

13、18、21番の染色体は、他の染色体と比べて遺伝子数が少なく、特に発生初期に致命的となる遺伝子が少ないため、生存の可能性を高める要因の一つと考えられています。

そのため、NIPT(新型出生前診断)では、出生の可能性があるこれら3つのトリソミーを主な対象としています。

トリソミー検査の種類

トリソミーをはじめとする染色体異常を調べる検査には、非侵襲的なスクリーニング検査と、確定的な診断ができる検査の2種類があります。

検査名主な
検査対象疾患
特徴実施時期
(妊娠週数)
分類流産
リスク
NIPT・21トリソミー(ダウン症)
・18トリソミー
・13トリソミー
※施設により性染色体異常・微小欠失も可
・母体の血液のみで実施
・精度が非常に高い
・陽性時は確定診断が必要
10~16週頃スクリーニング
(非確定)
なし
母体血清
マーカー検査
(クアトロ
テスト等)
・21トリソミー
・18トリソミー
・開放性神経管奇形
・精度はやや低め
・費用は比較的安価
15~17週頃スクリーニング
(非確定)
なし
コンバインド
検査
(超音波+
血清マーカー)
・21トリソミー
・18トリソミー
・13トリソミー
・NT(後頸部浮腫)測定+血液検査でリスクを評価
・比較的早期に判定可能
11~13週頃スクリーニング
(非確定)
なし
羊水検査・全染色体異常
・先天性代謝異常の一部
・遺伝子疾患の一部
・流産リスクあり
・結果通知まで約2週間
15~18週頃確定診断約0.3%
絨毛検査全染色体異常・早期に結果が出る確定診断
・流産リスクあり
11~14週頃確定診断約1%

まとめ

トリソミー、笑顔のダウン症の女の子

トリソミーとは、本来2本で1対の染色体が3本になることで起こる染色体異常で、胎児の発育や健康にさまざまな影響を及ぼします。

中でも21・18・13トリソミーは出生に至る可能性がある代表的なタイプで、NIPTでも主に検査対象となります。

それ以外の常染色体トリソミーは多くが妊娠初期に流産となりますが、モザイク型や部分トリソミーでは出生例も報告されています。

性染色体トリソミーは症状が軽いことが多く、生殖や発達に個人差はあるものの、一般的な生活を送れるケースも多くあります。

NIPTについてはこちらもご参考にしてください。


【参考・引用サイト】

1)成人期を見据えたダウン症候群のある児への関わり/小児保健研究
2)Genome Reference Consortium
3)Quora
編著:関沢明彦,佐村修,四元淳子,「周産期遺伝カウンセリングマニュアル 改訂3版」,中外医学社,2020年5月


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