バニシングツイン(消える双子)とは?原因と残された赤ちゃんへの影響

双子の胎児

妊娠初期の検査では「双子」と言われたのに、次の診察では一人しか確認できなくなっていた――。

突然このようなことが起こると、「残った赤ちゃんは大丈夫なのか」「消えた子はどうなったのか」と多くの方が戸惑いや不安を感じるのではないでしょうか。

これは「バニシングツイン(消える双子)」と呼ばれ、双子の妊娠ではしばしばみられる現象です。

この記事では、バニシングツインとはどのような現象なのか、原因や起こる確率、残された赤ちゃんや母体への影響について、わかりやすく解説します。

バニシングツイン(消える双子)とは

バニシングツイン

バニシングツインとは、双子のうち片方の発育が妊娠初期に止まり、子宮内で吸収されていなくなる現象を指します。

初期の超音波検査で2つの胎嚢や胎児が確認されていても、その後の診察では1つしか確認できなくなることから、「消えた双子(Vanishing Twin)」と呼ばれています。

「吸収される」と聞くと驚かれるかもしれませんが、バニシングツインは双胎妊娠のうち約15~30%程度で発生していると考えられており(研究により差があります)、特別に珍しい現象ではありません。

バニシングツインはいつ起こる?(妊娠6~8週)

妊娠超初期の期間

バニシングツインの多くは、妊娠6週~8週頃に起こります。1)
妊娠6~7週頃の超音波検査で双子が確認されたあと、その後の妊婦健診で一方の胎児の心拍が確認できなくなったり、胎嚢(赤ちゃんを包む袋のような構造)が小さくなったり消失したりすることで判明します。

なお妊娠中期以降に双子の一方が亡くなった場合、吸収はされず「紙様児(しようじ:亡くなった胎児が子宮内で圧縮されて残る状態)」として残ることがあります。

このため「バニシングツイン」と呼ばれる現象が起こるのは、妊娠12週頃までが中心となります。

バニシングツインの自覚症状

バニシングツインが起こった場合、多くは自覚症状がありませんが、一部の方では次のような症状がみられることがあります。1)

  • 少量の不正出血
  • 軽い腹痛や下腹部の違和感
  • 骨盤痛や腰痛

ただし、これらの症状は通常の妊娠に伴う変化や切迫流産の症状と似ているため、自覚症状だけで判断することは困難です。

妊娠中に気になる症状がある場合は、自己判断せず医療機関に相談することが大切です。

バニシングツインが起こる原因

バニシングツインでは亡くなった胎児が子宮内で吸収されますが、その詳しい仕組みについてはまだはっきりとはわかっていません2)

一方で、胎児の発育が止まる理由としてはいくつかの要因が考えられています。

まず前提として、双子に限らず妊娠12週未満の早期流産は珍しいことではなく、全妊娠の約10~15%にみられると報告されています。その中でも最も多い原因は「胎児の染色体異常」で、受精の段階で染色体に変化があると、胎児の発育が途中で止まることがあります。

双胎妊娠の場合も、発育が止まった胎児に染色体異常があることが、バニシングツインの主な原因のひとつと考えられています。

また、胎盤の形成や血流の状態も関係している可能性があります。双子の場合は胎盤の構造や栄養の分配が複雑になるため、一方の胎児に十分な酸素や栄養が届かず、発育が止まることがあります。

さらに、日本では出生児の約10人に1人前後が体外受精などの生殖補助医療によるものと報告されています。治療方法によっては多胎妊娠となる割合が高くなり、それに伴ってバニシングツインの機会も増えると考えられています。

このほかにも、高齢での妊娠や子宮内血種、遺伝的な要因などが関係する可能性がありますが、いずれもはっきりとした原因が特定できるケースは多くありません。

バニシングツインが起こる確率

双胎妊娠の約15~36%でバニシングツインが発生していると推定されています。(研究により差があります)2)

このように数値に幅があるのは、初期の超音波検査で双子と確認される前の段階で、すでにバニシングツインが起こっているケースもあるためです。

また、三つ子以上の多胎妊娠では頻度はさらに高くなり、30~50%程度とする報告もあります。3)
体外受精などの生殖補助医療による妊娠では、20~30%程度と報告されています。1)

バニシングツインによる影響

バニシングツインが起こると「残された赤ちゃんは大丈夫なのか」「母体への影響はないのか」と不安に感じる方もいらっしゃいますが、多くのケースでは妊娠はそのまま順調に経過します。3)

基本的に、消失した胎児に対して特別な処置が必要になることはなく、通常の妊婦健診で経過をみていきます。状況によっては胎盤の状態などを確認するために、やや慎重に経過観察が行われることもあります。

残された赤ちゃんへの影響

双子の種類(膜性による分類)

残された胎児への影響は、双子のタイプによって異なります。

双胎妊娠は、胎盤や膜の構造によっていくつかのタイプに分けられます。

二卵性(それぞれ独立した胎盤と空間を持つタイプ)の場合は、残された胎児への影響は少ないとされています。3)

一卵性の場合は胎盤の血流を共有しているため、一方の胎児が亡くなると血流バランスが変化して生きている胎児に影響が及ぶ可能性があります。具体的には、脳への影響や胎児発育不全、早産などのリスクが高まる可能性があります。3)

また、研究によって結果にばらつきはありますが、もともとの単胎妊娠と比べて、早産低出生体重となるリスクがやや高くなる可能性も示唆されています。2)

母体への影響

母体への影響は、多くの場合ほとんどありません

無症状で経過することが多いですが、人によっては少量の出血や下腹部の痛み、腰痛などを感じることがあります。

また、一部の研究では、バニシングツインを経験した妊娠では、妊娠糖尿病や早産などのリスクがわずかに高くなる可能性が指摘されています。さらに、頸管無力症や産後の出血量が多くなる可能性についても報告があります。

ただし、これらはいずれも頻度が高いわけではなく、すべての方に起こるものではありません。全体としては大きな問題なく経過するケースが多いとされています。

消えずに母体内に残ることもある?

妊娠の初期(12週未満)に双子の片方が亡くなったほとんどの場合、子宮内で自然に吸収されていきます。

この段階では胎児がまだ小さいため、組織は分解されて胎盤や子宮に取り込まれ、超音波でも確認できなくなることがほとんどです。

ごくまれに、完全には消えずに小さな組織のような形で残ることもありますが、胎児の形のまま残り続けることは通常ありません。時間とともに目立たなくなっていきますが、出産後に胎盤検査で確認されることもあります。

紙様児(しようじ)として残るケース

亡くなった胎児が吸収されず、水分が抜けて平らに圧縮された状態を「紙様児」といいます。1)

これは双子妊娠の約200件に1件程度とされており、主に妊娠中期以降にみられる現象です。妊娠初期に起こるバニシングツインとは、発生の時期や経過が異なるため区別して考えられています。

寄生性双生児(※別の現象)

寄生性双生児は、双子の一方が正常に発育せず、もう一方の胎児に結合した状態で存在する非常にまれな先天的異常です。発生頻度は約50万人に1人程度とされています。

骨盤が重複し足が3本や4本ある状態で生まれるケースや、頭部のみが2つあるケース、体内に亡くなった胎児の一部を宿して生まれるケースなどが報告されています。

見た目や状態から「体内に残るケース」として紹介されることもありますが、これはバニシングツインとは発生の仕組みが異なる別の現象です。

補足:基本的には自然に吸収される

このように一部例外はありますが、一般的なバニシングツインは妊娠初期に発育が止まった胎児が自然に吸収されていく現象です。

そのため、「体内に残り続けるのでは」と過度に心配する必要はありません。

バニシングツインを防ぐ方法はあるのか?

双子の妊娠でバニシングツインの可能性を知ると、「何かできることはないのか」と感じる方もいるかもしれませんが、現在の医学では確実に防ぐ手段はありません

バニシングツインが起こるはっきりとした原因は解明されておらず、多くの場合で関係していると考えられている胎児の染色体異常も防ぐことはできないためです。

妊娠初期は胎児の発育がとても繊細な時期で、染色体に異常がある場合は自然に発育が止まることがあります。これは単胎妊娠でもみられる現象です。

バニシングツインや妊娠初期の流産は、母体の生活習慣や行動が直接の原因ではないと考えられており、そのため妊娠中や妊娠前の生活を特別に変えることで予防できるものではないとされています。

バニシングツインはNIPTに影響する可能性がある

NIPT検査_採血と分析

バニシングツインがあると、NIPT(新型出生前診断)の結果に影響する可能性があります。

NIPTは、母体の血液中にある胎児由来のDNA(cfDNA)を調べる検査です。

バニシングツインでは、消失した胎児に由来するDNAが一定期間母体の血液中に残ることがあるため、実際には残された胎児に染色体異常がない場合でも、NIPTで「異常の可能性あり」と判定されることがあります。

報告によって差はありますが、こうしたDNAは数週間から長い場合は10週以上残る可能性があるとされています。

また、性別判定にも影響が出ることがあります。たとえば、消失した胎児が男の子で、残された胎児が女の子だった場合、血液中に残ったY染色体の影響で、実際とは異なる性別が示されることがあります。

そのため、バニシングツインが疑われる場合は、NIPTを受けるタイミングや結果の見方についてあらかじめ医師とよく相談しておくことが大切です。状況に応じて、超音波検査で妊娠の経過を確認しながら検査時期を検討したり、必要に応じて羊水検査などの追加検査が案内されることもあります。

NIPTは有用な検査ですが、バニシングツインがある場合は結果だけで判断せず、妊娠経過や超音波所見とあわせて総合的に確認していくことが大切です。

まとめ

微笑む妊婦

バニシングツインとは、双子のうち一方の発育が妊娠初期に止まり、自然に吸収される現象です。

双胎妊娠の約15〜36%でみられるとされ、多くの場合は妊娠はそのまま順調に経過します。

胎児の発育が止まる原因の多くは胎児の染色体異常と考えられ、予防する方法はありません。

残された胎児への影響は双子のタイプによって異なりますが、多くは大きな問題なく経過します。

NIPTでは結果や性別判定に影響することがあるため、検査のタイミングや解釈については医師と相談することが大切です。


【参考文献】

1)Karen Carlson, et al. Vanishing Twin Syndrome. National Library of Medicine. 最終更新日2025-11-08. (参照 2026-03-30)
2)Linoy Batsry, et al. The vanishing twin: Diagnosis and implications. National Library of Medicine. 2022. (参照 2026-03-30)
3)Karen Carlson, et al. Vanishing Twin Syndrome. National Library of Medicine.2026 (参照 2026-03-30)


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