
性染色体異常であるXYY症候群(47,XYY)(ヤコブ症候群)は、どのような遺伝子疾患なのでしょうか。
生まれてくる赤ちゃんがXYY症候群と診断された場合、正しい知識を持っておきたいですね。
XYY症候群の症状は一般的には軽度で生涯気づかないこともありますが、学習障害や発話に遅延が生じやすい傾向にあります。
XYY症候群とはどのようなものか、症状や原因などについて解説します。
XYY症候群とは

XYY症候群とは、男性は通常はX染色体1本とY染色体1本のところ(XY)、X染色体1本とY染色体2本が存在して生まれる性染色体異常です。
ヤコブ症候群とも呼ばれます。
XYY症候群は、出生男児の約1/1000に発生します。
XYY症候群の人は、身長が平均以上である場合が多く、IQが家族と比較して10~15ポイント低いという傾向があります。
しかし、その他の身体的問題はほとんどないと言われています。
また、性的発達にも影響はありません。
このことから、最近ではXYY症候群を個性の範疇だとする見解が一般的です。
XYY症候群の人は、学習障害や発話の遅延、注意欠陥・多動性障害(ADHD)や行動障害のリスクが高くなります。
さらに、患者の一部は、自閉症スペクトラム障害と診断されています。
XYY症候群の症状にはかなりの個人差が見られます。
一般的には症状は軽度であり、一部の人はXYY症候群であると診断されないまま生涯を送ることもあります。
XYY症候群の原因
XYY症候群は、Y染色体の過剰なコピーによって引き起こされるものです。
ヒトの細胞には、通常は染色体が46本存在します。
46本の染色体のうち、2本がXとYの種類を持つ性染色体です。
性染色体により、人が男性もしくは女性どちらの性的特徴を発達させるかが決定されます。
通常は、男性には1本のX染色体と1本のY染色体(46、XY)、女性には2本のX染色体(46、XX)が存在します。
しかし、XYY症候群では男性の細胞においてY染色体が通常より1本多くなるため、各細胞の染色体数は通常の46本ではなく、47本となるのです。
Y染色体が1本多いことで、なぜ高身長や学習障害などの症状が出るのかは、まだ明らかになっていません。
XYY症候群は、ほとんどの場合は遺伝しません。
XYY症候群における染色体の変化は、精子細胞の形成中にランダムなイベントとして発生します。
不分離(non disjunction)と呼ばれる細胞分裂のエラーは、Y染色体の過剰なコピーを持つ精子細胞をもたらす可能性があります。
これらの非定型生殖細胞の一つが子どもの遺伝子構成に寄与している場合、XYY症候群の子どもは各細胞に過剰なY染色体を持っているのです。
XYY症候群の人の一部は、すべての細胞でなく一部の細胞のみに過剰なY染色体を持っています。
これを46,XY/47,XYYモザイクと言います。
46,XY/47,XYYモザイクも遺伝せず、ランダムなイベントとして発生します。
XYY症候群の検査方法

XYY症候群の検査方法(出生前診断)は大きく分けると「非確定的検査」と「確定的検査」の2つに分けられます。
非確定的検査を実施した後、染色体異常の可能性がある場合のみ、確定的検査を実施するのが一般的です。
非確定的検査には、主に以下の4つがあります。
- 母体血清マーカー検査
- コンバインド検査
- 新型出生前診断(NIPT)
- 超音波(エコー)検査
検査費用は検査をする施設によって異なりますが、最も安い超音波(エコー)検査が2万円程度、最も高い新型出生前診断(NIPT)が20万円程度と、幅があります。
それぞれの検査の特徴については、「出生前診断とは」のページをご覧ください。
XYY症候群の治療法

XYY症候群自体への治療法というものはありません。
一般的には症状は軽度であるため、社会の中で通常の生活を送ることが可能です。
しかし、症状がある場合は、それを早期に発見し、適切なケアを行うことが重要です。
発話の遅延や自閉症スペクトラム障害が見られる場合は、療育(治療教育)が効果的です。
療育とは、一人ひとりの特性に合わせた教育的方法を用いた支援です。
療育を受けることで、生活への支障を軽減することが可能となります。
自閉症スペクトラム障害において、興奮やパニック、不眠などの症状がある際は、対症療法的に薬が処方されることもあります。
また、注意欠陥・多動性障害(ADHD)や学習障害が見られる場合は、個人や家族を対象としたカウンセリング、行動療法などを行います。
症状によっては、適切な服薬も必要となるでしょう。
学習障害があっても、適応教育や指導などの適切な支援によって、高等教育を受けることができる可能性もあります。
さらには、少人数制のクラスを選んだり、補助として家庭教師をつけたりすることが、不安の軽減につながります。
障がいを持つ子どもを育てる場合、まずは両親がどのように育てればいいのか、どのような支援制度があるのか、どのような生活が続くのかなど、しっかりとしたビジョンと知識を持つことが大切です。
その上で、障がいを持つ子どもが生きていくために最適な環境を整えてあげてください。
XYY症候群と向き合うために
胎児がXYY症候群であるとわかった場合、あなたとパートナーがそこに向き合う手段として、遺伝子カウンセリングが有効です。
専門家の助言は、さまざまな決断をする上で、非常に参考になるでしょう。
遺伝カウンセリングでは、遺伝子疾患などに関して不安を持つ人に対し、根拠に基づく正確な情報を提供し、理解を深めるお手伝いをします。
その上で、どのような点に不安があるのかなど話をじっくりと聞き、専門的な知識を活かして問題が解決できるよう、心理的・社会的な支援を行います。
例えば、下記のような悩みに専門家が対応します。
- 赤ちゃんがXYY症候群であることがわかったが、どのような疾患なのか
- 家族に同じ疾患の人はいないのになぜなのか
遺伝カウンセリングは、新型出生前診断(NIPT)などの出生前診断を実施する前に受けるのがよいでしょう。
専門家のアドバイスを受けた上で、あなたとパートナーで、なぜ検査を受けるのか、そして結果をどう受け止め、その後はどう行動するのかを話し合うことが大切です。
遺伝カウンセリングについてはこちらもご参考にしてください。
まとめ

性染色体異常であるXYY症候群は一般的に症状が軽度であり、通常の社会生活が送れます。
胎児がXYY症候群かどうかは一部の出生前診断により判別できます。
出生前診断を受ける際は、事前に遺伝子カウンセリングを受け、遺伝子疾患に対する正しい知識を持つことが大切です。
その上で、パートナーとしっかりと話し合い、専門家の助力も得ながら疾患と向き合ってください。