化学流産とは妊娠検査薬などで陽性反応が出たものの、超音波検査で胎のうが確認できない状態のことをいいます。
妊娠初期の妊娠に気づくか気づかないかの時期の流産で、生理と区別がつきにくいのが特徴です。
ここでは化学流産をしたときの妊娠検査薬の反応や、症状などについてご紹介しています。
化学流産の妊娠検査薬の反応
妊娠検査薬は、妊娠すると分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンを感知することで妊娠を調べています。
このホルモンは受精卵が着床すると分泌されるため、早ければ次の生理予定日の1週間前くらいから妊娠検査薬が陽性になる可能性があります。
本来は妊娠検査薬の使用推奨時期は生理予定日の1週間後なのでまだ検査には早い時期なのですが、不妊治療の普及などによって早く調べたいと思う女性が増えています。
近年の妊娠検査薬は感度が高いため生理予定日前の微量のhCGホルモンにも反応して陽性を示すことがあります。
精子と卵子が出会い受精してもまだ妊娠成立ではありません。
受精卵が子宮内膜に着床し、赤ちゃんを包み込む胎嚢(たいのう)を超音波検査で確認できると妊娠が確定します。
化学流産は妊娠検査薬では陽性だったが超音波検査で正式に妊娠を確認する前にすでに流産してしまっている状態です。
調べなければいつも通り生理がきたと思い気づかれなかったはずが、妊娠検査薬で調べることが一般的になった現代だからこそ知られるようになった病態です。
妊娠検査薬では陽性だったのに病院で調べたら妊娠していなかった場合、化学流産の可能性があります。
【化学流産が起こる可能性のある時期】
いつまで陽性?
化学流産で妊娠検査薬が陽性になるのは、受精卵が子宮内膜から離れてしまっていても一定期間はhCGホルモンが分泌されているからです。
いつまで陽性反応が出るかは個人差が大きいため一概には言えませんが、化学流産の出血がおさまってすぐに陰性になる人がいれば、しばらく陽性が続く人などさまざまです。
化学流産の兆候と主な症状
化学流産が起こる時期は次の生理予定日に近いことから生理と区別がつきにくいのが特徴で、特有の兆候などはありません。
症状としては生理と似たような性器出血があることで、出血量は普段と同じくらいか少し多いくらいの量です。
激しい腹痛や吐き気などがあるわけではありませんので、妊娠の可能性を考えていなければ見過ごすことがほとんどでしょう。
まれにレバーのような血の塊が出て胎児と勘違いしてびっくりすることがあるようですが、これは通常の生理でも見られる現象で子宮内膜など不要になったものなので心配いりません。
【化学流産の症状】
- 生理と同じくらいの出血、もしくは少し多い量
- つわりのような症状はない
- レバーのような血の塊が出ることもある
なぜ化学流産するのか
化学流産の主な原因は受精卵の染色体異常や遺伝子の病気などが原因で、残念ながら防ぐことはできません。
そもそも受精卵が作られる過程で染色体異常は頻繁に起こっていますが、その多くは妊娠初期までに流産となり淘汰されています。
ストレスや生活習慣が化学流産を引き起こすわけではなく、女性の健康状態や行動とは関連がありませんので、化学流産となってもご自身を責めたりしないでくださいね。
化学流産以外の流産についてはこちらのコラムをご参考にしてください。
化学流産の確率
化学流産は全ての妊娠のうち、30-40%に起こると考えられており珍しい現象ではなく、20代の若くて健康なカップルでも同様です。
妊娠を切に願っている方にとってはつらい出来事ですが、これは自然な生物学的過程の一部です。
化学流産後の処置
妊娠初期の流産では子宮内に残っているものを取り出すために手術が必要な場合がありますが、化学流産では生理のような出血とともに排出されますので、特に必要な処置はありません。
ただし重い出血や異常な症状が続く場合や、次の生理が来ない場合は早めに医師の診察を受けてください。
化学流産後の生理
化学流産後は約1ヶ月で次の生理が始まりますが、通常の生理サイクルとは多少前後することがしばしばあるようです。
体は自然に回復して通常の排卵と生理のサイクルに戻りますが、4-6週間経っても次の生理がこない場合は特に痛みなどがなかったとしても一度受診して診てもらった方が良いでしょう。
次の妊娠への影響
妊娠初期の流産では、「妊活は生理が1-3回きてから」と医師の指導を受けることが多いようですが、化学流産では次の生理が1回きたら妊活を再開することができます。
化学流産を含めた流産は基本的に繰り返すものではありません。
同じ人物であってもそれぞれの妊娠は独立していると考えますので、続けて流産する頻度は2-5%程度といわれています。
とはいっても精神的につらいときは無理をせず、ご夫婦でよく話し合ってまずは心の回復につとめてくださいね。
化学流産を繰り返すケース
高齢出産では胎児の染色体異常が増えるため、化学流産を含む流産の確率も高くなります。
ただし、流産を2回、3回と繰り返す場合は子宮などに何らかの異常があることも考えられますので、一度精密検査を受けてみた方がよいでしょう。
まとめ
化学流産はごくごく初期の流産のことで、妊娠検査薬などで妊娠反応はあったものの、病院で妊娠を確認できない状態のことをいいます。
以前なら妊娠にも気づかずやり過ごしていたはずが、妊娠検査薬の感度の向上によって近年化学流産が発覚する機会が増えています。
妊活中のご夫婦にとってショックは大きいでしょうが、珍しい現象ではなく多くの方に知らずに起こっていることですので、考え込まないようにしましょう。
【参考】