妊娠初期におこるつわりですが、吐き気や嘔吐、食欲不振など食事に関する症状が多くあります。
妊娠中はママの栄養状態がおなかの赤ちゃんの成長に影響することはもちろん、赤ちゃんが産まれた後、成人してからの生活習慣病へのかかりやすさなど生涯にわたっての健康面へも影響してきます。
とはいっても、つわりの間はまともに食事をするのも一苦労ですね。
つわりの間はどのようなことに気をつけなければいけないのか、つわりの症状別の食べ方のポイントと、妊娠中の食事で注意することを合わせてご紹介いたします!
つわりとは
つわりとは、妊娠初期に生じる吐き気や嘔吐、食欲不振などの症状をいいます。
つわりは妊婦さんの50~80%にみられるとされ、すべての妊婦さんにおこるわけではありません。
つわりの症状や強さ、時間帯、頻度、いつから始まるか、いつまで続くかなども、妊婦さんそれぞれで異なります。
「一日中なにもできないほど辛かった!」と症状が強い方もいれば、一方で全く症状がみられなかったという方もいます。
妊娠したときの症状については、「コラム:妊娠したかも?妊娠超初期の症状チェック!」もご参考にしてください。
つわりはいつからいつまで続くの?
つわりは早い人では妊娠4週目ごろから始まります。
妊娠4週目というと、生理がこず「あれ?もしかして妊娠?」と思う頃ですので、生理の遅れとともに気持ち悪いなどのつわりの症状で妊娠に気づく人もいます。
多くの人は妊娠5週目~6週目ごろからつわりが始まり、妊娠15週ごろまで続きます。
妊娠15週というのは、妊娠4ヶ月にあたります。
【妊娠期間】
ただし、つわりの期間は個人差が大きく、妊娠10週くらいで終わる人がいれば、もっと長く続く人、もしくはつわりがほとんどないという人もいます。
つわりの期間が長いことや軽いことなどが、おなかの赤ちゃんに何か悪い影響があるということはありません。
つわりの症状や原因、対処法などについてはこちらのコラムもご参考にしてください。
つわりの症状別食べ方のポイント
つわりにはいろいろな症状があり、その種類や程度は人によって異なります。
また、ずっと同じ症状ではなく日によって変わったりもします。
自分の症状に合った対処法を見つけて、できる限りツラさを軽減してつわりを乗り切りたいですね。
【よくあるつわりの症状】
- 眠気・だるさ
- においに敏感になる(においづわり)
- 食べると吐く(吐きづわり)
- ムカムカする・気持ち悪い
- 食べ物の好みが変わる
- 食べないと気持ち悪い(食べづわり)
つわりには食べることに関連する症状が多くあります。
空腹であったり、逆に満腹であったりすると気持ち悪くなる人が多いようです。
特に、血糖値が低い朝起きてすぐや疲れがたまってくる夕方などはつわりの症状が重くなりやすいため注意が必要です。
妊娠中は食べ物の好みが変わることがよくあり、妊娠前は特に好きではなかった食べ物が急に食べたくなることもあります。
つわりの間は栄養バランスまで考えていると食べられるものがなくなる可能性があります。
偏食になってしまったとしても一時的なものですので、基本的には食べたいものを食べたいときに食べればOKです。
吐きづわり
吐きづわりは、吐き気がひどく食べるとすぐに吐いてしまいます。
「おなかの赤ちゃんのためにたくさん栄養を摂らないと。。。」と無理をして食べようと思うと精神的にも負担になり、食べることが余計につらくなってしまいます。
妊娠初期はまだ赤ちゃんは小さいためそれほど多くの栄養は必要ありません。
吐いてしまってもおなかの赤ちゃんに影響はありませんので、少しずつでも口にすることが大切です。
一度にたくさん食べると胃に負担がかかり気持ち悪くなりやすいため、少量ずつ小分けにして食べるとよいでしょう。
嘔吐を繰り返していると脱水になりやすいため、水分を意識的に摂るように心掛けましょう。
野菜スープやゼリー飲料、炭酸水などがおすすめです。
水分の多いフルーツや適度に酸味のあるトマトなどもさっぱりして食べやすい人が多いようです。
また、どうせ吐いてしまうのならうどんなどのあえて吐きやすいものを食べたほうがラクかもしれません。
食べづわり
食べづわりは、おなかがすくと気持ち悪くなったりムカムカしたりするため、食べていないとツラい状態です。
空腹になると気持ち悪くなりやすいため、胃を空っぽにしないように、すぐに食べられるものを手元に用意しておくとよいでしょう。
飴やグミ、ガムなどが持ち運びもできて食べやすいのでおすすめです。
特に、空腹で血糖値が低い朝起きてすぐは気持ち悪くなりやすいタイミングです。
起きてすぐに軽くつまめるようなものをベッドサイドに置いておくとよいでしょう。
つわりの間は基本的に食べられるものを食べ、体重が増えてしまってもつわりがおさまった後に調整すればOKですが、満腹でも気持ち悪くなりやすいためドカ食いには要注意です。
とにかく食欲がすごいときは1食の量を減らして少量ずつ回数を増やして食べたり、よく噛んで食べることを意識すると、一度に食べ過ぎてしまうことを防げます。
何かを口にしていないと気持ちが悪いときは、昆布やするめなどの低カロリーで食べ応えのあるものがおすすめです。
においづわり
においづわりは、食べ物や香水の香りなどに敏感になり、今まで大丈夫だったにおいでも気持ち悪くなったり吐き気を催したりします。
炊きたてのごはんや作りたての味噌汁など、温かい食べ物は香りが立ちやすいため気持ち悪くなるという人が多いようです。
温かい食べ物は冷ましたり冷たくするとにおいが少なくなり食べやすくなります。
食事の支度がつらい場合は、においを防ぎやすい素材のマスクをするなどの工夫をし、どうしてもツラい場合は出来合いのものを買ってくる、デリバリーを頼むなどして無理をしないようにしましょう。
妊娠中の食事のポイント
妊娠中はママの健康とおなかの赤ちゃんの成長のために、妊娠前よりも多くの栄養素の摂取が必要です。
妊婦の食事摂取基準(日本人の食事摂取基準2020年版)では、妊娠前と比べてそれぞれの妊娠期に追加する基本的な推定エネルギー必要量を次のように示しています。
(妊娠前の推定エネルギー必要量は、年齢区分と身体活動レベルによって異なります)
妊娠初期 +50kcal/日
妊娠中期 +250kcal/日
妊娠後期 +450kcal/日
1日に50kcalというのは飴3~4個分、1口サイズのチョコレート1~2個分程度です。
つわりがある妊娠初期ではまだおなかの赤ちゃんが小さいためそれほど多くのエネルギーを追加する必要はありません。
しかし現代の20代、30代の日本人女性は「やせ」の割合が高く、妊娠前からのエネルギーや栄養素の摂取不足が指摘されています。
さらに、仕事などに追われているとつい外食やコンビニ弁当などが多くなりがちではないでしょうか。
「妊娠したときが食生活を見直すチャンス」ともいいますが、妊娠してからいきなり今までの食生活を変えることは難しいため、妊娠を望む場合は妊娠前から少しずつでも栄養バランスを意識した食事が心掛けられるとよいですね。
妊娠初期に積極的に摂りたい食べ物
妊娠中も妊娠前も、「バランスの良い食事」が大切なのは変わりません。
「バランスの良い食事」とは、ごはんやパンなどの炭水化物である「主食」を中心に、野菜やいも、豆類などの「副菜」でビタミンやミネラルをたっぷりと摂り、肉や魚などのタンパク質を「主菜」で十分に摂取し、不足しがちなカルシウムを乳製品や小魚などで補うというものです。
妊娠中は、基本である「バランスの良い食事」にプラスして、積極的に摂りたい食べ物があります。
【妊娠初期に積極的に摂りたい食べ物】
- 葉酸を含む食べ物
- 貧血を予防する食べ物(鉄)
- 骨を強くする食べ物(カルシウム)
- 便秘を防ぐ食べ物(食物繊維)
葉酸を含む食べ物
「妊娠中は葉酸の積極的な摂取が推奨されている」という話を聞いたことがあるかもしれません。
これは、妊娠前から妊娠初期にかけての時期に葉酸をしっかりとることで、胎児に「神経管閉鎖障害」という先天異常がおこる予防につながるためです。
神経管閉鎖障害とは、胎児が成長する過程で、神経管という管が正常に発達しないために、脳や脊髄、髄膜などが影響を受け、神経損傷や麻痺、二分脊椎や無脳症などがおこる先天異常の一種です。
胎児の神経管ができるのは受胎後およそ28日と早く、妊娠に気づくより前の段階であり、この時期に葉酸のサプリメントを摂取することにより、神経管閉鎖障害がおこるリスクを低減させることができます。
葉酸はブロッコリーや白菜、さつまいもなどに多く含まれています。
貧血を予防する食べ物
日本人女性は妊娠前から鉄が不足している人が多いですが、妊娠すると循環血液量の増加などにより、さらに多くの鉄を摂取する必要があります。
鉄には動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と、緑黄色野菜などに含まれる「非ヘム鉄」があります。
非ヘム鉄は吸収されにくいのですが、動物性のタンパク質やビタミンCと一緒に摂ることで吸収率がアップします。
動物性食品であるレバーは鉄分が豊富ですが、ビタミンAも多く含まれており、過剰摂取すると胎児に先天奇形がおこる可能性が高くなるため、食べる量には注意が必要です。
鉄を多く含む植物性食品としては、ほうれん草や小松菜、さつまいもなどがあります。
骨を強くする食べ物
胎児のからだをつくったり、出産後に授乳したりすると、ママの体からカルシウムが失われます。
カルシウムは妊娠初期に特に多く必要というわけではありませんが、日本人女性のカルシウム摂取量は少なく、十分に摂取できていない人が多いため意識的に摂りたい栄養素の一つです。
カルシウムは乳製品のほか、緑黄色野菜や豆類、小魚などに多く含まれます。
牛乳やヨーグルト、小松菜や納豆のほか、骨ごと食べられるサバ缶などもおすすめです。
便秘を防ぐ食べ物
妊娠中は腸の働きが悪くなるため、便秘になりやすくなります。
とくにつわりの時期は食生活が偏りがちなために便秘になるという人も多くいます。
便秘を防ぐ食物繊維と水分の摂取を心掛けましょう。
食物繊維はバナナやきのこなどに多く含まれます。
妊娠中は避けた方がいい食べ物
妊娠したらアルコールはNGというのは周知だと思いますが、その他にも妊娠中は極力避けた方がいい食べ物がいくつかあります。
【妊娠したら極力避けた方がいい食べ物】
- アルコール
- 生もの
- 非加熱の加工食品
妊娠中は免疫が落ちるため、妊娠前は大丈夫だった食べ物でも注意が必要です。
免疫が落ちていると細菌やウイルスに感染しやすく、流産や早産のリスクになるうえに、おなかの赤ちゃんにも感染すると障害が残る可能性があります。
アルコール
妊娠中の飲酒がなぜダメかというと、母子ともに様々な悪影響を及ぼす可能性があるからです。
妊娠中の飲酒により、妊娠高血圧症候群や早産、癒着胎盤などのリスクが高くなります。
アルコールは胎盤を通しておなかの赤ちゃんにも影響します。
低体重などの発育不全や顔を中心とする形態異常、脳の障害による多動学習障害などといった「胎児性アルコール症候群」になる可能性が高くなります。
これらは飲酒量や飲酒時期、摂取するアルコールの種類に限らず起こる可能性があります。
「少量なら大丈夫」ということはなく治療法もありませんので、妊娠がわかった時点で禁酒しましょう。
生もの
生肉や生魚には寄生虫がいる可能性があります。
ローストビーフやレアステーキなどの生肉にはトキソプラズマという寄生虫がいる可能性があり、生のアジやイワシなどの魚にはアニサキスという寄生虫がいる可能性があります。
お肉は必ず火を通したものをいただくようにして、お寿司やお刺身などの生魚を食べる際は少量にとどめましょう。
非加熱の加工食品
生ハムやスモークサーモン、ナチュラルチーズなどの非加熱の加工食品は、リステリア菌という食中毒菌が増殖している可能性があります。
妊娠中は免疫力が落ちているため感染しやすく、おなかの赤ちゃんにも影響が出る可能性があります。
加熱殺菌済みのハムやソーセージ、加熱したチーズは食べても大丈夫です。
妊娠中は注意が必要な食べ物
妊娠中はさまざまな食品をバランスよく食べることが基本です。
からだにいいと言われている食べ物でも、妊娠中は過剰摂取による悪影響が心配される食べ物があります。
【妊娠したら注意が必要な食べ物】
- ビタミンAを多く含む食べ物
- 水銀を多く含む可能性がある食べ物
- 塩分が多い食べ物
ビタミンAを多く含む食べ物
鉄分の多いレバーや、ビタミンB群の豊富なうなぎは一見すると妊婦さんには良さそうな食べ物ですが、食べる量には注意が必要です。
これらはビタミンAが多く含まれており、過剰摂取により胎児の先天奇形が増加することが報告されています。
ビタミンAは皮膚や粘膜の健康を保つ働きがあるため必要な栄養素ですが、妊娠を考えている人や妊娠初期の人は過剰摂取に気をつけましょう。
水銀を多く含む可能性がある食べ物
ミナミマグロやメカジキなど一部の大型の魚介類には水銀が多く含まれている可能性があります。
水銀を多く摂り過ぎると、おなかの赤ちゃんに影響を与える可能性が指摘されているため、食べる量には注意が必要です。
塩分が多い食べ物
外食やコンビニ食、加工食品などの食事が多いと、思いのほか塩分を摂取している可能性があります。
妊娠中はただでさえむくみやすいため、塩分の摂り過ぎには気をつけましょう。
まとめ
つわりがある時期は、吐いてもいいので食べられるものを食べるということが基本です。
それと同時に、妊娠中は避けた方が良かったり気をつけた方が良い食べ物もありますので、妊娠が判明したら、もしくは妊娠を考えている時点で確認しておきたいですね。
つわりが落ち着くときは必ずやってきますので、元気な赤ちゃんに会えることを楽しみにがんばって乗り切りましょう!
【参考】