トリプルX症候群(トリソミーX)とは
トリプルX症候群とは染色体異常の一種で、男女の性別決定にかかわる性染色体が通常と異なるために起こります。
女性特有の疾患でIQは正常範囲か一般より少し低い程度で、平均よりも高身長なこと以外は特徴的な所見はありません。
言語能力や運動能力が平均より低く対人関係が苦手なことが多いとされますが、トリプルX症候群に特有のものとまでは言えません。
このように一般の人と比べて大きな病気や合併症などの特徴があるわけではないため、アレルギーなどと同じように生まれつきの体質であり多様性の一つであるとして、「トリプルX女性」などと呼ばれることもあります。
特徴
上記のように高身長なことを除いてはトリプルX症候群の特徴と呼べるような症状や合併症はありません。
【トリプルX症候群の特徴】
- 女性にしか起こらない
- 成人では平均より高身長
- IQは正常範囲か10~15低い
- 言語発達や運動発達の遅れが多くみられるが、特徴的とまでは言えない
- 稀に泌尿生殖器の奇形がある
発達(成長)
一般的な健康については問題ありません。
生まれたときの体重は平均より400~500g軽く、頭囲は平均以下ですがその他に目立った特徴はありません。
運動機能と言葉の発達は遅れがちで、学童期は75%の人に何らかの言語障害がみられます。
対人関係が苦手で行動の問題がみられることもあります。
このように軽度の精神発達遅滞を示す人がいれば、大学を卒業する人までさまざまです。
身長は成長とともに平均より高くなっていきます。
原因は染色体異常
トリプルX症候群は性染色体の数が通常と異なるために起こります。
ヒトの染色体22対(44本)の「常染色体」と、男女の性別を決める1対の「性染色体」から成り立っています。
性染色体には「X染色体」と「Y染色体」があり、両親から染色体を受け継ぐときに、お母さんから「X染色体」、お父さんからは「X染色体もしくはY染色体のどちらか」をもらいます。
「XX」の組み合わせで女性、「XY」の組み合わせで男性になります。
トリプルX症候群は、通常はX染色体が2本で「XX」となるところ3本存在し「XXX」となった状態です。
X染色体が3本になる主な理由としては、母親の卵子が作られる過程が上手くいかなかったことにより起こります。
トリプルX症候群とは反対にX染色体が少ないことで起こる、女性に特有の性染色体異常としては「ターナー症候群」があります。
遺伝するのか?
染色体異常と聞くと遺伝するのではと思われるかもしれませんがそのほとんどは遺伝ではなく偶然に起こります。
トリプルX症候群も両親や環境のせいではなく、母親の出産年齢が高くなるとその頻度も高くはなりますが、誰にでも起こり得ます。
妊娠前の生活習慣や飲食物が影響するものではありません。
生まれる確率
生まれてくる女の子の赤ちゃんのうち、1,000人に1人の確率でトリプルX症候群であるとされていますが、特徴的な所見はほとんどないため大半は診断されておらず、実際はもっと多いと推測されています。
高齢出産では確率が高くなる
35歳以上で初めて出産することを一般的に高齢出産といいます。
出産年齢が上がるにつれて、卵子が作られる過程での分裂が正しく行われず染色体の過剰や不足が起こりやすくなり、その結果ダウン症などの染色体異常の頻度が高くなることが知られています。
トリプルX症候群も同様に、その原因の約7割は母親の年齢の影響を受けます。
寿命
トリプルX症候群だからといって特別に寿命が短いことはありません。
妊娠出来ない、もしくは妊娠出来にくいことが多い性染色体の異常ですが、トリプルX症候群は妊孕性があるため妊娠、出産することが可能です。
治療法
トリプルX症候群そのものに対する根治的な治療法はありません。
治療を必要とする身体的症状がないため、トリプルX症候群に特に必要な治療はありません。
いかに、その子に合ったさまざまな体験をさせられるかが重要になります。
これらの体験が、心や身体、言語発達や思春期の状態に大きく影響すると考えられています。
仮に感情の発達に遅延が見られても、多くの人と関わる機会を設け、家族や友達などとスポーツや芸術に触れる経験を持つことで、豊かな感情を育むことができます。
言語の発達に遅延が見られる場合は、ある程度の期間、言語教育者などからの援助を受ける必要があるでしょう。
運動機能の遅延においては、親子でのスポーツ活動やグループ活動への参加が効果的です。
いつ分かるのか?検査方法
染色体異常の中には、妊娠時の超音波検査で胎児の首の後ろのむくみなどによりその疑いが持たれることがありますが、トリプルX症候群は稀に泌尿生殖器の奇形が見つかることはありますが、その他に超音波検査で分かるような所見はなく通常は分かりません。
生まれる前の検査では、NIPTや羊水検査などの出生前診断によって偶然発見されることがあります。
出生後も特徴的な症状があるわけではありませんが、精神発達遅滞や言語障害などにより何らかの染色体異常を疑い検査をすることがあるかもしれません。
染色体異常は血液検査により診断します。
出生前診断でトリプルX症候群が発覚したら
出生前診断でダウン症などの染色体異常が発覚した場合、中絶を選択する人が多いことについて議論がつきませんが、トリプルX症候群は命に関わるような合併症が無いばかりか特徴的と呼べるような所見もありません。
学習障害や言語障害が見られることが多々ありますが、トリプルX症候群に特有とまでは言えず、染色体異常がない一般の人と同じように療育を行っていきます。
生まれる前からトリプルX症候群だと分かっていれば、言葉の遅れや運動発達の遅れにいち早く気づき療育環境を整えることができます。
とは言っても、お腹の赤ちゃんがトリプルX症候群だと発覚した場合、少なからず不安を抱くことと思います。
まずは専門家による遺伝カウンセリングを受けて、現状の理解とあなたとあなたのパートナーとでしっかり話し合うことが大切です。
まとめ
X染色体の本数が通常より多いことで起こるトリプルX症候群ですが、高身長なこと以外は特徴的な所見はありません。
言葉や運動機能の発達に問題があるとされますが、特有のものとまでは言えません。
NIPTや羊水検査などの出生前診断で胎児にトリプルX症候群があると発覚した場合でも、生まれた後の発達の様子や問題の有無などについては分からないため不安を抱く人も多いはずですが、これはトリプルX症候群に限った話ではありません。
再度になりますが、もし出生前診断でトリプルX症候群が発覚した場合、一人で抱え込まずに臨床遺伝専門医などの専門家の助言を受けながら、正しい情報のもとで今後について考えていくことが大切です。
NIPT JapanのNIPTでは胎児のトリプルX症候群の可能性を調べることができます。