
「2024年の出生率が過去最低を記録した」というニュースが話題になりました。
「いつかは子どもを」と思っていても、年齢、仕事、パートナーとの関係、そして将来の不安など、妊娠・出産にはさまざまなハードルがあります。
かつては当たり前だった「3人きょうだい」も、今では珍しい存在です。
このコラムでは、出生率の変化から見える時代の移り変わりと、「産む・産まない」を自由に選べる社会について、一緒に考えていきましょう。
2024年の出生率|過去最低を更新した?

厚生労働省が発表した「令和6年(2024) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」1)によると、2024年の合計特殊出生率は1.15で、前年(2023年)の1.20を下回り、過去最低を更新しました。
また、出生数も68万6,061人と、統計開始以来初めて70万人を下回り、こちらも過去最低を記録しています。
出生率とは?1.15って実際どんな数字?

出生率にはいくつか種類がありますが、少子化の議論でよく使われるのが「合計特殊出生率」です。
これは、1人の女性が一生のうちに平均して何人の子どもを産むかを示す指標です。
なお、「出生率」という言葉は、1年間の出生数を人口1,000人あたりで表す「粗出生率」を指すこともありますが、本記事では合計特殊出生率に基づいて解説します。
人口を維持するためには2.07程度が必要とされていますが、2024年の日本の出生率は1.15と大きく下回っており、深刻な少子化状態にあります。
特に出生率が1.3未満になると「超少子化」と呼ばれ、子ども世代の人口が親世代の半数以下になるペースで人口が減少していくことになります。これは、社会保障や労働力など、国の持続性に大きな影響を及ぼします。
また、国際的に見ても日本の出生率は極めて低い水準にあり、G7各国と比較すると、フランス(約1.8)、アメリカ(約1.7)、イギリス(約1.6)などが比較的高い水準を維持しています。
日本の出生率、この30年でどれだけ変わった?
現在の日本では出生率が過去最低を更新し、深刻な少子化が進んでいます。
しかし、ほんの数十年前までは「3人きょうだい」や「4人きょうだい」が珍しくありませんでした。
この30年間で、日本の出生率はどのように変化してきたのでしょうか?
1985~2024年の出生率推移まとめ
1990年代、日本の出生率は1.5前後で推移していました。
しかし、2005年には「1.26ショック」と呼ばれる当時の過去最低を記録し、少子化が国家レベルでの重要課題として認識されるようになりました。
その後は一時的に回復傾向を見せたものの、2011年の東日本大震災や、近年の新型コロナウイルス感染症の影響などにより再び減少に転じ、2024年にはついに過去最低の1.15を記録しました。


このように、日本の出生率は30年間で0.35ポイント以上も低下しており、社会構造やライフスタイルの大きな変化がうかがえます。
昔は当たり前?3人きょうだいが多かった理由

かつての日本では、3人きょうだい以上の家庭も珍しくありませんでした。その背景には、当時の社会や価値観、生活スタイルがあります。
- 経済と雇用の安定:1990年代以前は年功序列や終身雇用が一般的で、将来への不安も今ほど大きくありませんでした
- ライフスタイル:専業主婦家庭が多く、子育てに専念できる環境が整っていました
- 価値観:「子どもは多い方がいい」「跡取りが必要」といった考えが根強く、大家族が理想とされる傾向がありました
- 地域の支え合い:親戚やご近所が子育てに協力してくれる「地域コミュニティ」の力が今よりも強く働いていました
一方で現在は、共働き世帯の増加、教育費や住宅費の負担増、非正規雇用の増加など、経済的な不安が大きくなっています。
また、晩婚化や出産年齢の上昇も進み、「ひとりっ子」を選択する家庭も増えています。
出生率が下がり続ける原因は?
日本の出生率が下がり続けている背景には、社会構造の変化や個人の価値観の多様化といった、30年前とは大きく異なる時代の流れがあります。
特に、晩婚化や共働き世帯の増加、将来への経済的不安などが複雑に絡み合っています。
ここでは、現代の30代女性が直面している「産みづらさ」の背景にある原因を、社会的な視点と個人の声の両面から探っていきます。
30年で大きく変わった結婚観と働き方
出生率低下の背景にある、30年前との主な違いは以下の通りです。
- 晩婚化・非婚化の進行
- 1990年代:女性の平均初婚年齢は約26歳
- 現在(2023年):女性は約30歳、男性は約31歳
- 結婚自体を選ばない人も増加している
- 共働き世帯の増加
- 1990年代:専業主婦世帯が主流
- 現在:共働き世帯が全体の7割以上
- 保育園不足や育児と仕事の両立の難しさが課題
- 経済的不安の拡大
- 非正規雇用の増加、長引く景気不安
- 教育費・住宅費の高騰
- 「1人育てるのに約2,000万円かかる」といった情報が心理的負担に
- 社会的サポートの不足感
- 妊娠・出産・育児を支える制度や職場環境がまだ不十分
- 子育てを「家庭の自己責任」とされやすい社会風土
30代女性が直面する出産へのハードル

現在の30代女性が抱える「産みづらさ」は、個人の努力だけでは解決しにくい、次のような要因によって複雑化しています。
- キャリアと出産の両立の難しさ
- 出産によるキャリアの中断を懸念
- 「時短勤務」「産休・育休後の復職支援」などが不十分な職場も多い
- 妊娠できるかどうかへの不安
- 女性の妊娠しやすさ(妊孕力)は30代から徐々に低下
- 不妊治療の必要性を感じる人が増えている
- タイミングを逃し、高齢出産のリスクに直面するケースも
- パートナーとの意識差・ライフプランのズレ
- 結婚や出産に対する価値観が多様化
- 「子どもが欲しい時期」が合わずに迷うケースも
- 情報過多によるストレス
- SNSやネットから膨大な情報を得られる反面、逆に不安を強めてしまうことも
- 「理想のママ像」や「成功した出産体験談」へのプレッシャー
- 自分らしい生き方を尊重する風潮
- 趣味や仕事、自由な生活を優先したいと考える人が増加
- 「いつか産みたいけど、今じゃない」と考え続けたまま、選択の機会を逃してしまうケースもある
これらの課題は、どれも個人の努力だけでは解決が難しく、社会全体で解決策を模索していく必要があります。
出生率が下がると日本はどうなる?未来予測と影響

出生率の低下は、単に「子どもが少なくなる」という問題だけでは語れません。
今後の日本では、人口の減少とそれに伴う社会の変化が避けられないと予測されています。
とくに、年金・医療制度の維持、労働力不足、地域社会の衰退など、あらゆる分野に影響が及ぶとされており、これは将来世代だけの問題ではありません。
「今すぐに困ることではない」と感じるかもしれませんが、現在の30代・40代が高齢者になる頃には、その影響を肌で感じることになるでしょう。
人口減少・年金・労働力…将来起こること
少子化が進むことで、日本社会には以下のような変化が現実化していくと考えられています。
- 人口減少と高齢化の加速
- 日本の人口は2010年をピークに減少傾向へ。
- 2060年には総人口が1億人を下回ると予測されており、65歳以上が約4割を占める見通し。
- 社会保障制度の持続困難
- 働く世代が減少することで、年金・医療制度の維持が難しくなる。
- 年金の支給開始年齢の引き上げや、医療費自己負担の増加なども懸念されている
- 労働力不足と経済縮小
- 生産年齢人口(15〜64歳)の減少により、介護・医療・物流など生活を支える業種で人手不足が深刻化。
- 労働力の減少はGDPの縮小につながり、経済全体の活力を下げる要因に。
- 地方の衰退と地域インフラの消滅
- 若年人口の減少により、学校・病院・店舗など地域インフラの維持が困難に。
- 特に地方では、”消滅可能性都市”と呼ばれる自治体の数が今後さらに増加すると予測されている
子どもを産み育てる選択に不安を感じる理由
少子化の背景には社会全体の構造的な変化だけでなく、個人が「産み育てること」に不安を感じる状況も深く関係しています。
- 経済的負担の重さ
- 教育費・養育費・住宅費など出費が多く、子育てには莫大な費用がかかるという情報が溢れている
- 将来の経済的な見通しが不透明な中で、安心して子どもを育てられるかという不安がのしかかる
- 非正規雇用の増加や賃金の伸び悩みも将来設計を立てにくくしている
- 育児と仕事の両立の難しさ
- 待機児童や保育施設の不足、長時間労働といった問題が、共働き家庭にとって大きな壁に。
- 家族や地域のサポートが得にくく、「ワンオペ育児」状態になりやすい
- ライフスタイルの多様化と価値観の変化
- 「結婚=出産」という価値観は薄れ、子どもを持たない選択も一般的になってきている
- その一方で、「産みたいのに産めない人」が支援を受けづらくなっている面もある
- 妊娠・出産に対する身体的・心理的な不安
- 30代後半から妊娠しにくくなり、不妊治療を受ける人も増加傾向にある
- 「今のうちに産まなければ」という焦りと、環境とのギャップが精神的ストレスを生んでいる
「将来の日本のために子どもを産むべき」という声が聞かれる一方で、個人の不安や迷いを置き去りにしてはいけません。
一人ひとりの意思を尊重し、安心して出産・育児ができる社会を築くことが、今求められています。
少子化でも「産みたい」と思える社会へ|今できること

少子化が進む中で、「子どもを産むのが不安」という声が増えている一方で、出産や子育てに前向きな気持ちを持っている人もたくさんいます。
しかしその気持ちを実現するためには、「産みたい」と思ったときに安心して行動に移せる環境や正しい情報へのアクセスが必要です。
経済的な不安、仕事との両立、妊娠に関する体の不安、子どもの健康や将来への懸念――そうした悩みをひとりで抱え込まず、社会全体で支え合える仕組みづくりが求められています。
妊娠・出産を考えるなら知っておきたいこと
これから妊娠や出産を考える際に、ぜひ知っておきたい重要なポイントをご紹介します。
- 妊娠の適齢期と妊娠力(妊孕力)の低下
- 女性の妊娠しやすさ(妊孕力)は、30代後半から徐々に低下し始める。
- 35歳を過ぎると流産や染色体異常のリスクも上昇するため、年齢に応じた知識と準備が大切。
- プレコンセプションケア(妊娠前の健康管理)
- 妊娠を考える前から、自分の体の状態を把握し、必要なケアを行うことが重要。
- たとえば、定期的な健康診断、婦人科受診、葉酸の摂取などが安全な妊娠・出産につながる準備とされている。
- パートナーとの話し合い
- 妊娠・出産は女性一人で抱えるものではない。
- ライフプラン、仕事、家事や育児の分担について、パートナーと前向きに話し合うことが大切。
- 経済的な計画
- 出産や育児にはまとまった費用がかかる。
- 教育費・生活費・医療費などについて、事前に計画を立てておくことが安心につながる。
- 妊娠・出産に関する支援制度の確認
- 妊婦健診の補助、出産育児一時金、育児休業給付金など、利用できる公的支援は多数ある。
- 自治体や企業によって異なる場合もあるため、早めに調べておくことが重要。
NIPTなど、安心して妊娠・出産できる選択肢
高齢出産が増える中、妊娠や出産に対する不安を和らげるためのひとつの手段として、「出生前検査」が注目されています。
中でもNIPT(新型出生前診断)は、母体への負担が少なく、早期に染色体異常のリスクを知ることができる検査です。
- NIPTとは?
- 妊婦さんの血液から胎児の染色体異常リスクを調べるスクリーニング検査です。
- ダウン症候群(21トリソミー)など、主な染色体異常について高い検出率が報告されています。
- NIPTのメリット
- 採血のみで受けられる非侵襲的検査で、流産のリスクはありません。
- 絨毛検査や羊水検査と比べて安全性が高く、早期に情報が得られることで、出産に向けた選択や準備に役立ちます。
- 注意点と選び方
- NIPTはあくまでも「確定診断」ではなく、リスクを調べるスクリーニング検査です。
- 結果によっては追加の検査(確定診断)が必要になることもあります。
- 検査を受けるかどうかは個人の自由ですが、不安なときこそ正しい情報を得ることが大切です。
- 不安なときは相談を
- 妊娠や出産、不妊治療に関する不安は、一人で抱え込まず、医師や専門のカウンセラーに相談することをおすすめします。
妊娠や出産に不安を感じるのは自然なことです。大切なのは、「知ること」「選べること」「相談できること」。
そうした環境が整っていれば、誰もがもっと安心して「産みたい」という気持ちを実現できるはずです。
まとめ
2024年の出生率は過去最低の1.15となり、この30年で日本の家族構成や子どもを持つことへの意識は大きく変わりました。
かつては3人きょうだいが一般的でしたが、いまは出産を希望しても難しさを感じる人が増えています。
晩婚化、経済的不安、妊娠・出産に関する身体的リスクなど、複数の課題が影響しています。
妊娠・出産について正しい知識と選択肢を知ることが、前向きに未来を考える第一歩です。
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