
お腹の赤ちゃんに染色体異常がないか不安に感じるとき、検査のひとつとして「羊水検査」を検討する方も多いのではないでしょうか。
「羊水検査 費用」で検索すると、「10万円~20万円」と表示されることが多いものの、幅が広いため実際の相場が分かりづらいと感じる方も多いようです。
このコラムでは、2025年最新版の羊水検査の費用相場や保険適用の有無、助成制度の情報をわかりやすくまとめました。
羊水検査の基本を簡潔に解説

羊水検査は、胎児の染色体異常(ダウン症候群など)や一部の遺伝子疾患を診断する検査です。
妊婦さんのお腹に細い針を刺して少量の羊水を採取し、その中に含まれる胎児由来の細胞を分析することで、胎児の染色体の数や構造の異常を調べます。
羊水検査には0.1~0.3%程度の流産リスクがありますが、検査できる項目に関しては非常に高い精度で結果が得られることから、「確定診断」に用いられます。
実施時期は一般的に妊娠15~18週頃で、結果が出るまでにおよそ2~3週間かかります。
検査対象者
羊水検査は侵襲的で一定のリスクも伴うため、以下のようなリスクが相対的に高い方が主な対象となります。
羊水検査を検討する際は担当の産科医や遺伝カウンセラーなどと十分に相談し、検査の目的やリスクについて理解した上で決断することが大切です。
対象疾患
羊水検査で診断できる主な疾患は以下の通りです。
【羊水検査で診断できる主な疾患】
- 染色体の数の異常(常染色体、性染色体)
- 染色体の構造の異常(例:5p欠失症候群 など)
- 先天性代謝異常の一部(例:フェニルケトン尿症 など)
- 遺伝子疾患の一部(例:筋ジストロフィー など)
このように羊水検査は染色体の数や構造の異常のほか、一部の遺伝子疾患や先天性代謝異常など非常に多くの疾患を診断できます。
ただし「全ての先天性疾患・遺伝子異常」を網羅するものではなく、頻度の低い疾患や、検査項目に含まれていない疾患については診断できない場合があります。
たとえば、自閉スペクトラム症や学習障害など、出生後に判明することが多い発達・行動系の問題は、この検査では対象とはなりません。
また、「検査結果が異常なし」と出たからといって、赤ちゃんのすべての健康が保証されるわけではありません。検査をどう受け止め、今後どのように備えるかが重要です。
羊水検査の費用相場

羊水検査にかかる総費用は、一般的に10万円~20万円程度です。
決して安い検査ではないため、「その内訳が知りたい」「なぜ費用相場の幅が広いの?」と疑問を持つ方も多いでしょう。
以下では、費用の内訳と実際の医療機関での費用例をご紹介します。
羊水検査費用の内訳
羊水検査費用の主な内訳は次の通りです。
【羊水検査費用相場一覧】
| 項目 | 費用の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 羊水採取+染色体解析 (培養・分析) | 約10万~13万円 | 羊水を採取し、胎児の染色体異常を調べる基本検査費 |
| 初診料・診察料 | 約3,000〜5,000円 | 初回受診時 |
| 遺伝カウンセリング料 | 約5,000~1万円 | 検査前後のカウンセリング |
| 超音波検査料 | 約3,000〜1万円 | 羊水採取時のガイドとして使用 |
| 追加検査 (FISH法) | 約2万~4万円 | 結果が1〜3日で判明する迅速検査 |
| 追加検査 (マイクロアレイ法) | 約7万~15万円 | 微細な染色体異常やモザイクを検出する高度な検査 |
| 診断書・結果報告書発行費 | 約2,000〜5,000円 | 結果を文書で受け取るための費用 |
このように、検査自体の費用に加えて初診料や遺伝カウンセリング費用、結果報告書発行費などが別途かかる場合もあります。
また、結果を早く知りたい場合は「迅速検査(FISH法など)」を、微細な染色体異常やモザイクを検出する高度な検査が必要な場合は「マイクロアレイ検査」を追加することがあり、検査の総額が30万円以上になるケースもあります。
費用を比較する際は、「基本料金に何が含まれているか」をあらかじめ確認することが重要です。
各医療機関の羊水検査費用一覧

羊水検査の費用は医療機関ごとに差がありますが、目安として以下のような傾向があります。
- 大学病院・総合病院:12万〜25万円前後
- 専門医による手技や高度な設備が整っている
- 専門クリニック:12万〜30万円前後
- 検査件数が多く、迅速な結果提供も可能な場合がある
- 地域の産婦人科・提携クリニック:10万〜14万円前後
- 提携機関に検体を送って検査を行うケースが多く、費用を抑えやすい傾向
【大学附属病院の例:東京慈恵会医科大学附属病院】
Total:125,400円~184,800円+α
- 検査前遺伝カウンセリング料(初診料):7,700円
- 結果開示時の遺伝カウンセリング料(再診料):7,700円
- 羊水検査料(G分染法の場合):110,000円
- 羊水検査料(array法の場合):169,400円
- 初再診療、妊婦健診料、処方料は含まれない
【専門クリニックの例:FMC東京クリニック】
Total:242,000円~363,000円
- 遺伝カウンセリング(60分):11,000円
- 染色体迅速検査+G分染の場合:231,000円
- 染色体迅速検査+マイクロアレイの場合:297,000円
- 染色体迅速検査+G分染+マイクロアレイの場合:352,000円
※費用は調査時(2025/10/24)のものです。すべて税込み表示です。ご検討の際は事前にご確認ください。
医療機関や地域によって費用が異なる理由
羊水検査費用が病院や地域によって大きく異なる理由は、主に3つあります。
- 検査設備・技術料の差
大学病院や専門クリニックでは最新機器を使った高度検査や微小欠失検査などオプションも充実しており、その分費用が高額になる傾向があります。
- 人件費・地域差
人件費は地域差が大きく、都心部では医療従事者の賃金や施設運営費が高いため地方より割高になる傾向があります。
- 検査体制やサービス内容の違い
医療機関によって検査の前後に行う遺伝カウンセリングの充実度、フォローアップの体制などサービス内容が異なります。
手厚いサポート体制や丁寧な説明がある施設は人件費や運営費がかかるため、費用がやや高めになる傾向があります。
羊水検査の費用に保険は使える?

羊水検査の費用は基本的に公的健康保険や公的制度が使えず、全額自己負担です。
ただし、治療が必要となった場合は一部の制度が適用されることもありますので、正しく理解しておくことで経済的な負担を減らせるかもしれません。
ここからは、「健康保険の適用条件」「高額療養費制度」「医療費控除」の3つの制度について、知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。
健康保険の適用条件
羊水検査などの出生前診断は、「病気の治療」ではなく「病気の診断」が目的のため、原則として自由診療(保険対象外)です。
ただし、医学的理由が明確であり医師が必要と判断した場合は保険適用となるケースもあります。
【羊水検査で保険適用となるケース】
- 超音波検査等で胎児に異常が疑われる場合
- 家族に遺伝性疾患がある場合
保険適用の可否は医療機関の判断によって異なるため、事前に主治医に確認しましょう。
高額療養費制度の適用条件
高額療養費制度は、月ごとの医療費が一定額を超えると差額を公的に補助する制度ですが、残念ながら羊水検査は「保険適用外の自費診療」のため、この制度は対象外です。
ただし、検査で入院や治療が必要になった場合は、その費用についてのみ高額療養費制度が適用される可能性があります。
事前にこの制度が利用できるとわかっている場合は、「限度額適用認定証」を健康保険組合に申請しておくと窓口支払い額を軽減できます。
医療費控除の適用条件

医療費控除は、年間で支払った医療費が一定額を超えた場合に所得税の控除対象となる制度です。
しかし、羊水検査は「病気の治療」ではなく「診断」が目的であるため、原則として控除対象にはなりません。
ただし、検査の結果、異常が判明してそれに基づく治療や医療行為が行われた場合は、その治療費が控除対象となるケースがあります。
また、検査に関連してかかった公共交通機関の交通費や診断書作成料など対象となるものもあるため、領収書や明細はきちんと保管しておくことをおすすめします。
羊水検査費用の補助制度があるケースも
一部の医療機関では、NIPT(新型出生前診断)などの非確定検査で陽性となった場合、羊水検査の費用を補助する制度を設けている所もあります。
たとえば、慶應義塾大学病院でNIPTを受けて陽性だった場合、羊水染色体分析の費用は無料です(別途、羊水検査手技料、再診料)。
また、NIPT JapanでNIPTを受けて陽性だった場合、検査費用を上限として羊水検査費用の補助があります。
NIPTなどの比較的検査を受ける際は、陽性時の確定診断費用の補助制度があるかどうかも確認しましょう。
まとめ
羊水検査の費用は10万〜20万円程度が一般的で、医療機関の設備や検査方法などによって差があります。
基本的には保険適用外ですが、医学的理由がある場合は一部適用されることもあります。
高額な検査なため費用に注目しがちですが、大切なのは検査の意義やリスクを理解し、納得して選択することです。
迷ったときは一人で抱え込まず、パートナーや医療者と一緒に考えていきましょう。