妊娠中にタバコを吸い続けるとどうなるのか?

妊娠中の喫煙のリスクを胎児の形をしたタバコの灰で表現している

妊婦さん自身の喫煙はもちろん、妊娠中の女性の周囲での喫煙がご法度なのは、タバコの有害物質によって流産、早産、先天異常など胎児に深刻な影響を与える可能性があるからです。

今回は、妊娠中にタバコを吸い続けるとどうなるのか?そのリスクについて解説していきます。

妊娠中の喫煙が胎児に及ぼす影響

妊婦の喫煙による胎児への影響

【妊婦の喫煙による胎児への影響】

  • 発育不全
  • 低出生体重児
  • 流産
  • 早産
  • 先天異常
  • 先天性心疾患
  • 腹壁破裂増加

妊娠中の喫煙や受動喫煙は胎児の発育に悪影響を及ぼし、流産や早産、生まれたときの低体重などにつながります。

タバコの煙に含まれる有害な化学物質は、胎盤のフィルター機能を通過して胎児まで届いてしまうため、先天異常などさまざまな障害を引き起こす可能性があります。

発育不全

胎児は胎盤を介してママの血液から栄養や酸素をもらったりいらない老廃物を排出したりしています。

タバコの煙に含まれるニコチンや一酸化炭素などの有害な化学物質は、血液の酸素運搬能力を低下させたり血管を収縮させるため、胎児に必要な栄養や酸素が十分に行き渡らなくなります。

また胎盤の機能も低下させるため、胎児への酸素や栄養の供給がさらに不十分になり、胎児発育不全を引き起こします。

その場合、身体の機能が未熟なまま生まれてくる可能性があり、出生後の健康上のリスクにもつながります。

流産・早産

上記のように胎児の発育が阻害されると、流産早産、胎児死亡につながる可能性があります。

流産や早産の確率は、タバコを吸わない妊婦さんと比べると1.5~2倍程度になります。

妊娠中の受動喫煙は死産のリスクを23%高めます1)

先天異常

妊婦の喫煙によって起こる胎児の先天異常については多数の研究があり、以下の異常が起こる可能性があります。2)

【妊婦の喫煙によって起こる可能性のある先天異常】

胎児の脳や脊髄のもとになる「神経管」は、妊娠のごく初期である妊娠6週ごろには完成しますので、この時期の喫煙は二分脊椎や無脳症などの先天異常を引き起こす可能性があります。

妊娠中の喫煙によって先天異常のリスクが2倍高くなります。1)

出生後のリスク

妊婦の喫煙による出生後の赤ちゃんへの影響

喫煙する妊婦から生まれた子どもは、乳幼児突然死症候群のリスクが高くなります。

【妊婦の喫煙による出生後のリスク】

  • 乳幼児突然死症候群(SIDS)
  • 発達障害、ADHD
  • 問題行動
  • 将来の肥満
  • 低身長
  • 気管支炎、気管支喘息
  • 肺炎
  • 中耳炎

乳幼児突然死症候群(SIDS)

乳幼児突然死症候群(SIDS)とは、健康に見えた赤ちゃんが予期せず突然亡くなってしまうことをいいます。

妊娠中の喫煙がSIDSの要因となることは多数の研究から明らかとなっており、喫煙本数が多くなるほどその可能性も高くなります。

発達障害、ADHD、問題行動

妊婦の喫煙は胎児の脳を傷つけるため、喫煙する妊婦から生まれた子どもは、意欠陥/多動性障害(ADHD)を発症する確率が2~3倍に増加するとの報告もあります。2)

また、小児期の知能指数も一般と比べて4~6ポイント低下し、その影響は成人後まで残る可能性があります。

さらに、問題行動や暴力犯罪を犯す割合が高いとの報告もあります。

将来の肥満

胎児期に低栄養で過ごすと、栄養不足に適応するように代謝機能やホルモン調節の変化が起こるため、生まれた後に脂肪を過剰に蓄積しやすくなり、将来に肥満や2型糖尿病などの生活習慣病を発症するリスクが高くなります。

その他健康への悪影響

そのほか肺の発達不全により、出生後に喘息や気管支炎など呼吸器系の疾患を発症するリスクが増加します。

妊娠への影響

喫煙による妊娠への影響

妊婦の喫煙は前置胎盤などの妊娠中のトラブルを招きやすく、妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症にもつながりやすくなります。

【妊婦の喫煙による妊娠への影響】

喫煙の影響で胎盤が硬くなったり壊死することで機能が低下し、常位胎盤早期剥離や前置胎盤などのトラブルを引き起こし、胎児や母体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

受動喫煙のリスク

受動喫煙のリスク

タバコの煙の有害物質は、主流煙よりも副流煙に多く含まれているため、妊婦自身がタバコを吸っていなくても、周囲に喫煙者がいると受動喫煙による悪影響を受けます。

受動喫煙によるリスクは、妊婦さん自身の喫煙と基本的には同質と考えられており、ある研究によると受動喫煙のある妊婦の胎児に流入するニコチン量は、喫煙妊婦の胎児に流入する量の約5分の1と推定されるとのことです。1)

厚生労働省による令和4年の調査によると、日本人の喫煙率は女性6.2%、男性24.8%3)と、女性の喫煙率は高くないものの、受動喫煙の機会は路上(23.6%)、職場(18.7%)、飲食店(14.8%)と日常生活においてさまざまな場所でそのリスクがあります。

また、夫の喫煙本数が多いほど胎児の出生体重は減少し、低出生体重児の割合は1.21倍に増加したと報告されています。

少なくとも同居の家族は禁煙すべきですが、日常生活においても路上では出来る限り喫煙スペースに近づかない、飲食店は禁煙の店を選ぶなどして受動喫煙をしないよう注意しましょう。

1日1本ならタバコを吸っても大丈夫?

タバコやお酒が好きな人は、妊娠中も出来れば止めたくない、1日どれくらいまでなら許容量なのか?と考えるかもしれません。

「1日何本までならタバコを吸っても胎児に影響が出ない」というデータについては、人体実験をするわけにもいかないのでわかっていません。

分かっていることは、喫煙本数が増えるほど出生体重や身長を減少させ、喫煙期間が長くなるほど早産のリスクが高くなります。

したがって、妊娠中に安全な喫煙量というものは存在せず、妊娠したら禁煙が原則とされています。

妊娠中の喫煙率は令和4年度の調査において約2.1%という結果で、減少傾向ではありますが0%ではありません。4)

いつまでに禁煙すればよい?

理想は、妊娠を計画している段階で禁煙することがベストです。

これは喫煙によるリスクが、妊娠に気づくか気づかないかの段階である妊娠超初期からすでに、胎児に影響を与える可能性があるためです。

特に胎児の主要な器官が形成される重要な時期である妊娠初期に喫煙を続けると、先天異常のリスクが高まります。

しかし、たとえ妊娠中に喫煙していたとしても、禁煙することで胎児の健康にプラスの影響があり、発育状況が改善し、低出生体重や早産のリスクが減少することが報告されています。

大切なのは、妊娠中は「安全な喫煙量は存在しない」という点を認識し、できるだけ早く禁煙を始めることです。

まとめ

公園でピクニックをしてリラックスする夫婦

妊娠中の喫煙は胎児の発育不全、先天異常などにつながり、流産や早産、乳幼児突然死症候群のリスクを高めます。

また喫煙する妊婦から生まれた子どもは、ADHDの発症率や問題行動を引き起こす率が高くなり、将来の健康への悪影響も懸念されます。

受動喫煙でも同質のリスクがあるため、妊娠を計画したら、もしくは妊娠が発覚したら本人を含む同居の家族は禁煙することが非常に重要です。


【参考文献】

1) New brief outlines devastating harms from tobacco use and exposure to second-hand tobacco smoke during pregnancy and throughout childhood | WHO(世界保健機関)
2) 妊婦の受動喫煙と胎児、子どもへの影響. 禁煙科学 4巻(2010)-03-P1 | 日本禁煙科学会
3)令和4年国民健康・栄養調査 結果公表|厚生労働省
4) 令和4年度母子保健事業の実施状況等について | こども家庭庁
女性の喫煙・受動喫煙の状況と、妊娠出産などへの影響 | e-ヘルスネット(厚生労働省)


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