中絶(堕胎)に関する疑問

胎児のイメージ

妊娠したけれども、いろいろな事情があって中絶しなければいけない。本当につらい事です。

つらい上に、いつまで中絶できるのか、お金はどれくらいかかるのか、どんな手術をするのかなど、不安なことを挙げればキリがありません。

しかし中絶ができる期間には限りがあります。

早ければいいという問題ではありませんが、時間が経つほど精神的にも身体的にも負担が増えます。

決断は簡単ではありませんが、決して一人で悩んで抱えこまずに、迷っていてもまずは行動することが大切です。

今回は、中絶に関する法律、中絶手術の方法、母体へのリスク、必要な書類や手続きなどについて解説しています。

中絶とは

中絶(人工妊娠中絶)とは、おなかの中の赤ちゃん(胎児)を外に出たら生きていられない時期(妊娠22週未満)に取り出すことです。

刑法では、中絶のことを堕胎(だたい)といいます。

中絶に関することは母体保護法により定められており、自分の身体に起こったことだからといって、必要な手続きを踏まず中絶すると違法になります。

いつまで可能?

中絶の手術が可能な期間は母体保護法により「妊娠22週未満(妊娠21週と6日まで)」と定められています。

妊娠週数は、最後の生理開始日を0週0日として数えます。

つまり次の生理が1週間遅れているときに妊娠していた場合は、妊娠5週目ということになります。

妊娠22週以降でも、母体の命に関わる場合などにやむを得ず妊娠を終わらせることがありますが、この場合は中絶ではなく死産とします。

中絶に関する法律

そもそも日本の現行の刑法では、212条から216条にかけて堕胎罪を定めており、堕胎(中絶)は原則違法です。

現在行われている中絶手術は、母体保護法で定められた条件でのみ行うことができます。

母体保護法

母体保護法は、母体の生命健康を保護することを目的としています。

中絶を安全に行うために、中絶の条件や実施できる期間、医師の条件などが定められています。

これらに該当しない場合は、中絶手術を受けることができません。

【中絶の条件】

中絶の手術を受けるためには2つの条件が定められています。

  • 妊娠の継続または分娩が身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
  • 暴行若しくは脅迫によってまたは抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの

つまり妊娠を継続することで母体が健康でいられなくなる場合や、金銭面で問題が出てくる場合、強姦やレイプなど望まない妊娠の場合は中絶ができると述べられています。

現在中絶する人の多くは、経済的理由にあてはまるとして同意書にサインしています。

【中絶が可能な期間】

人工妊娠中絶ができる期間は、妊娠22週未満(妊娠21週6日まで)と定められています。

母体保護法では、中絶の期間を「生命を保続することのできない時期」としています。

この時期を、早産の出生データなどを踏まえて、妊娠22週未満と決めています。

【中絶を行う医師の条件】

各都道府県の医師会が認めた指定医師のみが行うことができます。

人格や技能、設備などを考慮して、研修を行った医師のみが指定されます。

どこの病院でも中絶手術を受けられるわけではありません。

刑法

刑法では、堕胎罪により中絶は禁止されています。

  • 妊娠中の女子が薬物を用い、又はその他の方法により、堕胎したときは、一年以下の懲役に処する。

母体保護法に定められている条件、期間、手術を行う医師に当てはまらなければ堕胎罪が適用されます。

中絶を考えたときにまずすること

医者に中絶の相談をする女性

中絶するか出産するか迷っていても、まずは早めの受診が大切です。

あらゆる負担を考えると中絶の手術は早いほうがよく、とくに妊娠12週を境に手術の方法やリスクが異なり、入院期間が長く費用も高額になります。

さらに、死産届の提出や火葬なども必要になります。

また12週未満であっても、子宮外妊娠など異常があれば命にかかわります。

様々な不安でどうすればいいのか分からず受診を先送りにしていると、思いのほか妊娠週数が進んでしまっていることもあります。

受診したその日に手術を受けられるとは限らず、まずは妊娠の状態を確認しなければなりません。

手術前の診察費は通常1万円ほどかかりますが、無料で実施する医療機関もあります。

限られた時間の中で決断しなければならず非常につらいことですが、迷っていてもまずは受診しましょう。

手術の流れ

中絶手術の基本的な流れは以下のように行われます。

  1. 術前の問診、診察
  2. 妊娠確認の検査(超音波検査、血液検査)
  3. 同意書、手術・麻酔の説明
  4. 手術開始
  5. 術後の安静
  6. 帰宅

手術の前に、超音波検査でおなかの中の胎児の状況を見ておくことで、手術の日程などを決定します。

手術の方法

中絶手術では、子宮内の胎児や胎盤、卵膜などの子宮内容物を外に取り出します。

手術の方法が、妊娠初期(妊娠12週未満)と妊娠中期(妊娠12週~妊娠22週未満)で異なります。

妊娠初期は麻酔で眠っている間に人為的に胎児を取り出しますが、妊娠中期は通常の分娩と同じ形で行われることがほとんどです。

中絶手術の方法:妊娠初期

中絶手術

麻酔で眠っている間に、掻把(そうは)法または吸引法により子宮内容物を人為的に取り出します。

掻把法(そうはほう)
小さなスプーンのような器具を用いてかき出す方法です。

吸引法
吸引器を用いて吸い出す方法で、吸引器の先がプラスチックのチューブ状なのを手動真空吸引法、金属棒のようなのを電動真空吸引法といいます。

掻把法よりも吸引法のほうが、一般的に安全に行えると言え、現在の主流になっています。

日本産婦人科医会の調査によると、子宮穿孔や大量出血などの合併症の頻度は、吸引法で0.11%、掻把法では0.59%と報告されています。

中絶手術の方法:妊娠中期

妊娠12週以降は、陣痛誘発剤を使って人工的に陣痛を起こし、通常の分娩と同じように取り出します。

術前の処置として、子宮頸管拡張材を用いて胎児が外に出やすいよう出口(子宮頚部)を広げます。

子宮頸管拡張材とは数mmの太さの細長い棒のことで、膣から挿入して時間とともに膨張させます。

胎児が大きい場合や出産未経験の方では、より子宮頸管を拡張させる必要があるため、時間がかかるうえに痛みも生じます。

前処置が終われば、子宮を収縮させる膣錠のお薬を直接膣へ挿入して陣痛を起こします。

そして出産と同じように、子宮から胎児や胎盤を取り出します。

中絶手術にかかる時間

妊娠初期(12週未満)の中絶手術は10~15分ほどで終わります。

初診を受けたその日に手術も行う日帰り手術も可能です。

ただし中絶の方法が掻把法であれば子宮頸管を広げる前処置が必要となることが多く、追加で数時間要します。

妊娠中期(12週~22週未満)では1泊2日の入院が必要になります。

胎児が妊娠初期と比べて大きいため、子宮頸管を拡張する前処置を半日から1日ほどかけて行います。

分娩にかかる時間は個人差がありますが、陣痛が弱いために丸1日を要する人もいます。

手術の痛み

妊娠初期の中絶手術は麻酔で眠っている間に手術は終わるため、手術中に痛みを感じることはありません。

中期中絶手術では前処置と陣痛により強い痛みが生じます。

麻酔は原則使わないため痛みをそのまま感じることになります。

前処置の痛みは胎児の大きさの分、強くなります。

通常の出産と比べると胎児も小さいことから分娩の痛みは少ないです。

いずれの時期の中絶手術においても、術後麻酔が切れてきたときに生理痛のような痛みを生じることがあります。

これは広がっていた子宮が元の大きさに戻るために生じる痛みです。

痛みが強い人には痛み止めのお薬を処方してもらえます。

中絶手術は入院が必要?

妊娠初期の場合は基本的には日帰りで、入院の必要はありません。

中期は4日~5日ほどの入院が必要になります。

妊娠初期と違って前処置と分娩に時間を要し、術後も回復に時間がかかるためです。

術後の注意点と過ごし方

シャワーを浴びる女性

術後は生理痛のような腹痛、出血、めまい、頭痛などの症状がみられることがあります。

通常1週間ほどで落ち着いてきますが、症状が強くなる場合は受診しましょう。

身体的な症状以外にも中絶後遺症候群(PAS)が認められることもあります。

イライラする、眠れないなどの精神症状がみられ、中絶のストレスや感情を抑圧してしまうことがきっかけとされています。

手術後の1~2週間は、子宮内に水が入ると感染のリスクにつながるため、入浴は控えてシャワーのみにしましょう。

激しいスポーツや肉体労働も避けたほうがよいでしょう。

中絶による母体への影響

ごくまれに、以下のような母体への影響が起きることがあります。

遺残(いざん)

胎児や胎盤、卵膜の取り残し。生理と一緒に剥がれ出てくることもあれば、再手術が必要な場合もある

子宮穿孔(しきゅうせんこう)

手術中に子宮に穴が開いてしまう。胎児が大きいほど、子宮の筋層が薄くなるため、リスクが高くなる

腹膜炎

子宮穿孔により、子宮の外側の腹膜で炎症が起きる

頻度は非常に少ないですが、なにか思い当たる症状があれば、すぐに再受診するようにしましょう。

中絶後の生理はいつくる?

生理は術後1ヵ月程度で来ることが多いです。

ただし中絶によるストレスやホルモンバランスの乱れにより、多少前後することはあります。

次の妊娠への影響は?

中絶手術で子宮穿孔などの合併症が起きると、妊娠に影響することはあります。

ただし合併症が起きるのはごくまれであり、手術でトラブルがなければ不妊になる可能性はほとんどないでしょう。

中絶費用

中絶費用は保険適用ではなく、自由診療となるため医療機関によって大きく費用が異なります。

妊娠週数が進むにつれて費用は高くなります。

初期中絶の費用は、検査費と手術費を合わせて約10~15万円です。

一方中期中絶では手術費が高くなるだけでなく、入院費や火葬費も必要となるため合計の費用は40~60万円程度となります。

ただし中期手術であれば、出産育児一時金として488,000円の助成を受けることができます。

出産育児一時金は出産以外にも流産や死産の場合も支給対象となり、中絶は人工流産とされているためです。

必要な書類

中絶手術に対する同意書が必要で、手術日までに記載して提出しなければいけません。

同意書へのサインと捺印は、ご本人だけでなくパートナーの分も必要です。

また未成年であれば親御さんのサインと捺印も原則必要となります。

ただし事情によってはお相手の男性の同意書は不要の場合もありますので、検討している医療機関へ相談してみてください。

死産届

妊娠初期(12週未満)では死産届は不要で埋葬も必要ありません。

一方妊娠中期では、死産届と埋葬が必要になります。

死産した日から7日以内に、お住まいの市区町村の役所に死産届けを提出します。

そして火葬の予約を入れて埋葬許可証を発行してもらいます。

提出期限が短く精神的にも辛い時期なため、葬儀屋さんに任せる人もいます。

薬による中絶が可能か

海外では薬による中絶ができる国もありますが、日本ではリスクがあるとして使用は認められていません。

ミフェプリストンとミソプロストールという2種類が組み合わさったお薬で、それぞれ女性ホルモンの分泌を抑えて妊娠を継続しにくくする作用と、子宮を収縮させて胎児を出す作用を持ちます。

WHOが「女性の身体と心への負担がより少ない」と推奨している方法ですが、出血のリスクや中絶の確率が100%ではないことから、日本では認可されていません。

誰にも知られずに中絶したい

誰にも知られずに中絶することは可能です。

同意書の提出時にパートナーや親のサインを求められますが、医療機関によっては無くても認められることがあります。

これは母体保護法に、婚姻関係ではないパートナーのサインや親のサインが必要だとは明記されていないためです。

中絶費用の支払いについても、保険適応ではないため保険組合から何か郵送されてくるような心配はありません。

医療機関から情報が漏れないかについてもクリニックの医師やスタッフには守秘義務があるため、周囲に話すようなことはないでしょう。

まとめ

後ろ姿の女性

今回は中絶の方法や費用、リスクについて紹介しました。

中絶はさまざまな事情があって、すぐに決断するのは難しいと思います。

しかし中絶の手術が遅れるほど、母体の身体的かつ精神的な負担は大きくなります。

1人で抱え込まず、早めに医療機関へ行って相談するようにしましょう。


【参考】
令和元年度衛生行政報告例の概況 / 厚生労働省
妊娠12週未満の人工妊娠中絶手術による合併症 / 日本産婦人科医会


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