
XYY症候群(ヤコブ症候群)は男性のみに起こる染色体異常で、出生男児の約1,000人に1人の確率で起こります。
身長が高い傾向にあり、特徴としては軽度の行動障害や学習障害のリスクが高いですが、臓器や生殖器を含む身体的問題はなく、ほとんどのXYY症候群の人は診断されていないと言われています。
そのため病気というよりはアレルギーなどと同じように生まれつきの体質であり、個性であると考えた方が良いでしょう。
XYY症候群の特徴

【XYY症候群の特徴】
- 身長が高い
- 発話の遅延
- 知能指数はやや低い
- 学習障害
- ADHD
- 軽度の行動障害
高身長であることが多く、成人では180cmを超えていることも少なくありません。
学習障害や発話の遅延、注意欠陥・多動性障害(ADHD)や行動障害のリスクが高くなります。
IQは家族と比較して10~15ポイント低い傾向があります。
自閉症の発生頻度も高めです。
XYY症候群の症状にはかなりの個人差が見られます。
一般的には症状は軽度であり、一部の人はXYY症候群であると診断されないまま生涯を送ることもあります。
合併症
基本的に身体的問題はないとされています。
性染色体異常では生殖能力に影響が出やすく、不妊の検査で初めて診断されるケースが多くあります。
XYY症候群の場合は生殖能力は問題ないとされていますが、外性器の奇形の報告例や造精機能障害を示す場合が多く、一般の男性と比べて妊娠させる力は低いと考えられます。
また子どもを授かっても何らかの異常が起こる確率が高いとの報告もあります。
ただしXYY症候群の症例報告件数が少ないため、生殖能力の問題については特有とまでは言えず、感染例は明確にはされていません。
寿命
常染色体の異常では臓器の奇形などによって生命予後が不良なことが多くありますが、XYY症候群ではそのような命にかかわる合併症があるわけではありませんので、特別に寿命が短いことはなく一般の人と同じです。
生まれる確率
生まれてくる男の子の赤ちゃんのうち、約1,000人に1人の確率でXYY症候群であるとされていますが、診断されていない人が大半だと考えられています。
高齢出産での確率
35歳以上で初めて出産することを一般的に高齢出産といいます。
出産年齢が上がるにつれて、受精卵が作られる過程での分裂が正しく行われず染色体の過剰や不足といった「数の異常」が起こりやすくなり、その結果ダウン症などの染色体異常の頻度も増えていきます。
ただし、XYY症候群については出産時の両親の年齢は影響しないとされています。
遺伝はほとんどしない
染色体異常は遺伝だと思われがちですが、そのほとんどは遺伝ではなく偶然に起こります。
XYY症候群も両親や環境のせいではなく、誰にでも起こり得ます。
XYY症候群の原因は染色体異常

XYY症候群は性染色体の異常によって起こります。
染色体とは遺伝情報がつまったDNAが太く折りたたまれたもので、親から子に受け継がれる多くの遺伝情報が収められています。
ヒトの染色体は22対(44本)の「常染色体」と、男女の性別を決める1対の「性染色体」から成り立っています。
性染色体には「X染色体」と「Y染色体」があり、両親から染色体を受け継ぐときに、お母さんから「X染色体」、お父さんからは「X染色体もしくはY染色体のどちらか」をもらいます。
「XX」の組み合わせで女性、「XY」の組み合わせで男性になります。
XYY症候群は、Y染色体を多く受け取り「XYY」となった状態です。
なお、同じく男性に起こる性染色体異常として「クラインフェルター症候群(XXY症候群)」がありますが、その特徴や症状は異なります。
治療法

染色体異常そのものに対する根治的な治療法はありません。
生殖器の異常があれば手術などによって治療を行います。
発話の遅延や自閉症スペクトラム障害が見られる場合は、療育として一人ひとりの特性に合わせた教育を行い、生活への支障を軽減します。
自閉症スペクトラム障害において、興奮やパニック、不眠などの症状がある際は、対症療法として薬が処方されることもあります。
また、注意欠陥・多動性障害(ADHD)や学習障害が見られる場合は、個人や家族を対象としたカウンセリング、行動療法などを行います。
学習障害がある場合は適応教育や指導などの適切な支援を行い、さらには少人数制のクラスを選んだり、補助として家庭教師をつけたりすることで不安の軽減につながります。
障がいを持つ子どもを育てる場合、まずは両親がどのように育てればいいのか、どのような支援制度があるのか、どのような生活が続くのかなど、しっかりとしたビジョンと知識を持つことが大切です。
妊娠中の検査

妊娠中に胎児のダウン症などの染色体異常を調べるために受けた出生前診断で、XYY症候群が思わず発覚することがあります。
新型出生前診断(NIPT)を行っている一部の機関では、XYY症候群も検査対象に含まれます。
これは非確定検査で、「XYY症候群の可能性があるかどうか」が分かります。
本当にXYY症候群かどうか?を調べるためには、羊水検査を受けます。
なお、出生前診断でXYY症候群だと分かっても、生まれた後の症状の程度については予測できません。
出生前診断でXYY症候群と分かったら
出生前診断でダウン症などの染色体異常が発覚した場合、中絶を選択する人が多いことについて議論がつきませんが、XYY症候群は生きていくうえで重篤な症状があるわけではなく、多くの人は普通の生活を送っています。
早い段階でXYY症候群だと分かれば、生まれた後に起こりやすい症状や合併症の存在に気づきやすく様々なサポートを調べ万全の体制で備えることができます。
とはいってもお腹の赤ちゃんがXYY症候群だと分かった場合、不安を抱くことと思います。
まずは専門家による遺伝カウンセリングを受けて、現状の理解と、あなたとあなたのパートナーとでしっかり話し合うことが大切です。
遺伝カウンセラーは遺伝医学のプロフェッショナルであり、中立の立場でサポートをしてくれます。
まとめ

XYY症候群は学習障害や行動障害が起こるリスクが高いものの身体的問題はなく、通常の社会生活を送ることができます。
生まれる前にXYY症候群だと分かるとどんな疾患か分からず不安になるでしょうが、そもそもヒトは事故や病気などで後天的に障害を追う可能性と常に隣り合わせです。
まずは一人で抱え込まずに遺伝医学の専門家である臨床遺伝専門医や遺伝カウンセラーに相談してみるのがよいでしょう。
NIPT JapanのNIPTでは胎児のXYY症候群の可能性について調べることができます。
【参考】