つわり(妊娠悪阻)を重症化させないために

点滴を受ける妊婦

重症化したつわりを妊娠悪阻(にんしんおそ)といい、日常生活に支障が出たり入院が必要になることもあります。

妊娠初期におこるつわりは多くの妊婦さんが経験し、嘔吐や食欲不振などが主な症状ですが基本的に病院での治療は必要ありません。

ここでは、妊娠悪阻とつわりの違いや、つわりを重症化させないためにできることなどについてご紹介しています。

妊娠悪阻とは

妊娠悪阻

妊娠悪阻(にんしんおそ)とは、食事や水分補給ができないほどつわりが重症化した状態のことで、悪心(胸のむかつきや吐き気)が続き嘔吐を繰り返すことにより、栄養代謝障害脱水症状体重減少などを引き起こし、さらに症状が悪化すると脳神経障害など多臓器不全の状態に陥る可能性もあります。

妊娠悪阻は全妊婦さんの0.5%前後におこっています。

つわりや妊娠悪阻がおこる原因は実ははっきりとは分かっていませんが、妊娠したことによりホルモンバランスが変化し自律神経が乱れるため、女性ホルモンであるプロゲステロンが増加することで体内にガスがたまりやすくなり吐き気や嘔吐を引き起こす、母体が胎児を異物と判断して拒否反応をおおすため、などといわれています。

また、妊娠悪阻は社会的ストレスや夫婦間の不和などの心理的ストレスも影響するともいわれています。

つわりと妊娠悪阻の違い

つわりで吐き気がある妊婦

つわりとは、妊娠初期におこる吐き気や嘔吐、食欲不振などの症状のことをまとめて呼びます。

【つわりの主な症状】

  • 吐き気、嘔吐
  • 食欲不振
  • 食べ物の好みが変わる
  • においに敏感になる
  • 眠気が強い
  • イライラしやすい
  • 頭痛

つわりの時期は妊娠5週頃から妊娠16~18週頃まで続くことが一般的ですが、つわりの時期や症状の程度は個人差が大きいのも特徴で、一概にはいえません。

つわりは妊娠したすべての人におこるわけではなく、全妊婦の50~80%に見られます。

つわりと妊娠悪阻の違いは明確ではありませんが、5%以上の体重減少があったり、脱水症状がある場合は妊娠悪阻として治療が必要になります。

つわりは嘔吐を繰り返す状態であっても、食事からカロリーや水分を摂取できており体重が減少していない場合は基本的には治療の必要はありません。

つわりについては、「コラム:つわりの症状別食べ方のポイント!」もご参考にしてください。

妊娠悪阻の症状

妊娠悪阻の症状

妊娠悪阻の症状は繰り返す嘔吐と悪心のため食事や水分補給ができないことでおこる、脱水や栄養代謝障害です。

【妊娠悪阻の症状】

  • 極端に繰り返す嘔吐
  • 脱水
  • 尿中ケトン体陽性
  • 5%以上の体重減少

嘔吐を繰り返すことで体に必要な水分やミネラル、その他の栄養素が失われ、飲食ができないことで脱水と体重減少、めまいや頭痛、低体温などがおこります。

体に必要なエネルギーを摂れていないと体脂肪を分解し尿中にケトン体が出るため、尿中ケトン体は栄養状態の評価に用いられます。

尿中ケトン体が陽性の場合は栄養状態が悪いということになります。

さらに重症化すると内臓などにも影響を及ぼし、脳神経障害による健忘や幻覚などがおこり後遺症が残る可能性や命に関わるような可能性もあります。

【重症化した妊娠悪阻の症状】

  • 電解質異常
  • 一過性甲状腺機能亢進症
  • 意識障害
  • 肝機能障害
  • 腎機能障害
  • 脳神経障害:ウェルニッケ脳症

妊娠悪阻が重症化すると、体の電解質のバランスが崩れさらに進行すると黄疸など肝機能障害のほか、腎機能障害、脳神経障害など全身に影響を及ぼします。

妊娠悪阻の重篤な合併症として、ビタミンB1の不足によるウェルニッケ脳症が知られており、意識障害や小脳性運動失調などがおこり、逆行性健忘や見当識障害、作話などの後遺症が残る可能性があります。

ウェルニッケ脳症は母体死亡につながる恐れもあり、発症予防のためにビタミンB1の輸液投与が必須です。

妊娠悪阻の診断

妊娠悪阻の診断には問診および以下の検査を行います。

【妊娠悪阻の検査】

  • 脱水の有無
  • 血液検査
  • 尿検査:尿中ケトン体
  • 腎機能検査

血液検査により電解質異常を調べます。

また、悪心・嘔吐がおこる妊娠悪阻以外の疾患が隠れていないかも検査を行います。

胞状奇胎や消化器疾患、腸閉塞や妊娠悪阻によるものではないバセドウ病などの甲状腺機能亢進症などが当てはまります。

つわりを重症化させないために

妊娠悪阻を防ぐためには、つわりを重症化させないよう脱水と栄養不良を防ぐことが大切です。

【つわりを重症化させない対策】

  • 心身の安静と休養
  • 食事は小分けにしてちょこちょこ食べる
  • 水分を意識して摂る

ご家庭や職場でのストレスが多い妊婦さんに妊娠悪阻が多く発症するとされています。

お仕事が忙しいとなかなか難しいのかもしれませんが、できる限り無理をせずよく寝て、ゆっくり過ごせる環境を作りましょう。

食事は1日3食にこだわらず、食べれるものを食べれそうなときにちょこちょこ口にしましょう。

妊娠初期はまだおなかの赤ちゃんは小さくそれほど多くの栄養を必要としません。

「赤ちゃんの分も食べないと。。。」と無理をして食べる必要はありませんので、ご自身が栄養不足にならない程度に少しでも口にすることが大切です。

一度にたくさん食べると胃に負担がかかり気持ち悪くなりやすいため、小分けにして食べる方がよいでしょう。

脂肪の多いものや刺激の強い食べ物は避けましょう。

嘔吐を繰り返していると脱水になりやすく、食事の量が少ないと食べ物からの水分摂取も少なくなりますので、意識して水分を摂るよう心掛けましょう。

スポーツドリンクや野菜スープなどが水分とともにミネラルも摂取できておすすめです。

炭酸水なら飲めるという人も多いようです。

それでもどうしても食事が摂れなかったり水分も受け付けなくなったら、すぐに受診してください。

妊娠悪阻の治療

点滴を受ける妊婦

妊娠悪阻の治療では入院が必要なこともありますが、しっかり治療をおこなえば重篤な合併症がない限りおなかの赤ちゃんの成長に影響はありません。

食べ物は少量を頻回摂取するなどの食事指導を行っても改善しない場合は輸液にて必要な水分や電解質、エネルギーなどを補給します。

【妊娠悪阻の治療】

  • 輸液
  • 経口摂取の制限
  • 鎮吐剤
  • 人工妊娠中絶

経口摂取ができない場合は、悪心や嘔吐が軽くなるまで胃を安静に保つことが大切なため、妊娠悪阻が重症の場合は経口摂取を制限して輸液で体に必要な成分を補充していきます。

輸液にて水分および不足している電解質を補い、必要に応じて高カロリー輸液でエネルギーを補います。

長期にわたって経口摂取ができない場合はウェルニッケ脳症を予防するためにビタミンB群の投与も行います。

十分な輸液を行えばほとんどの場合は比較的早く嘔吐・悪心は軽快しますが、それでも強い嘔吐が続く場合は食道破裂などの合併症がおこる可能性があるため、鎮吐剤や鎮静剤を用いることがあります。

しかし妊娠初期に薬物治療を行うことはおなかの赤ちゃんに先天異常などがおこるリスクが高くなるため慎重に行われます。

妊娠悪阻の原因は、妊娠していることです。

治療を行なっているにもかかわらず強い嘔吐や体重減少が続き、多臓器不全になると母体の命にもかかわる危険な状態になる可能性があります。

このような場合は人工妊娠中絶によって妊娠を終わらせることも選択肢の一つです。

しかし、入院によって十分に管理されている場合は重篤な合併症がない限り中絶とすることは極めてまれです。

まとめ

眠っているあかちゃん

嘔吐や食欲不振などのつわりの症状は多くの妊婦さんにおこりますが、食事や水分補給ができないほど重症化した妊娠悪阻は全妊婦さんの0.5%前後におこっています。

0.5%というと少ないようにも感じますが、200人に1人の確率、2021年の出生数84万人で単純計算すると年間に4,200人の妊婦さんが妊娠悪阻になっています。

妊娠期間中はただでさえたくさんの心配事やストレスがあります。

できる限り無理をせず、ゆったり過ごして元気な赤ちゃんと対面してくださいね。


【参考】

妊娠悪阻にまつわる諸問題/日産婦誌50巻6号

妊娠悪阻の治療は?/日産婦誌60巻1号


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