
妊婦健診で「風疹の抗体が低い」と言われると、「何に気をつければいいのだろう」と不安になる方もいるのではないでしょうか。
特に妊娠初期は、胎児への影響リスクが高い時期です。「母子感染するとどのような影響があるのか」「どのくらいの確率で赤ちゃんに影響するのか」と心配になる方もいるかもしれません。
この記事では、妊婦が風疹に感染した場合の胎児への影響や、日常生活でできる予防策についてわかりやすく解説します。
妊婦の風疹感染が胎児へ与える影響

妊娠中に風疹へ感染すると、母子感染によって胎児に「先天性風疹症候群(CRS)」と呼ばれる障害が起こる可能性があります。心臓や目、耳などに影響が及ぶことが知られています。
大人が風疹に感染しても、15~30%程度ははっきりした症状が出ない1)とされています。しかし、妊婦自身に自覚症状がなくても、胎盤を通して赤ちゃんへ感染してしまうケースがあります。
注意したいのは、妊婦本人の症状が軽い、あるいは無症状であっても、赤ちゃんへの影響リスクが小さくなるわけではない点です。
先天性風疹症候群(CRS)とは

先天性風疹症候群(CRS)は、妊婦が風疹に感染した際に胎児へウイルスが移行し、生まれつきの障害が起こる状態を指します2)。代表的な症状として、難聴、先天性心疾患、白内障が知られています。
【先天性風疹症候群の3大症状】
- 先天性心疾患:生まれつき心臓や血管の形に異常がみられる
- 難聴:耳の神経に障害が起こり、聞こえに影響が出る
- 白内障・緑内障:目が白く濁る、眼圧が上がるなど視力障害につながる
なかでも難聴は比較的多くみられ、重症化するケースもあります。
また、3大症状以外にも、ウイルスが全身に影響することで次のような症状がみられる場合があります。
- 眼の異常:色素性網膜症、小眼球など
- 神経・発達への影響:小頭症、発達遅延など
- 胎児発育への影響:低出生体重、子宮内発育不全(胎児発育不全)
- 肝臓・脾臓への影響:肝脾腫
- 血液異常:血小板減少症、紫斑(点状出血を含む)
症状は複数同時にみられることもあり、出生時には目立たず、成長後に難聴や発達面の課題が見つかるケースもあります。そのため、妊娠中の感染予防が重要視されています。
妊娠初期ほど胎児への影響リスクが高い

風疹による胎児への影響は、妊娠初期ほど高いことがわかっています。
妊娠初期は、赤ちゃんの心臓や目、耳など重要な器官がつくられる大切な時期です。この時期に感染すると、細胞の成長が止まったり、組織が傷ついたりする可能性があります。
【妊娠週数ごとの発症リスク(目安)】3)
- 妊娠12週未満:85%
- 妊娠13~16週:50%
妊娠20週を過ぎると主要な臓器形成はほぼ完了するため、先天異常が起こることはまれです4)。
妊婦健診の風疹抗体検査でわかること

妊娠初期の妊婦健診では、母子感染を防ぐためにさまざまな感染症検査が行われます。風疹もそのひとつで、風疹ウイルスに対する免疫の有無や程度を確認するために抗体検査を行います。
過去の感染やワクチン接種によって十分な免疫があれば、再感染する可能性は基本的にありません。
ただし、時間の経過によって抗体が減少していたり、過去の感染歴の記憶が曖昧だったりする場合もあります。そのため、妊婦健診の抗体検査では「十分な抗体があるか」を中心に確認します。
検査結果によっては、「抗体価が低い」「十分ではない可能性がある」と説明されることがあります。
「抗体が低い」と言われた場合
風疹抗体が低いと判定された場合、十分な免疫がない可能性があります。そのため、感染機会をできるだけ避けながら生活することが大切です。
妊娠中はワクチン接種ができないため、本人だけでなく、パートナーや同居家族にも抗体検査やワクチン接種を受けてもらうことが重要になります。
また、人混みや感染リスクが高い場所への不要不急の外出はできるだけ控え、日常生活の中でも感染予防を意識しましょう。
妊娠中に風疹感染の可能性があるとき

風疹の感染者と接触した、あるいは発熱や発疹などの症状があり「感染したかもしれない」と思った場合は、直接受診せず、まずかかりつけの産婦人科へ電話で連絡し、指示を受けてください。
一方で、風疹は典型的な症状がすべてそろわないケースもあります。どのような場面で注意が必要かを知っておくことが大切です。
風疹の主な症状

風疹では、発熱、発疹、リンパ節の腫れが代表的な症状として知られており、感染後2~3週間の潜伏期間を経て発症します3)。特に大人の女性では、関節痛を伴うことが多いのも特徴です。
麻疹のように命に関わるリスクは非常に低いものの、数日間起き上がれないほど体力を消耗することもあります。多くは3~5日ほどで自然に回復します。
【風疹の代表的な症状】
発疹
淡いピンク色の細かい発疹が、顔から始まり全身へ広がります。通常は3日ほどで跡を残さず消えるため、「三日はしか」とも呼ばれます。
発熱
大人では高熱が出ることは少なく、37~38℃程度の熱が出ます。一方で、3割で39℃以上の高熱が出たとの報告もあります。
リンパ節の腫れ
耳の後ろや首の後ろ、後頭部のリンパ節が腫れ、触ると痛みを感じることがあります。腫れは発疹が消えた後も、3~6週間ほど続きます。
ただし、大人では典型的な症状がそろわないことも珍しくありません。発疹が軽い、ほとんど熱が出ないなど、比較的軽症で経過するケースもあります。
また、妊娠中は体調変化が起こりやすいため、風邪やほかの感染症との区別がつきにくいこともあります。発疹がはっきり出ていないからといって、風疹ではないとは断定できません。
症状が無くても注意が必要なケース
妊婦さん自身に発熱や発疹などの症状がなくても、無症状のままお腹の赤ちゃんへ感染している可能性があります。特に注意したいのは次の2つです。
1.同居家族(パートナーや子供)が風疹を発症した場合
最も注意が必要なケースです。風疹は感染力が強く、会話や咳などの飛沫で感染する3)ため、同じ空間にいるだけでも感染リスクが高まります。
また、症状がほとんどないまま感染していることもあるため、妊婦さん自身に症状がなくても油断はできません。
2.職場や学校など身近な環境で風疹が流行した場合
風疹は症状が現れる数日前から周囲へ感染を広げる特徴があります。
そのため、「体調が悪そうな人とは接触していない」と思っていても、まだ発症していない同僚や子どもから知らないうちに感染している可能性があります。
同居家族で感染者が出た場合

同居家族が風疹を発症した場合は、妊婦さんへの感染を防ぐために、できるだけ早く隔離対応と医療機関への相談を行うことが重要です。
1.居住空間を分ける(家庭内隔離)
可能な範囲で生活空間を分け、接触機会を減らします。
- 部屋を分ける:発症した家族は個室で過ごし、妊婦は別室で生活する
- 食事・睡眠を別にする:食事や寝室を共有しない
- トイレ・風呂の対策:共用する場合は換気を十分に行い、ドアノブなどを消毒する
2.マスク着用と手洗いの徹底
- お互いにマスクをつける:すれ違うときや会話時には双方が不織布マスクを使用する
- タオルは共有しない:洗面所やキッチンのタオルは分ける。ペーパータオルの活用も〇
- 換気と手洗いを徹底する:定期的な換気と石けんでの手洗いを行う
3.可能であれば一時的な避難を検討する
可能であれば、発症した家族の感染力が落ち着くまで、抗体を持つ親族宅などへ一時的に避難することも選択肢です。ただし、移動前には必ず産婦人科へ連絡し、移動して問題ないか確認してください。
妊娠中の風疹感染を防ぐためにできること
妊娠中は、風疹ウイルスとの接触をできるだけ避けることが基本です。
ただし、妊婦本人だけで感染を防ぎ切るのは難しいため、家族や周囲の協力も欠かせません。
パートナーや同居家族のワクチン接種が重要

風疹ワクチンは生ワクチンのため、妊婦本人は接種できません。
妊婦さんへの感染経路として多いのは、パートナーや子どもを介した家庭内感染です。
男性では風疹ワクチン接種の機会が十分でなかった世代があり、特に最近では1962年から1978年生まれの男性が流行の発生源になっている場合が多く5)、周囲が感染源にならない環境づくりが大切です。
自分では免疫があると思っていても、実際には抗体が低い場合があります。
多くの自治体では、妊婦の同居家族を対象に抗体検査やワクチン接種費用を助成しているところもあります。お住まいの市区町村のホームページ等を確認してみてください。
感染流行時に注意したい行動

風疹が流行している時期は、不特定多数の人が集まる閉鎖的な空間や、小さな子どもが多い場所への不要不急の外出には特に注意が必要です。
特に、妊娠20週頃までの妊婦は、次のような行動をできるだけ避ける、あるいは対策を取るようにしましょう。
- 混雑した電車やバス:必要な場合は時差通勤や空いている時間帯を選ぶ
- 保育園・幼稚園・児童館への出入り:送り迎えや行事参加は可能なら家族に代わってもらう
- イベントや大型商業施設への外出:コンサートやショッピングモールなどへの不要不急の外出は控える
- 風疹流行地域への海外渡航、および帰国直後の人との接触
まとめ

妊娠中に風疹へ感染すると、胎児に先天性風疹症候群(CRS)を引き起こす可能性があります。
特に妊娠初期は、心臓や目、耳など赤ちゃんの重要な器官が形成される時期のため、感染による影響リスクが高くなります。難聴や先天性心疾患、白内障などの症状がみられることがあり、出生後すぐには気づかず、成長してからわかるケースもあります。
妊婦健診で「風疹の抗体が低い」と言われた場合は、感染予防を意識して過ごすことが大切です。妊婦本人はワクチンを接種できないため、パートナーや同居家族も含めて感染を持ち込まない環境を整えながら、赤ちゃんを守るための対策を進めていきましょう。
【参考URL】
1)国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト.風しん(詳細版).https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/rubella/detail/index.html(参照 2026-05-26)
2)国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト.先天性風疹症候群に関するQ&A.https://id-info.jihs.go.jp/relevant-information/rubella/faq/crs20130930.html(参照 2026-05-26)
3)厚生労働省.風しん. https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/index.html(参照 2026-05-26)
4)Centers for Disease Control and Prevention (CDC).Chapter 15: Congenital Rubella Syndrome.https://www.cdc.gov/surv-manual/php/table-of-contents/chapter-15-congenital-rubella-syndrome.html(参照 2026-05-26)
5)日本産婦人科医会.風疹と先天性風疹症候群Q&A(PDF資料).https://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2024/12/e991804d6e3d240df640f615517b6d26.pdf(参照 2026-05-26)