双子の妊娠で起こるバニシングツインとは?

双子の胎児

バニシングツインという言葉は、妊娠するまで知らなかったという人が多いのではないでしょうか。

双子ちゃんを妊娠し、喜びを2倍感じている矢先、「バニシングツインです」と突然告げられるかもしれません。

バニシングツインとはどういう意味なのか、またその原因や確率、予防法の有無などについてご紹介していきます。

バニシングツインとは?

「バニシングツイン」とは「双子のうちの片方が妊娠初期の段階で、お腹のなかで亡くなり、子宮から消えたように見える現象」のことをいいます。

双子(ツイン)の片方が亡くなり、お腹のなかで消えた(バニシング)ように見えることから「バニシングツイン」と呼ばれます。

子宮から消えたように見えるバニシングツインですが、実際は消えたのではなく、亡くなった赤ちゃんが子宮へ吸収されることで消えたように見えています。

吸収されると聞くと、不思議な感じがしますね。

単胎妊娠(1人の子どもを妊娠すること)では子宮のなかで赤ちゃんが亡くなった場合、手術をするか自然排出をまって胎児を取り出します。

しかし、双胎妊娠(2人の子どもを妊娠すること)の早期の段階で片方が亡くなった場合、体外に排出するまでもなく吸収されて消えたように見えるのです。

バニシングツインの原因と予防法

バニシングツインは双子の片方が亡くなることで起こる現象ですが、なぜ亡くなった胎児が子宮に吸収されるのかは、いまだに解明されていません。

双子に限らず、妊娠初期に流産する(お腹のなかで亡くなる)ことは珍しい現象ではありません。

妊娠初期の流産の多くは、胎児の染色体異常など、胎児側に何らかの原因があり、多くは妊婦さんのせいではありませんので、ご自身を責めないでください。

バニシングツインも同様の理由が考えられますが、どうして吸収されて消えてしまうのかについては現代医学をもってしても解明されていません。

そしてバニシングツインの予防法については、結論からいうと残念ですが現在のところありません

「片方を失うことなく、元気に産んであげたい」と思う気持ちが強いでしょう。

ですが、有効な対策法が分からないため、打つ手がありません。

すぐには気持ちの整理がつかないでしょうが、受け入れるしかないのが現状です。

バニシングツインの確率は?

バニシングツインは双子妊娠のうちの10~15%の確率で起こるとされています。

これは通常の初期流産が起こる確率と同程度であり、双子を妊娠した人の約10人に1人が経験していることになります。

結構多いですね。

しかし「初診の段階で既に胎児が消えている」ということも想定されるため、実際には30%以上という高確率でバニシングツインが起こっているという報告もあります

また、バニシングツインの確率は双子が「一卵性」か「二卵性」かによっても異なり、一卵性双生児の方がその確率は高いと言われています。

なぜ二卵性よりも一卵性の方が高い発症率なのでしょうか?

理由は胎児を包みこむ羊膜(ようまく)と絨毛膜(じゅうもうまく)の数にあります。

双子の膜性による分類

二卵性双胎児は「二絨毛膜二羊膜」と言い、2つの受精卵に対して胎盤や羊膜、絨毛膜が1つずつ用意されています。

しかし、一卵性双胎児の場合、1つの受精卵が分裂して2つになるため、その時期により羊膜や絨毛膜の数が異なるのです。

二卵性双胎児と同じように「二絨毛膜二羊膜」の場合もありますが、なかには2人で1つの羊膜・絨毛膜を共有する「一絨毛膜一羊膜」や、1つの絨毛膜が2つの羊膜を包む「一絨毛膜二羊膜」の場合もあります。

胎児1人に1つずつの羊膜・絨毛膜が用意されていないと、母体から送られてきた栄養を分け合うことになります。

そのバランスが崩れると結果として片方が栄養不足などにより亡くなり、バニシングツインの発症率が上がるのです。

双子が生まれる確率(2022年)

ところで、双子が生まれる確率はどれくらいだと思いますか?

2022年のデータを見てみると、分娩総件数は777,115件で、そのうち双子の分娩は8,583件でした(死産含む)。

つまり、双子が生まれる確率はおよそ1.1%ということになります。

単産-複産別にみた分娩件数(2022年)】

単産-複産別にみた分娩件数(2022年)

*分娩件数とは出産(出生及び死産)をした母の総数である。
*総数には死産の単産、複産の別不詳を含む。
【参照元】人口動態調査/政府統計の総合窓口e-Stat(外部サイトへ移動します)

双子の分娩のうち、片方が亡くなったのは213件、二人とも亡くなったのは270件でした。

双子出産のうち約6%、16件に1件はどちらか片方もしくは両方亡くなっているということが分かります。

これは分娩件数なので、バニシングツインの確率とは異なりますが、2022年の出生数全体に占める死産率は1.97%なので(人口動態統計より)、やはり双子出産の難しさがうかがえます。

いつバニシングツインが起こるの?

バニシングツインは妊娠6~8週目頃の、妊娠初期に起こります。

その頃を過ぎるまでは、周囲の方への双子妊娠の報告は控えた方がいいかもしれません。

ただ、妊娠8週目あたりを過ぎバニシングツインが起こりにくいといっても、流産してしまう可能性は依然としてあります。

妊娠8週目を迎えた以降も、担当医と協力して安全な妊娠生活を送りましょう。

バニシングツインによる母子への影響

バニシングツインは亡くなった胎児が母体へ吸収されるため、母体や残された胎児への影響が心配ですが、妊娠初期に起こった場合は影響はないことが多いです。

一方で妊娠中期(妊娠4ヶ月頃)以降にお腹の中で双子の片方が亡くなった場合、胎児は7~8cm程度に育っていることもあり、吸収されない可能性が高くなります。

バニシングツインで残された胎児への影響は?

妊娠初期にバニシングツインが起こった場合は、もう一人の残った赤ちゃんに基本的に影響はありません。

妊娠中期以降に起こった場合はさきほども出てきた「一卵性」か「二卵性」かによって状況が異なります。

「二卵性双胎児」の場合は基本的に心配ないでしょう。

しかし、「一卵性双胎児」で、羊膜か絨毛膜のどちらかを共有する一絨毛一羊膜や一絨毛二羊膜の場合は残された赤ちゃんへの影響が心配されます。

残された赤ちゃんは低出生体重児として産まれたり、脳に障害が起こったり、最悪の場合亡くなってしまう可能性があります。

消失しない、バニシングツインは体内に残ることもある?

バニシングツインが起こった場合、通常であれば亡くなった胎児は子宮に吸収されて消えてしまいます。

しかし、まれに胎児が吸収されず、もう片方の胎児へ宿ることもあるのです。

亡くなった胎児がもう片方の胎児へと結合した状態を「寄生性双生児」と言い、50万人に1人の確率で起こると言われています。

手足のみが結合されて通常よりも多い本数で生まれることもあれば、体内に亡くなった胎児を宿して生まれる例も報告されています。

時々ニュースやテレビ番組内で紹介されていますので、見聞きした方も多いのではないでしょうか。

まとめ

微笑む妊婦

双子ちゃんの妊娠が分かり、夢が膨らんでいるさなかでバニシングツインだと告げられたお母さんの気持ちを思うと胸が張り裂けそうですが、予防法が分からない以上どうしようもありません。

ただでさえ身体に負担がかかる妊娠期間ですので、ショックやストレスを感じ続けることはプラスにはなりませんよね。

どうぞもう一人の残された赤ちゃんに二倍の愛情を注いで、気持ちを切り替えて健やかな妊娠生活を送ってください。


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