
「上の子の園でりんご病が流行っている」ーー妊娠中は胎児への影響を考えて感染症に敏感になる時期です。
りんご病は子どもに多い感染症ですが、大人では発熱や関節痛だけで終わるケースもあり、自分では気づかないまま感染していることもあります。
この記事では、妊婦がりんご病に感染した場合に考えられる胎児への影響や、日常で気をつけたい予防のポイントについて、落ち着いて判断するための参考情報として整理していきます。
妊婦がりんご病に感染するとどうなる?
妊婦がりんご病に感染すると、ウイルスが胎盤を通じて胎児に感染し、胎児の貧血や胎児水腫、流産・死産などにつながる可能性があります。
ただし、妊婦が感染したからといって必ず胎児に影響が出るわけではありません。特に注意が必要なのは、妊娠初期から妊娠20週前後までの感染1)です。
ここでは、りんご病の原因や妊娠週数によるリスクの違いについて整理していきます。
りんご病は「ヒトパルボウイルスB19」による感染症

りんご病は、ヒトパルボウイルスB19というウイルスによって起こる感染症2)です。両頬がりんごのように赤くなる発疹が特徴で、主に春から初夏にかけて幼児や小学生の間で流行3)します。
一度感染すると生涯免疫ができるため、子どもの頃にかかった人や、すでに抗体を持っている人が再び感染することはほぼありません。
ただし、日本人妊婦のりんご病抗体保有率は20~50%程度とされており4)、感染する可能性のある人は一定数います。
また、発疹が出る前の時期に感染力が強い2)ため、上の子どもや職場をきっかけに家庭内で広がるケースもあります。
胎児への影響は妊娠週数によって異なる

りんご病による胎児への影響は妊娠週数によって異なり、特に注意が必要なのは妊娠初期から妊娠20週前後までの感染1)です。
なかでも胎児死亡のリスクが最も高いのは妊娠9~16週の感染であり、水腫のリスクが最も高いのは妊娠13週~20週の感染です1)。
一方で、妊娠後期になると胎児の造血機能が発達するため、重症化する可能性は低くなります。
ただし、感染のしやすさ自体は妊娠週数によって変わりません。
りんご病が胎児に感染すると何が起こるか

妊婦から胎児へりんご病が感染すると、胎児の赤血球を作る細胞が障害されて深刻な貧血を起こすことがあります。
胎児の貧血が進行すると、少ない血液で全身へ酸素を届けようとして心臓に大きな負担がかかり、やがて心不全につながります。
その結果、胸やお腹、皮膚の下などに水がたまる「胎児水腫」を起こす場合があります。
妊婦が初感染した場合、胎児へ感染する確率は20%程度とされています4)が、胎児に感染しても必ずしも重症化するわけではありません。
重度の貧血・胎児水腫

胎児水腫は、りんご病に初感染した妊娠のうち約4%に起こるとされています3)。
胎児水腫を発症しても約30%は自然に回復します3)が、状態によっては胎児輸血が行われることもあります。
また、水腫の状態が長く続くと、脳へ十分な酸素が届かなくなり、ごくまれに出生後の発達へ影響する可能性があります。
そのため、早期発見と適切な管理が重要になります。
重症化すると流産・死産につながることも
心不全が進行すると、流産や死産につながることがあります。
胎児がりんご病に感染した場合、全妊娠期間を通して流産・死産に至る割合は約10%とされ4)、特に妊娠20週未満でリスクが高いことが知られています。
妊娠20週以降は胎児の造血機能が発達するため重症化しにくくなり、28週以降では胎児への影響は低くなります3)。
出生後に後遺症が残ることはまれ
胎児水腫や貧血を起こした場合でも、適切に管理され無事に出生できれば、出生後に麻痺や形態異常などの後遺症が残ることは基本的にありません1)。
一方で、重度の胎児水腫や低酸素状態が長期間続いた場合には、ごくまれに軽度の発達の遅れなどがみられることがあります。
そのため、妊娠中は超音波検査による慎重な経過観察が重要です。
妊娠中にりんご病が疑われるときの対応

妊娠中にりんご病が周囲で流行している状況で、風邪のような症状や関節痛、発疹が出た場合は、まずは産婦人科へ電話で相談してください。
りんご病は感染力が強いため、直接受診する前に電話で指示を仰ぐことが大切です。
妊娠中でなければ、りんご病は基本的に自然に治るため必ずしも受診が必要なわけではなく、感染症法上でも就業制限の対象感染症ではありません。ただし、妊娠中は胎児への影響確認のため対応が異なります。
抗体検査で感染状況を確認する
りんご病が疑われる場合、病院では血液を採取してヒトパルボウイルスB19抗体検査を行います4)。
【パターンA】過去にかかったことがある:IgG抗体プラス
すでに免疫を持っているため、今回りんご病には感染しておらず、お腹の赤ちゃんへの影響もありません。
【パターンB】今回新しく感染した:IgM抗体プラス
妊婦さんが今回初めてりんご病に感染したことを意味します。この場合は、赤ちゃんの状態を定期的に確認する観察期間に入ります。
超音波検査で胎児の状態を確認する

妊婦さんのりんご病感染が判明した場合、感染から約2ヶ月間、週に1~2回のペースで赤ちゃんの様子をエコーで綿密に確認していきます。
特に注意して確認するのは、赤ちゃんの頭の血管(中大脳動脈)の血流スピードです。これによって、深刻な貧血のサインや胎児水腫の初期症状がないかを確認します。
母体の感染から8週間を問題なく過ごせれば、それ以降の胎児への影響は基本的に心配ありません。
妊婦がりんご病を予防する方法

りんご病にはワクチンや特効薬がなく2)、完全に防ぐのが難しい感染症です。
特に子どもの間で流行しやすいため、家庭内や職場での接触機会を意識することが大切です。
過度に神経質になる必要はありませんが、できる対策を継続することが重要です。
流行時は手洗い・マスクを徹底する
りんご病のウイルスは、感染した人の咳やくしゃみ(飛沫感染)、ウイルスがついた手で口や鼻に触れること(接触感染)でうつります。
- こまめな手洗い
- 帰宅時や食事前、子どもの鼻水を拭いた後などは、石鹸と流水で20秒以上かけて丁寧に手を洗います。
- マスクの着用
- 外出時や家庭内で子どもが風邪気味のときは、不織布マスクを正しく着用して飛沫を吸い込まないようにします。
りんご病のウイルスはアルコール消毒の効果が乏しいため5)、石鹸と流水による手洗いがなにより重要です。
子どもの体調不良時は接触に注意する

りんご病は、ほっぺが赤くなる前の「風邪のような症状だけの時期」に最も感染力が強い感染症です。
そのため、子どもが元気に見える場合でも、普段から以下の感染対策を意識することが重要です。
- タオルの共有を避ける
- 洗面所や浴室のタオルは家族で分け、ペーパータオルを活用するのもおすすめです。
- 食器やスプーンを分ける
- 子どもが残したご飯を食べたり、同じコップで飲み物を回し飲みしたりするのは避けてください。
- 箸の使い回しNG
- 大人が使った箸で子どもに食べさせたり、その逆を行ったりする行為も感染経路になります。
- 過度なスキンシップを控える
- 妊娠20週未満の時期は、子どもと顔を近づけての接触や口元へのキスは控えるのが安心です。
まとめ
妊婦のりんご病感染では、ウイルスが胎盤を通じて胎児へ移行し、深刻な貧血や胎児水腫を引き起こすことがあります。
特に妊娠20週未満では流産・死産リスクが高くなるため注意が必要です。
ただし、りんご病は胎児に先天異常を起こす感染症ではなく、適切な経過観察と管理によって無事に出生できれば、後遺症が残ることは基本的にありません。
妊娠中に感染が疑われる場合は、自己判断せず産婦人科へ相談し、必要な検査や経過観察を受けることが重要です。
【参考URL】
1)Royal College of Physicians of Ireland.IOG National Clinical Guidelines Clinical Updates: Parvovirus-B19 in Pregnancy Clinical Practice Statement 2024.https://www.rcpi.ie/Portals/0/Document%20Repository/Institute%20of%20Obstetricians%20and%20Gynaecologists/National%20Clinical%20Guidelines/2024/IOG_National%20Clinical%20Guidelines_Clinical%20Updates_Parvovirus-B19%20in%20Pregnancy_CP%20Statement_2024.pdf(参照 2026-05-20)
2)厚生労働省.伝染性紅斑https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/fifth_disease.html(参照 2026-05-20)
3)国立健康危機管理研究機構.ヒトパルボウイルスB19母子感染の実態.https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/6180-dj4314.html(参照 2026-05-20)
4)日本感染症学会.パルボウイルスB19感染症https://www.kansensho.or.jp/ref/d64.html(参照 2026-05-20)
5)東京都感染症情報センター.伝染性紅斑が増えています!https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/assets/diseases/fifth-disease/hitokuchi-joho.pdf(参照 2026-05-20)