
妊娠中に、「体重をあまり増やしたくない」と食事を控えてしまっていませんか。
現代日本ではおよそ10人に1人が低出生体重児として生まれており1)、小さく生まれること自体は決して珍しくありません。
かつては「小さく生んで大きく育てる」ことが良いと言われていましたが、現在ではこの考え方は見直されています。低出生体重で生まれることは、出生直後だけでなく、その後の成長や発達、将来の健康にも影響を及ぼす可能性があることが分かってきたためです。
本コラムでは、体重が少なく生まれた赤ちゃんにどのようなリスクがあるのかを分かりやすく解説いたします。
おなかの赤ちゃんの健やかな成長のために、今からできることを一緒に確認していきましょう。
低出生体重児
低出生体重児とは、出生体重が2,500g未満で生まれた赤ちゃんを指します2)。
一般的に出生体重2,500g~4,000g未満の赤ちゃんは、健康上のリスクが最も低いとされています。
2024年人口動態統計によると、日本の平均出生体重は男児が3.04kg、女児が2.95kgでした1)。
低出生体重児の中でも、出生体重が軽いほど出生直後の合併症やその後の成長・発達に影響が及ぶ可能性は高くなります。
低出生体重児・超低出生体重児・未熟児の違い
同じ低出生体重児でも、出生体重が2,500gに近い赤ちゃんと1,000g前後で生まれた赤ちゃんでは体の成熟度が大きく異なるため、必要な治療や管理も変わってきます。
そのため、出生時の体重によって次のように分類されています。
【出生体重による分類3)】
| 分類 | 出生体重・定義 | 特徴・リスク |
|---|---|---|
| 高出生体重児 | 4,000g以上 | ・難産のリスク ・新生児低血糖 ・呼吸障害 |
| 正出生体重児 | 2,500~3,999g | ・一般的な出生体重 ・健康上の問題は少ない |
| 低出生体重児 | 2,500g未満 | ・呼吸障害や低血糖、黄疸などの合併産症リスク ・NICU入院が必要になる場合がある |
| 極低出生体重児 | 1,500g未満 | ・脳性麻痺、発達障害、視覚・聴覚障害のリスク増加 ・長期フォローアップが必要 |
| 超低出生体重児 | 1,000g未満 | ・脳性麻痺、発達障害、視覚・聴覚障害のリスク増加 ・長期フォローアップが必要 |
| 未熟児(早産児) | 出生体重は関係ない | ・身体の発育が未熟なまま生まれた児 |
出生体重2,500g未満で生まれた赤ちゃんは「低出生体重児」に分類され、そのうち1,500g未満は「極低出生体重児」、1,000g未満は「超低出生体重児」と呼ばれます。
一方、「未熟児」という言葉との違いが気になる方もいるでしょう。
未熟児は正式な分類ではなく、かつては身体機能が十分成熟していない状態で生まれた赤ちゃんをまとめて「未熟児」と呼んでいました。しかし、出生体重が軽いからといって必ずしも身体機能も未熟とは限らないため、現在ではほとんど使われていません。
低出生体重児の健康リスク

低出生体重児では、出生直後に起こりやすい合併症だけでなく、成長に伴って現れる発達や学習面への影響、さらに成人後の健康リスクまで、長期的な経過を見ていくことが大切です。
ただし、こうしたリスクがすべての低出生体重児に当てはまるわけではありません。出生体重や在胎週数、出生後の経過によって、リスクの大きさは大きく異なります。
出生直後~乳幼児期のリスク

低出生体重児は臓器の発達が十分でない状態で生まれることが多いため、出生直後から乳幼児期にかけてさまざまな合併症がみられることがあります。
主なリスクは以下のとおりです。
| 主なリスク3) | 概要 |
|---|---|
| 呼吸障害 | 肺の表面を膨らませる物質が不足し、自力での呼吸が苦しくなったり一時的に止まることがある。人工呼吸器やCPAPによる呼吸補助が必要になることがある。 |
| 低体温 | 皮下脂肪が少なく体温を保ちにくいため、保育器で管理することがある。 |
| 低血糖 | エネルギーの蓄えが少ないため、血糖値が低下しやすい。 |
| 黄疸(おうだん) | 肝機能が未熟なため黄疸が出やすく、光線療法を行うことがある。 |
| 感染症 | 免疫機能が未熟なため、細菌やウイルスに感染しやすい。 |
| 脳室内出血 | 特に超低出生体重児では脳の血管が非常に脆く、血圧の変動などで脳内出血を起こしやすい。 |
| 未熟児網膜症 | 網膜の血管が異常に増殖し、放置すると失明のリスクがある。必要に応じてレーザー治療などを行う。 |
発達の評価には、出産予定日を基準にした「修正月齢」が用いられることが一般的です。そのため、実際の月齢では成長がゆっくりに見えても、修正月齢でみると順調に発達しているケースもあります。
幼児期~学童期のリスク
出生直後の合併症を乗り越えて退院した後も、一部の低出生体重児では運動機能や発達、学習面などに影響がみられることがあります。
一方で、発達の経過には個人差があり、出生体重が同じでも成長の過程は一人ひとり異なります。そのため、乳幼児健診や就学前健診などで発達の様子を確認し、必要に応じて早い段階で支援につなげることが大切です。
運動障害のリスク
出生体重が特に軽い場合は、脳や神経系が未熟な状態で生まれるため、脳性麻痺などの運動障害がみられることがあります。
また、明らかな運動障害がなくても、姿勢の保持やバランス、手先の細かな動作、走る・跳ぶといった協調運動が苦手になる「発達性協調運動障害(DCD)」がみられる場合があります。
発達障害のリスク
低出生体重児では、成長に伴って発達障害の特性がみられる割合が一般の子どもより高いことが報告されています。
特に超低出生体重児では、注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)などの発達特性が学齢期以降に明らかになることがあります。
乳幼児期には大きな問題がなくても、小学校入学後に集団生活や学習面で困難が目立つようになるケースも少なくありません。
知的障害のリスク
出生体重が非常に軽い赤ちゃんでは、知的発達に影響が及ぶリスクも高くなることが報告されています。
特に超低出生体重児では、脳の発達が未熟な状態で生まれることから、知的障害や認知機能の低下がみられる場合があります。
また、知能指数(IQ)が標準範囲内であっても、記憶力や注意力、情報処理速度など一部の認知機能に課題がみられることもあります。
成人期以降のリスク

低出生体重児として生まれた人の多くは、成人後も健康に生活しています。しかし、出生体重が低い人では、将来的に生活習慣病を発症するリスクが高くなる可能性があります。
これは「DOHaD(Developmental Origins of Health and Disease:健康と病気の発達起源説)」として知られる考え方で、胎児期から乳幼児期までの環境が、成人後の健康に影響を及ぼすとされています。
生活習慣病のリスク
低出生体重児では、高血圧や2型糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病などの生活習慣病を発症するリスクがやや高いことが報告されています。
その背景には、胎児期に栄養が不足した環境へ適応した体質が、成人後に十分な栄養環境となった際に代謝異常を起こしやすくなることが一因と考えられています。
低出生体重児として生まれたこと自体は変えられませんが、適正体重の維持やバランスのよい食事、適度な運動などを心がけることで、将来の健康リスクを軽減できる可能性があります。
出生体重ごとの主なリスク
出生体重が軽くなるほど救命率は低下する傾向がありますが、近年は周産期医療の進歩により、1,000g前後で生まれた赤ちゃんでも90%以上が救命されるようになっています。出生体重別の生存率は以下のとおりです。

ここでは、出生体重ごとにみられやすい主なリスクを紹介します。
出生体重2,000〜2,499g
出生体重2,000〜2,499gの赤ちゃんは低出生体重児に分類されますが、多くは適切な管理のもとで順調に成長します。
【主なリスク】
- 低血糖
- 低体温
- 哺乳不良
- 黄疸
出生後の経過が良好であれば、特別な治療を必要とせず退院できるケースも少なくありません。
出生体重1,500〜1,999g
出生体重1,500〜1,999gでは、呼吸や哺乳機能が未熟なことが多く、NICU(新生児集中治療室)やGCU(新生児室)で管理されるケースが一般的です。
【主なリスク】
- 呼吸窮迫症候群(RDS)
- 無呼吸発作
- 哺乳困難
乳幼児期には軽度の発達の遅れや手先の不器用さがみられることがありますが、就学前までに追いつく子どもも多くいます。
出生体重1,000〜1,499g
出生体重1,000〜1,499gは極低出生体重児に分類されます。多くは妊娠30週前後の早産で生まれるため、肺や脳、消化管などの臓器が十分に成熟しておらず、NICUで集中的な治療と全身管理を受けます。
【主なリスク】
- 未熟児網膜症
- 脳室内出血
- 動脈管開存症(PDA):胎児期に使われていた動脈管が出生後も閉じず、心不全や肺出血を引き起こす。
周産期医療の進歩により救命率は大きく向上しています。
一方で、脳性麻痺が5.1%、発達遅滞(DQ(発達指数)<70)は10.5%との報告もあり3)、退院後も運動機能や発達、視力・聴力などを継続して確認していくことが大切です。
出生体重1,000g未満
出生体重1,000g未満は超低出生体重児に分類され、妊娠28週未満など極めて早い時期で生まれることが多く、重い合併症のリスクが高いことが特徴です。NICUで長期間にわたる治療や管理が必要になります。
【主なリスク】
- 慢性肺疾患(CLD):長期間の人工呼吸管理や肺の未熟性によって、慢性的な呼吸障害が残ることがある。
- 壊死性腸炎(NEC):腸の未熟性により、腸の一部が壊死する重篤な合併症。
- 重度の脳室内出血
- 脳白質軟化症(PVL)
- 未熟児網膜症
3歳までの死亡率は0.5%、脳性麻痺は9.5%、発達遅滞(DQ(発達指数)<70)は23.7%だったとの報告もあります3)。
NICU入院から退院後までの流れ
低出生体重児として生まれた赤ちゃんは、出生体重や在胎週数、全身の状態に応じてNICU(新生児集中治療室)へ入院し、必要な治療や管理を受けます。
入院期間や治療内容は赤ちゃんによって異なりますが、多くは本来の出産予定日前後を目安に退院を目指します。
ここではNICU入院から退院、その後のフォローアップまでの一般的な流れを紹介します。
NICUで行われる主な治療
NICUでは、赤ちゃんが自分の力で呼吸や体温調節、哺乳ができるようになるまで全身の状態を管理しながら治療を行います。
主な治療・管理は以下のとおりです。
| 治療・管理 | 内容 |
|---|---|
| 保育器での管理 | 体温を一定に保つため、温度や湿度を管理した保育器で過ごす |
| 呼吸・循環のサポート | 自力での呼吸が難しい場合は、人工呼吸器や鼻マスク(CPAP)で呼吸を補助する |
| 栄養管理 | はじめは点滴で栄養を補給しながら、口から胃へチューブを通す経管栄養を併用する。お母さんの初乳を少量ずつ与え、腸の発達を促すこともある。 |
状態が安定すると、GCU(新生児回復室)へ移り、哺乳や体重増加を確認しながら退院に向けた準備を進めます。
退院できる時期の目安
退院時の体重は施設の方針や赤ちゃんの状態によって異なります。
2,000g前後が一つの目安とされることもありますが、実際には体重だけでなく以下のような状態をみて総合的に判断します。
- 体重が2,000g〜2,500g程度まで増えている
- 自力で必要な量のミルクや母乳を飲める
- 保育器の外でも体温を安定して維持できる
- 呼吸や心拍が安定し、無呼吸発作がない
退院後のフォローアップ
退院して終わりではなく、その後も赤ちゃんの成長や発達を見守るためのフォローアップが続きます。
退院直後:地域の訪問ケア
自治体の保健師や助産師が自宅を訪問し、赤ちゃんの体重測定や育児相談、公的助成(未熟児養育医療など)の手続きの案内を行います。
退院後数週間~数か月:フォローアップ外来・専門外来
退院後しばらくは1〜2週間ごと、その後は状態に応じて数か月から1年ごとの間隔で受診します。
小児科では、身体の成長だけでなく、寝返りやお座り、言葉などの発達を確認し、脳性麻痺や発達障害などの早期発見・早期支援につなげます。
また、必要に応じて眼科や耳鼻科などの専門外来を受診し、未熟児網膜症の経過観察や、難聴の有無を確認する聴覚検査などを継続します。
幼児期~学童期:継続的なサポート
フォローアップは3歳児健診や小学校入学前後まで続くことが多く、必要に応じてリハビリ(理学療法・作業療法)、療育、就学相談などの支援へとつなぎます。
低出生体重児になる主な原因

低出生体重児になる原因はひとつではなく、母体の健康状態や生活習慣に加え、胎児や胎盤、へその緒の状態などさまざまな要因が重なって起こります。
また原因を特定できないケースもあります。
母体側の要因
母体の健康状態や生活習慣、妊娠中の合併症は低出生体重児のリスクに大きく関わります。
主な要因は以下のとおりです。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 妊娠前のやせ・妊娠中の体重増加不足 | 日本で低出生体重児が多い要因のひとつ。妊娠前のBMIが18.5未満の場合、低出生体重児を出産するリスクが約1.6倍になったとの報告も4)。 |
| 妊娠高血圧症候群・母体の病気 | 胎盤への血流が低下し、胎児に十分な酸素や栄養が届かなくなる。糖尿病、腎疾患、自己免疫疾患、重度の貧血なども原因になる。 |
| 感染症 | 早産の大きな原因のひとつ。クラミジアや淋菌などの性感染症のほか、トキソプラズマやリステリア菌などの感染も低出生体重児につながる可能性がある。 |
| 高齢妊娠(35歳以上) | 血管機能や胎盤機能の低下に加え、妊娠合併症の発症リスクが高くなる。 |
| 20歳未満の若年妊娠 | 妊婦健診の受診が遅れやすいことや感染症、栄養状態など複数の要因が重なりやすいため。 |
| 喫煙 | 胎盤への酸素供給が低下し、胎児発育不全や流産・早産のリスクが高まる。 |
| 胎盤の異常 | 前置胎盤や常位胎盤早期剥離、胎盤機能不全など。 |
胎児側の要因
赤ちゃん自身の体質や状況によって、子宮内で十分に体重が増えないことがあります。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 多胎妊娠 | 子宮の中のスペースが限られることや、栄養を分け合うことから体重が増えにくい。多胎妊娠の約半数は早産で生まれている5)。 |
| 先天異常・染色体異常 | 染色体の変化や心臓・消化器などの先天性疾患がある場合は、細胞分裂や臓器の働きに影響し、胎児の発育が遅れることがある。 |
低出生体重児を予防するためにできること
低出生体重児のすべてを予防できるわけではありませんが、母体の健康を保ち、胎児が育ちやすい環境を整えることで、リスクを減らせる可能性があります。
また妊婦健診を定期的に受けることが、異常の早期発見や早期対応につながります。
妊娠中は次のようなことを心がけましょう。
- 適切な体重管理を行う
- 喫煙・受動喫煙を避ける
- 妊婦健診を定期的に受ける
- 感染症の予防に努める
- 十分な休養を取る
まとめ

低出生体重児として生まれた赤ちゃんは出生直後の合併症だけでなく、成長や発達、将来の健康に影響が及ぶ可能性があります。ただしリスクの大きさは出生体重や在胎週数、出生後の経過によって異なり、すべての赤ちゃんに問題が起こるわけではありません。
近年は周産期医療の進歩により、多くの低出生体重児が適切な治療やフォローアップを受けながら成長しています。妊娠中は適切な体重管理や禁煙、感染症予防、定期的な妊婦健診を心がけることが低出生体重児のリスクを減らすことにつながります。
不安なことがあれば早めに医療機関へ相談し、赤ちゃんの健やかな成長を支えていきましょう。
【参考文献】
1)厚生労働省.令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況.https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei24/index.html(参照 2026-07-31)
2)WHO.Low birth weight.https://www.who.int/data/nutrition/nlis/info/low-birth-weight(参照 2026-07-31)
3)「小さく産まれた赤ちゃんへの保健指導のあり方に関する調査」研究会『低出生体重児保健指導マニュアル―小さく生まれた赤ちゃんの地域支援』平成31年3月、p.10、表7「極低出生体重児3歳時の障害の頻度」https://sukoyaka21.cfa.go.jp/media/tools/s03_mijyu_manyu028.pdf(参照 2026-07-31)
4)PubMed.Maternal body mass index and risk of birth and maternal health outcomes in low- and middle-income countries: a systematic review and meta-analysis.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26094567/(参照 2026-07-31)
5)厚生労働省.平成19年度出生に関する統計の概況.https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/syussyo07/dl/gaikyou.pdf(参照 2026-07-31)