ブライダルチェックは、なにも病気の心配がある人だけが受ける検査ではありません。
健康診断を毎年しっかり受けていて健康には自信のある方でも、健康診断では調べていない項目で自覚症状がない場合もあるかもしません。
ブライダルチェックと聞くと何となく重苦しい印象がありますが、ご自身にとってもパートナーにとっても、これから望む赤ちゃんにとっても検査を受けておくことは安心につながります。
今回は、ブライダルチェックについて、検査項目や内容、妊娠に影響する性病などの病気についてご紹介していきます!
ブライダルチェックとは
ブライダルチェックとは結婚前や妊活前に行う検診のことをいいます。
妊娠したいと思ったら、赤ちゃんのためにもご自身の身体のためにも一度調べてみるとよいでしょう。
ブライダルチェックでは、主に次のことについて調べます。
- 自分が健康であるか?
- 妊娠できる力があるか?
- 妊娠に影響する病気がないか?
ご自身に高血圧などの生活習慣病や、貧血など何らかの身体の問題があると、妊娠中や出産時のトラブルの原因にもなります。
定期的に健康診断を受けていない方は、まずはご自身の健康チェックから始めると良いでしょう。
不妊の原因ともなる女性ホルモンの乱れや子宮の異常などがあると、妊活をしていてもなぜかなかなか授からない、ということも起こり得ます。
もしかして不妊?と思ってから検査や治療を行なっていると、家族計画が大きくずれてしまうこともあります。
これらは自覚症状がない場合もありますので、一度チェックしておくと安心でしょう。
風疹などの感染症に対する抗体や梅毒などの性感染症について調べておくことによって、胎児へ感染するリスク、先天性異常などのリスク、流産のリスクを減らすことができます。
こんな方におすすめ!
生理不順や貧血などのように自覚症状があれば分かりやすいですが、年齢とともに起こりやすくなるトラブルや、自覚症状がなく性病に感染していた、なんてこともあるかもしれません。
風疹や麻疹などの予防接種を受けたことがあるか分からないという方もいるでしょう。
このような方は、ブライダルチェックを受けておくと安心です。
- 生理不順がある方
- 極度の肥満や痩せすぎの方
- 心臓や腎臓などに持病がある方
- 35歳以上の方
- 貧血の方
- 風疹や麻疹などの予防接種を受けていない方
- 会社や地域の健康診断をほとんど受けていない方
ブライダルチェックの検査内容
ブライダルチェックの内容や金額はクリニックによって異なりますが、受けたい検査だけを単体で受けられたり、目的別に子宮がんなど婦人科系の検査をセットにしたもの、性病の検査をセットにしたもの、オプションとして各種抗体検査やホルモン検査を受けられるなど多種多様です。
ブライダルチェックの検査項目としては、以下のようなものがあります。
- 問診・内診
- 血液検査
- 超音波検査
- 子宮内膜症検査
- 性感染症検査(梅毒、クラミジア、淋菌、HIVなど)
- 風疹抗体検査
- 各種がん検査(子宮がん、乳がん、卵巣がんなど)
- 女性ホルモン分泌検査
- 甲状腺機能検査
- 膠原病検査
- 貧血検査
- 各種ホルモン検査(甲状腺ホルモン、下垂体ホルモン)
- 肝炎ウイルス検査
血液検査は、健康診断と同じように肝機能や血中脂質などを調べる基本検査の他に、抗体の検査や性病の検査などでも行われます。
問診で月経不順が分かればホルモン検査をするなど、問題がありそうな項目について追加で検査を行います。
妊娠に影響のある病気
母子ともに健康で元気に出産に望めるよう、妊娠前にチェックをしておきたい病気があります。
ご自身の身体に問題があれば治療を行ったり、抗体がなければ予防接種を受けるなど対策を行うことができます。
妊娠・出産は女性の身体にとって大きな負担となります。
まずはご自身が健康であることが大切です。
また、お腹の赤ちゃんにうつる心配がある感染症や、流産・難産になる可能性が高くなる病気、奇形などの先天異常を引き起こす可能性が高くなる病気などはしっかり対策をとって後悔のないようにしたいですね。
妊娠に悪影響を及ぼす可能性がある病気としては、以下のようなものがあります。
- 子宮頸がん
- 子宮筋腫
- 子宮内膜症
- 風疹
- 乳がん
- クラミジア感染症
- 梅毒
- HIV
- B型、C型肝炎
- 甲状腺機能の異常
- 膠原病
子宮頸がん
子宮頸がん・子宮体がんは、女性がかかるがんで最も多く、特に30代後半女性の発症率が高くなっています。
子宮頸がんは子宮の入口に、子宮体がんは子宮内膜にできるがんです。
早期発見ができれば治療可能ですが、進行すると子宮を摘出しなければならないかもしれません。
子宮頸がんは性交渉などによりHPVというウイルスに感染することでおこります。
また、喫煙によっても子宮頸がんの発生率が高くなります。
子宮頸がんはワクチン接種により予防が可能です。
子宮筋腫
子宮筋腫は子宮の筋組織にできる良性の腫瘍で、成人女性の4人に1人の確率でもっています。
基本的には経過観察ですが、腫瘍の場所によっては流産や早産の原因にもなります。
また、子宮の出口近くに出来た場合は分娩に影響しますので、帝王切開になる可能性が高くなります。
子宮内膜症
子宮内膜症とは子宮内膜と同じ組織が子宮以外の場所で増えてしまうことで、20~30代の女性で多く発症します。
月経痛がひどい場合は子宮内膜症を疑ってみたほうがいいかもしれません。
不妊の原因にもなります。
子宮に関係する病気は、自覚がなく妊娠初期の検査で初めて発覚することも多くあります。
風疹
風疹は、風疹ウイルスに感染することによっておこります。
妊娠中に感染するとおなかの赤ちゃんの心臓や脳に奇形が生じたり、聴力障害や白内障、発達障害などの先天異常がおこる可能性が高くなります。
母子感染の可能性があり、流産のリスクも高くなります。
妊娠前の検査で風疹の抗体がない、または低い場合はワクチン接種で感染を防ぐことができます。
予防接種後は2か月間ほど避妊が必要です。
妊娠すると予防接種が受けられないため、妊娠前に調べておくのがよいでしょう。
乳がん
乳がんは近年発生数が増えており、20代の若い世代でも可能性があります。
乳がんになる原因には、女性ホルモンが関わっています。
また、飲酒や運動不足といった生活習慣の乱れも乳がんの発生リスクを高めるといわれています。
乳がん検診に使われるマンモグラフィはX線検査のため、妊娠前に受けておく必要があります。
クラミジア
クラミジアとは性行為による細菌感染で起こる性感染症です。
日本で最も多い性感染症で、20代の20人に3人が感染しているという報告もあり、無症状の人も多く知らないうちに感染している可能性もあります。
クラミジアに感染していると、不妊や異常妊娠の原因にもなります。
流産や早産になる可能性もありますし、母子感染のリスクもあります。
服薬で治療が可能です。
梅毒
梅毒は性行為による細菌感染で起こる性感染症です。
最近では感染者が増えているため、パートナーが変わる時に気をつけたい感染症の一つです。
感染力が高いため、ママからおなかの赤ちゃんへの感染率は60~80%ともいわれています。
母子感染すると、赤ちゃんの神経や骨などに異常をきたす可能性があります。
また、母子感染のリスクだけでなく、流産や早産になる可能性も高くなります。
抗生物質によって治療が可能なため、早期発見が大切です。
甲状腺機能異常
甲状腺は、甲状腺ホルモンを分泌して体のバランスを保っています。
甲状腺の機能異常は30歳前後の女性に多くおこりますが、10~20代でもよく見られます。
バセドウ病のような甲状腺機能亢進や、橋本病のような甲状腺機能低下があると、月経異常や不妊・不育症や、流産の原因になることもあります。
膠原病
膠原病(こうげんびょう)とは、皮膚や筋肉、血管、関節、骨など全身に炎症を起こす病気の総称のことです。
特に20~30代の女性で多く発症する全身性エリテマトーデス(SLE)は、発熱や全身の炎症を引き起こし、流産や早産のリスクが高くなります。
膠原病でも妊娠は可能ですが、症状の管理が必要ですので、お医者さまと連携を取ることが重要です。
男性もブライダルチェック
ブライダルチェックは何も女性に限ったものではありません。
ブライダルチェックの目的は、「結婚や妊活前に検査を行い、自分の健康チェック、生殖能力の確認、妊娠に影響する病気がないか?」を調べることです。
不妊の多くは女性側の問題だと思われがちですが、実はその約半数は男性側にも原因があります。
男性のブライダルチェックでは、女性と同じような風疹抗体検査や性感染症検査などに加えて、精液検査を行い精子の能力を確認します。
性病は気づかないうちに感染している可能性もあります。
知らずにパートナーへうつしてしまわないよう、カップルでの検査をおすすめします。
不妊については、「コラム:不妊の原因とは?女性側と男性側の原因と検査方法や不妊治療について」もご参考にしてください。
どこで受けられるのか?
ブライダルチェックはどこで受けられるのでしょうか?
婦人科や内科がある医療機関や、人間ドックや不妊治療などを専門で行なっているクリニックで検査を受けることができます。
男性の場合は泌尿器科などで行なっている場合もあります。
ブライダルチェックの費用と助成金
ブライダルチェックの費用は、検査を受ける医療機関によって検査内容も設定金額も異なるため一概には言えませんが、およそ1万円~3万円程度のようです。
もちろんオプションで検査項目を追加すると費用は高くなりますので、ご自身に合ったメニューがある医療機関を探しましょう。
なお、ブライダルチェックは自費診療となります。
検査の結果、見つかった病気を治療する場合は保険適用になります。
子宮頸がんや風疹抗体検査、及び風疹の予防接種など自治体からの助成制度があるものもありますので、詳しくはお住まいの地域の自治体のホームページをご参考にしてみてください。
いつ受けるべき?
ブライダルチェックはいつ受けるのがよいのでしょうか?
結婚前のタイミングであれば、結婚する3~4ヶ月前までには受けておきたいところです。
検査の結果なんらかの疾患が見つかれば治療に時間がかかるかもしれませんし、結婚前は式や新居の用意などなにかと忙しくなりますので、余裕を持って受けておいた方がよいでしょう。
妊活のタイミングであれば、思い立ったときに受けるのがよいでしょう。
風疹のワクチンを接種した場合、2か月は避妊が必要となります。
もし不妊症だった場合でも、早くに分かった方が早くに治療を開始することができます。
不妊治療には思いのほか時間がかかる可能性あります。
できれば結婚前に一度検査をしておいた方が、子どもが欲しいと思ったタイミングで焦らずにすむかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
自覚症状もないのに検査を受けにいくことは少々めんどうに感じるかもしれませんが、後々のことを考えると結婚前に一度受けておくとよいかもしれません。
性感染症の多くは、早めに服薬治療を行えば2週間程度で治すことができます。
すべての病気は早期発見・早期治療が大切です。
妊娠中や出産時のトラブルを避けるためにも、検討されてみてはいかがでしょうか。